わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

現代陶芸46(吉賀大眉)

2012-02-14 17:06:56 | 現代陶芸と工芸家達
山口県萩の陶芸家、吉賀大眉は1982年(昭和57)に、日本芸術院会員に成っています。

この組織は、芸術(芸能)の分野で顕著な功績を残し、芸術院賞を受賞した、栄誉ある方々の集まりで、

工芸の分野では、主に首都一円と京都を中心の工芸家が選ばれ、六十余年の歴史の中で、地方の

工芸家では、吉賀大眉が最初との事です。

 注: 日本芸術院とは、1907年(明治40)に文部省美術展覧会(文展)を開催するために設けられた

    美術審査委員会を母体とし、1919年(大正8)に「帝国美術院」として創設され昭和12年に美術の他に

    文芸、音楽、演劇、舞踊の分野を加え「帝国芸術院」に改組され、更に1947年(昭和22)

    「日本芸術院」と名称を変更し今日に至っています。会員は終身で定員は120名です。

    第一部美術、第二部文芸、第三部音楽・演劇・舞踊に分かれています。

 注: 日本芸術院授賞は、毎年、上記会員以外から選出され、授賞式は、毎年天皇皇后両陛下の

     ご臨席の下、日本芸術院会館(台東区)で行われています。

1)  吉賀 大眉(よしか たいび):本名 寿男、1915年(大正4) ~ 1991年(平成3)

  ① 経歴

   ) 山口県萩市の萩焼窯元泉流山の窯元の長男として生まれます。

      父吉賀要作は、教員でしたが病で退職後、泉流山窯を譲り受け経営に携わります。
 
      最初は磁器を製造していたようですが、後に萩焼に転向します。

      それ故、大眉も幼少の頃から、陶芸に親しんでいたと思われます。

   ) 1938年 東京美術学校(現東京芸大)の彫塑科を卒業します。

     大眉の関心は、彫刻や彫塑から次第に陶芸に移り、加藤土氏萌(はじめ、後の人間国宝)に

     師事します。 1943年 第六回文展で「陶花器」で初入選を果たします。

   ) 1955年頃より、「日展」で北斗賞を連続受賞し、特選を得ると一躍注目される様になります。

     北斗賞:「花器」(1956)、「顔」(1957) 特選:「陶花器人物」(1958)

     その後、日展審査員、評議員、日展理事、日展参事を歴任します。

   ) 1966年 「暁雲シリーズ」によって一段と飛躍します。

      1982年日本芸術院会員に、更に1990年には文化功労者に選定されます。      

 ② 吉賀 大眉の陶芸

   創作陶芸を目指す大眉に対し、地元萩では風当たりが強かった様です。

   萩焼きは、三輪家と坂家の二大名門の窯元があり、茶陶を中心に生産していました。

   萩の名窯として、伝統的な精神や文化を重んじ、美術品としてより、趣味や日用品としの作品が

   ほとんどでした。その為、「萩の伝統を損なう物だ」「新興窯は仕事を止めて欲しい」等の、

   非難も多かった様です。

  ) 彼の作品は、萩の土と釉を使っていますので、萩焼の範疇に入ります。

  ) 終戦前後には「お茶に捉われた作品では、ニッチモ、サッチモ行かなくなる」と考え

    萩焼を現代的に作り変えるべき、大胆な作品を作り始めます。
 
  ) 「暁雲シリーズ」は彼の代表的な作品に成っています。

   a) 土は萩焼の土である、大道(だいどう)土と金峯(みたけ)土を使い、釉は白く発色する藁(わら)

     灰釉を使っています。窯変によって、ピンク調に出る場合もあります。

   b) 轆轤挽きした作品を素焼きした後に、鉄釉を一周刷毛塗りし、藁釉を掛け焼成します。

     この方法で本焼きを数度(3~6回)繰り返し、朝の雲の感じを出しています。

   c) その表情は、東の空がしらんで、空は赤味を帯、或いは霧や雨雲が立ち込めた印象を

     与えています。

     作品として、「陶壷・暁雲」(1966)、「広口花器・朝」(1975)、「暁雲大海」(1976)

     「広口花器・春曙」(1978) 山口県立美術館、「曙」(1981)などがあります。

  ) 勿論、彼も伝統的な茶陶も作っています。

    「萩斗々屋(ととや)茶碗」(1974)、「紅萩井戸形茶碗」(1977)(両者共、山口県立美術館)、

    「灰被水指」(1983)などがあります。

 尚、山口県萩市・萩陶芸美術館には、萩の古陶磁器資料・著名作家の 作品等が展示されています。

  館内の「吉賀大眉記念館」には、彼の代表作が一堂に展示しあります。


次回(小川欣二)に続きます。
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