シンガー・ソングライターの谷村新司さんが亡くなった。74歳とあるから、私よりも5歳下になる。70年安保世代と言っても良いだろう。70年代は学生運動が盛んだったけれど、やがて失速し、若い人たちに厭世気分が蔓延していった。
そんな気持ちがフォークソングブームとなり、若者たちはギターを抱えて自分の思いを歌った。『神田川』を聴くと、私はいつも、東京の出版社で同じくアルバイトをしていた多摩美大の友だちを思い出す。
彼の下宿は自由が丘にあった。「遊びに来いよ」と言う言葉に従って出かけた。駅で待ち合わせ、初めに行ったところが「質屋」だった。そこで電気釜を受け取り、それから買い物をして部屋に上がった。女の子が、食事の用意をしていた。
最終電車の時間が迫り、帰ろうとして彼に、「駅まで送ろうか」と彼女の方を見て言うと、「今晩は泊まるから大丈夫」と笑う。その時になって、同棲していることに気が付いた。私の周りにはそういうカップルはいなかったので、東京の人は凄いと面食らった。
谷村さんの歌も何となく寂しさが漂っているが、『チャンピオン』はもう一度頑張ろうと奮い立たせてくれる。『今はもうだれも』『冬の稲妻』は失恋の歌のようで、聴いていると胸が痛い。やっぱり70年代の悲しみというか喪失感が滲み出ている。
谷村さんも年齢を重ねていくと、暗くて寂しい歌から希望が見える歌へと変わっていった。『昴』は中国でも若い人に支持されたし、『いい日旅立ち』は山口百恵さんが歌って、とても良くなって大いにヒットした。
今日は5度目の法務局参りをしてきた。20日までに電話が無ければ「これで完了となる」と言うが、全てが終わるのは「11月末になるでしょう」とはどういうことなんだろう。『チャンピオン』でも歌って帰ろうと思ったが、気落ちしていて歌えなかった。