午後3時前、雲が切れて青い空が広がった。このところの異常気象で東北や北海道が大きな被害を受けているが、この地方は比較的穏やかだった。それでも午前中は竜巻警報や大雨警報が出て、東海豪雨のような都市型水害に見舞われそうな勢いだった。終わってみれば何事もなく、まあ、吉とすべきだろう。今は秋風のような冷たい風が吹き、青色かかった深黒色の空に白い雲が輝いている。
昨日は月に1度の劇団・新感線『朧の森に棲む鬼』を観て来た。主演が市川染五郎だけあって、まさに歌舞伎と映画のミックス娯楽劇だった。芝居といえば、どんなに悪い主人公もどこかで改心してめでたしとなるのだが、『朧の森に棲む鬼』の主人公は自分が国の王になるためには、平気で仲間を裏切る大悪党に徹していた。人情ものでポロリと涙を流す、そんな要素は全く無かった。策略の上に策略を重ね、自分を慕う友までも踏み台にしてしまう。
今日は名演の例会で、劇団NLTによる『OH!マイママ』というコメディだった。原作はブリケール&セライグとある。舞台がフランスなので、フランスの作家なのだろうか。とにかく目茶目茶面白い。大統領を狙うような国会議員だが、その妻は25年前に失踪した。ひとり息子は結婚を控え、母のことを気にしていた。そこへアメリカ陸軍の大佐が国会議員の家に現れる。それが疾走した妻で、性転換して男となっていた。
そんなありもしないような筋書きだが、次第に現実味を帯びてくる。国会議員が再婚しようとしている女性と妻とはレスビアンだった。妻は息子に会いたくて突然現れたのだが、国会議員が結婚しようとしている相手にも会いたかったのだ。性同一障害の妻、その愛した女性、そしてメイドとしてこの家に住む留学生の女性は国会議員と息子ともにベッドを共にするが、実は元は男性で、性転換で女性となっていたという。だから性の境をテーマにしているようにも見える。
SEXの相性がいいとかのセリフがある下世話な演劇だが、男と女の問題に迫ろうとしているようにも見える。結局、国会議員が再婚する相手が息子の本当の母親で、性転換した妻と国会議員はその恋人で、「ふたりとしかSEXしていないからどちらが父親でも同じ」と言う。まあ、丸く収まるならそれでいいか、これで終わりかと思ったら、息子の婚約者から電話が入り、「子どもができた」と言われる。国会議員らは「出来ちゃった結婚」と喜ぶが、息子は「キスしかしていない」と言う。この結末に観衆は大喜びだった。そんなものだろう。
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