ユートピアで思い出すのは「エデンの園」だ。旧約聖書の創世記、神は天と地をつくられた。神が「光あれ」と言われ、光ができ、光と闇を分けられた。全てのものをつくられた後、神は「われに似せて、われをかたどって、人間をつくられた」。その人間が置かれた場所が「エデンの園」で、食べることには全く不自由しない楽園だった。働かなくても食べていける、そんな場所を人間は理想郷と考えたのだ。
これはどこの神話にも共通しているように思うから、人々は働かなくても生きていける社会に憧れたといえる。それだけ現実の社会は厳しいということだろう。旧約聖書に書かれた最初の人間であるアダムとイヴは神との約束を守れなくて、「エデンの園」を追い出される。つまり、働いて生きていかなければならなくなった。このふたりに男の子が2人生まれた。兄のカインは地を耕し、弟のアベルは羊飼った。
人間は地を耕す人々と、家畜を飼い餌を求めて旅する人々に分かれた。土地に執着するつまり土地に定着する人々と、自由に移動を繰り返す人々である。ところが神はアベルの捧げものを喜んだので、カインはアベルを殺してしまう。「エデンの園」を追放された人間の現実とその行く末を物語っている。「嫉妬」「独占」‥など、人間から切り離せない邪悪なものが常に付きまとうようになる。旧約聖書は神に約束されたイスラエル民族の物語であるけれど、人間がどういうものなのか、その本質をよく描き出している。
働かなくても生きていける「エデンの園」を、人間は自らつくり出さなくてはならなくなった。だから「理想郷論」が幾つも生まれてきたのだと思うし、キリスト教が定着したヨーロッパでは当然だけれど、キリスト教を土台に考えられてきたと思う。土地は神のもの、しかし収穫したものは人間のもの。だから収穫したものは分配されなければならない。そんな風に考え、どのように分配するかが追及されてきた。
18世紀に産業革命が起こり、生産は大幅に上がった。これが人間にとっての最初の産業革命なら、第2の産業革命は原子力を手に入れたことなのだろうか。第3はパソコンの発明による伝達情報が大きく変わったことなのか、そして第4の革命は何だろう。きっと科学者は次のものを開発しているのだろう。人の知恵が、産業革命を起こしたけれど、現実社会の方が人の知恵よりも先んじているようで不安だ。
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