人と違うと言う喜び

年を重ねてくると、
人と違うって事が嬉しくなってくる

朱に交われば赤くなるではないが、
学生時代は、周りと一緒ということに
安心感を得ていた

小学生の時、習字道具が私だけ違った

周りの級友は市販の書道セットを持って来ていたが、
私は叔母のお下がりの、木で出来た習字箱を
持参して授業に臨んだ

墨汁もなく、私だけがセッセと硯で墨をすった

中学生になると書道セットを買ってもらい、
やっと皆んなと同じになったと喜んだ

中学時代は、木工の授業での
ノコギリやらノミなどの木工セットを
業者に頼んでの購入になった

二種類あり、安価な方は道具が一つだけ
足りなかったと記憶しているが、授業には
差し支えのない内容だった

だが、私は多数派のセットを選んだ
折角買うのだから、道具が揃っている方が
いいと言う両親の助言にも従ったし、
私自身、それが欲しいと願っていたから、
迷わず購入した

同級生の中でも、安価な方を選んだのは
２人だけだったような気がした

しかし

今は違う

周りと同じ物は欲しくないと思う

今の私なら、骨董品に映るその習字セットを
誇らしげに思う

木工セットも渋い色のバッグに入った
安価なセットを購入するだろう

元来天邪鬼な私は、
人と違うことをしたいと思いながらも、
小市民たる所以で突出した才もなく、
また目立つ事は避けるようにして来たが、
羞恥心も随分薄らいで来た今では、
人と違うものを持つ喜びを感じられるように
なって来た

あの習字セットが残っていれば・・・と思う