田中様より以下のご質問をお受けしましたので、当方なりの回答を致します。
自窯で13回本焼きしました、12回目までは割れると言う経験がありませんで
したが今回半磁器土5つの(マグカップ、お皿など)うち4つ割れていました、
原因は1成型がまずかった2釉薬が内、亜鉛結晶釉、外、萌黄交趾と言う少し
流れやすい(亜鉛結晶釉よりは流れはまし)透明感のある釉3乾燥のしかた
(釉薬を掛けて4時間後焼いた)、今まで素焼きでヒビが入ったことはありまし
たが本焼きは無かったので少しショックです。
もう一枚お皿も(たたらで半磁器)カンが入ったような割れ方でマグなども同じです。
もう一度同じものを挑戦はしたいと思っていますが不安です、注意点などござ
いますでしょうか。
手轆轤で成形(比較的表面は綺麗と思います少し水が多かったかも)、1250度
で亜鉛結晶釉の温度設定、因みに同窯で陶土は割れておりません。
明窓窯より
割れた作品を拝見していないので、詳しい原因は不明ですが、一般的な説明に成りますので、
ご了承下さい。
焼成で起きる割れには、焼成中に起きる場合と、冷却時に起こる物に分かれます。
冷却時に起こる場合は、割れの断面が綺麗であり、釉が断面に付着していない事等から
判ります。今回の割れた断面を良く見て下さい。
冷却時の割れは冷め割れと呼ばれ、焼成時の冷却スピードに関係します。
一方焼成時の割れの場合、断面にややザラツキが有ったり、釉が断面の縁に付いている
場合が多いです。
今回のご質問は、後者の事の様に思われますので、焼成中の割れに付いてお話します。
1) タタラを使った作品(皿、マグカップ)を半磁器土で制作との事ですが、割れの主な
原因は、土の締りが弱い為と思われます。
① 面積の大きいタタラ製の板状の作品は「ひび」が入り易い。
タタラを作る際、素地を叩き板等で強く叩き締めます。上下方向だけでなく、板の全周の縁
も手の親指や、厚みのある板で板の内側に向かって、縁が持ち上がる程度押し土を締めます
その後、なめし皮等で縁(特に角部分)を拭き押した痕を消し滑らかにします。
縁の小さな傷も本焼きでは、大きな傷に成ります。
ⅱ) 板状の皿に脚を付けると、作品は変形したり割れを起こし易いです。
なるべく脚は付けない方が安全です。
又、皿の周辺を持ち上げる事で、変形や割れを防ぐ事が出来ます。
持ち上げる量が大きい程効果が有ります。尚、持ち上げた部分が本焼きすると、
下に落ち、高さが低く成ります。
ⅲ) タタラを筒に巻いてマグカップを作る際にも、上で述べた方法で土を締めてから
筒などに巻いて形を造る事です、マグカップの取っ手も土を締めてから形を造り
取付ます。
ⅳ) タタラの場合、作品によっては繫ぎ目が生じますので、繫ぎ目の処置が悪いと
その繫ぎ目から「ひび」が入る事もあります。繋いだ痕が出ない様に綺麗に仕上げるか
繫ぎ目をあえて二重にする方法もあります。その他接触面積を大きく採る(断面を斜めに
カットする等)とより割れ難くする事です。
2) 今回半磁器土で発生したとの事ですが、他の素地でも同様な事が起こる可能性が
有りますので、上記の点をご注意下さい。
素地の種類に拠っては、同じ方法でも安全な場合と、不安定な素地がりますので
多くの素地を試す事をお勧めします。
尚、上記方法を行っても割れが発生する場合があります。それは、
① 素焼き時に既に「ひび」が入っているのを見逃した場合。
② タタラが均等な厚みでない場合。
③ タタラが正方向又は長方形の様に綺麗な形ではなく、複雑な形(不定形)の場合。
特に縁に切れ込みを入れると、そこからひびが入り易いです。
④ その他:成形時に部分的に力が入った等。
3) タタラ以外で作品を作る際、手捻りの場合肉厚に差が出ると、割れが生じ易いです。
手捻りの方法も、紐作り、玉作り等色々な方法が有りますので、作品の大きさ等を考え、
適宜選ぶ事です。
陶芸では、作品の割れは、常に付き纏う事柄で、原因も多肢に渡りますので、その都度原因を
考えて下さい。
以上 お役に立つか分かりませんが、参考にして頂ければ幸いです。