知人から木版画展の案内ハガキをいただいたので出かけた。知人は元校長で寺の住職だが、木版画もやってみえたのかと思いながら会場に着くと、先生が来客に作品の説明をしていた。随分手の込んだ木版画だと思いながら見ていると、先生が来られて展覧会の趣旨を話してくれた。
先生は若い頃、木版画の作者である「山高登」の展覧会を見て心惹かれ、少しずつ買い揃えていった。そして、「芸術作品は私蔵されると死蔵になってしまうことが多い。作品は作者の手を離れれば公のものであり、死蔵されることは作者、遺族、所有者にとっても残念なことである。山高登の作品も私的なコレクションとして充分楽しませてもらったので、その楽しみをみなさんに味わっていただきたいと贈呈を思いついた」と。
そこで先生は、「学校に贈れば、児童・生徒の皆さんに多少でも参考になるかも知れないと考えた。1)芸術作品として 2)昭和のじだいにまで遺された建物の風景として 3)木版画の作例として」役立てて欲しいと。展示されている作品を見ると、懐かしい昭和の風景が思い浮かぶ。
山高登氏は招集を受けて兵士となったが、終戦を迎え、焦土と化した東京を目の当たりにして愕然とした。出版社の新潮社の編集者となり、やがて版画家として活躍する。山高登氏は「評論家は私の版画を、詩情があるとか抒情的だとか言っているが、兵隊に取られて命からがら帰って来た時の気持なんか誰もわかっちゃいない」と言う。
山高登氏は自ら下絵を描き、自分で彫って色をつけ、摺り上げる、全ての工程をひとりで行っている。それも1作品を仕上げるのに30回も40回も繰り返している。作品をよく見れば、子どもたちも木版画の面白さを見出すことだろう。芸術の秋の第3弾、木版画展に行ってみてよかった。
山高登氏の作品をアップしようとしたが出来なかった。ごめんなさい。