誕生日会の仲間が、私の退院祝いを今晩、西洋料理の店で行ってくれる。こんな付き合いがもう14年続いている。ペースメーカーの手術を受けることになって、一番心配したのはこれまでどおりのことが出来なくなるのだろうか、ということだった。医師は「普段どおりの生活をしてかまいません」と言う。お酒も飲んでもよいことになった。仲間との付き合いにお酒が無いのは考えられない。これまでと変わらずに付き合えるのがいい。
ペースメーカーの手術と言われた時はビックリしたけれど、聞いてみると意外にそんな人がいる。心臓の薬を飲んでいると言う人もいる。年を取れば、当然身体のどこかに金属疲労が現れてくる。長い間使いっぱなしなのだから、ある意味で仕方のないことだ。私たちが子どもの頃なら、70歳近い人はかなりの年寄りで、おばあさんなら腰の曲がった人が多かった。皮膚だって皺だらけだった。今はみんなキレイにしているし、腰の曲がった人の方が少ないくらいだろう。
生活保護を受けている人は、年寄りでしかも身寄りが無いという人が多かったのに、最近では就労年齢である20代から50代の人に増えているそうだ。友人が生活困難者の就労支援を行っているけれど、一旦、生活保護を受けると就労意欲が低下してしまうと嘆いていた。怠けていて、お金が入るならその方がいいかというと、人間は不思議なもので、普通の人と同じように働いてお金を得たいのだそうだ。そういう社会的な評価を受けていると、働くことに喜びを感じるようになるが、のっけから社会のクズ扱いされると、勤労意欲も失っていくのだと彼は言う。
現行の年金制度はこれから成り立たなくなると政府は言い、そのためには社会保障制度の抜本的な改革が必要だと言っている。私もペースメーカーを植え込んだために障害者となった。それでいろんな特典が受けられるそうだが、なぜペースメーカーを埋め込むと障害者なのかと納得出来ないでいる。それに、いろいろな特典があることも不思議な気がするけれど、「いいのよ。そういう制度なのだから」と言われ、何かますます弱者へと追い込まれている気がしている。
「いっそのこと、年金制度は廃止し、生活保護に切り替えた方がいい」と友人はいつものような極論を発する。「日本人は自立して生きるというプライドを持っている。そのプライドを失くした者しか生活保護を申請しない。その方が現実的な解決策だ」。そうかも知れないけれど、まず誰もが働ける社会の仕組みが必要で、どうしてもそれが出来ない人を社会が保護する。だから収入の多い人が支援するために多くを拠出することになる。そんなことをしたら、現在既にそうなっているが、「誰も働かなくなる」と言った人もいたけれど、みんながみんな、働かずに贅沢に暮らしたいと願っているとは思えない。
ささやかでも、時にはお酒を飲み、美味しい料理を食べ、大いに笑ったり話したり、そんな時間が幸せなのだと思う。みんなが気持ちよく働ける仕組みこそが、社会から貧困を無くす道だろう。