鼎子堂(Teishi-Do)

三毛猫堂 改め 『鼎子堂(ていしどう)』に屋号を変更しました。

『聖灰の暗号:帚木蓬生・著』

2009-10-01 21:01:19 | Weblog
くもりがちの10月初日。
気分を変えて秋本番・・・。

読書の秋。
このところ、長編ばかり読んでおります。

今日の御題は、9月14日のブログに掲載した『水神』の著者・帚木蓬生さんの長編小説。
この方は、精神科のお医者さんで、作家で、もとTBSの社員で・・・といろいろな肩書きをお持ちなのだけど、デビュー作『白い夏の墓標』の系列かな・・・と思われるのが、この『聖灰の暗号』。
舞台もフランスだし・・・。

しばらく前に書かれた『総統の防具』もこのラインの作品でしょうかね。

そんなことを思いながら、この週末、上下巻、一気に読んでしまいました。

主人公・須貝彰は、フランス語と南フランスで使われているオキシタン語(そういう語学があるなんて名前も知らなかったです)に堪能な若手の歴史学者なんですが、こういうキャラ設定って、なんかスゴイですね。一種、憧れてしまいます。
宗教弾圧で、ヴァチカン(ローマ教会)から迫害を受け、ついに滅びてしまったカタリ派の研究のため、渡仏します。
そこで、知り合って、後に、恋人になる精神科医・クリスチーヌとの出逢い。
出逢いの場所が、墓地ってあたりも、その後の展開に何か意味があるような気がします。
サスペンスあり、ロマンスあり・・・盛りだくさんで、物語は、展開していきます。

・・・カタリ派の純粋な信仰・・・本来の神とヒトとの関係とは、こういうものだったのだろうな・・・

700年前の修道僧・レイモン・マルティの手稿を偶然発見した須貝は、弾圧され迫害され隠蔽された記録をついに探し当てる。

中盤から、後半にかけての700年前の記録に、信仰の極みをみる思いがします。


前述の『白い夏の墓標』、『総統の防具』、この舞台が欧州という系列からはハズレますが、日本が舞台の歴史小説『国銅』も、帚木作品の醍醐味は、そのラスト。
多分、だれもこういう終わり方だと想像出来ない・・・どんでん返し・・・という表現は、あてはまらないと思いますが、想定外・・・のラスト・シーンに、この作家の力量をヒシヒシと感じます。

ご自分の職業・精神科医という視点から、描かれる作品群に、専門家の書くものって、やっぱり、どの分野も面白いな・・・と思う訳です。