鼎子堂(Teishi-Do)

三毛猫堂 改め 『鼎子堂(ていしどう)』に屋号を変更しました。

春の嵐②

2013-03-02 22:52:42 | Weblog
明け方・・・まだ、暗いうちから、裏の雑木林を揺さぶる強い風の音で、目が覚める。
ゴゥゴゥ・・・と音を立てて吹き付ける強風は、なにやら不安な心を呼び覚ます。

眠りについたのが午前3時だったから、まだ、2時間しか眠ってないや・・・。

うとうとしながらも、風に煽られている不安な心が、静まることがない。

昨日まで、月次決算で、慣れた仕事ながらも、未だに、ヘンな焦燥感があって、午後になると、一気にその疲れが噴き出す・・・怠くなって、このまま眠ってしまいたい・・・ような・・・。
この怠さは、身体の不調ではなくて、どうも精神の脆弱さから来るような感じだなぁ・・・と思っている。

気温が上がって、暖かくなると、眠気や怠さの来訪を受けるのは、毎年のことだし、酢の味が、恋しくなるのも、ちょうど、この時期だと思う。

そして、春の暖かさとともに、穏やかな季節の中に、時折、嵐の日があることも。

立春から春分の日の間に吹く暖かな南風に代表されるような春一番。
春の嵐をかわきりに、季節が進むとメイ・ストームを呼ばれるような4月から5月にかけて、すさまじいエネルギーを放出するような嵐。
春の嵐は、やがて、夏の台風へとバトンを渡す。

去年の今頃、『モラトリアム』というお題で、いくつか書かせていただいたけれど、春の嵐と入院生活は、私の3月の記憶に留まり続け、今もその時の感覚が、春の空気に触れると融け出し、懐かしく思うと同時に、あの18歳の春は・・・私の中で、彷徨い続けて、行き場を探しているような気がしてならない。

痛みもそうだけれど、病院で過ごした長い夜に、春の嵐の一日があった。
夜半眠れず、暗闇にならない(薄い灯りを一晩中点灯しておく)病室の窓に当たる雨と風を聴きながら、この先の見えない・・・それでいて、ゆるやかで、おだやかな生活は、何時まで続くんだろうか・・・ここを出て、自由になれたら、楽しい事しか起こらない・・・そんな幻想を抱かせる春の嵐の夜。
・・・そんなことが、全てまやかしで、自由の身になってからは、つまらぬことしか起こらず、イヤなことばかりに拘束されて現在に至っている。

春の嵐の夜にみたまぼろしの夢は、春になるたび、毎年、毎年、堆積して、すっかり固まってしまったようだ・・・。春の嵐に吹かれるたびに、融けて流れて零れ落ちて、その甘い幻想だけに、酔っている・・・それが、春の宵。