2016年3月11日 福井県議会予算決算特別委員会での佐藤正雄県議の質疑を紹介します。
「知事の政治姿勢と予算案について」 佐藤 正雄 委員
◯佐藤委員 日本共産党の佐藤正雄である。
知事の政治姿勢と予算案に関して、何点か、まずお尋ねをしていく。
予算案では、人口をふやす政策と、一方で人口を流出させる政策、施策が打ち合いをしている状況があるのではないかと思っている。
北陸では人口減少対策の一方で、北陸新幹線開業との結果の矛盾がいろいろ出ている、若者の東京首都圏への流出がさらに強まるという結果になりかねないということが報道されている。例えば、3月5日付の読売新聞の社会面の大きな見出しは、北陸の受験生は関西を離れて、新幹線延伸で東京へシフトしているという記事であった。
私が、この間、指摘してきたように、新幹線と在来線の乗りかえ不便制の問題が、皮肉にも若者がより東京首都圏へ流出していくということを助長しているという状況があると思うのである。この新聞記事を読むと、何箇所も乗りかえ不便性の問題が指摘されているわけである。
最初の話題は、昔は寝ていても富山に着いたのに、新幹線のせいで一気に不便になったと、京都の観光から帰ってくる富山市の大学生が不満を言っているということである。
さらに、修学旅行でも、日本旅行の担当者は乗りかえには抵抗感があるみたいだということで取材されている。
それから、関西大学の担当者は、富山の先生からは乗りかえの不便さを指摘する声が出ていて、関西大学、同志社大学などは、軒並み減っていると言っている。北陸からの受験生、受験者が減るということは入学生も減るということで、こういう状況が、新幹線の逆効果で生まれているわけである。
だから、福井県は、この石川県、富山県で起こり始めた事態をどう分析して、対応をどう考えているのか、今こそ、私も再三言っているけれども、石川県、富山県、関西広域連合とも協力をして、新幹線は、言っても敦賀までしか行かないわけであるから、フリーゲージができない以上、必ず乗りかえが発生するわけであるから、やはりこの在来線特急をきちんと存続してもらわないと、北陸、関西が沈んで、より一層、首都圏集中が強まるという、政策と逆効果になるのではないか。
◯総合政策部長 今、話のあった、富山、石川で起きていることは、ストロー現象というよりは、むしろ北陸新幹線によって、学生さんが関西から関東に移った、シフトしたという状況かと思う。
北陸新幹線の効果として、2時間ちょっとで富山、金沢まででも2時間半を切るので、関東圏が非常に強くなっている。逆に関西圏はもう少し強くならないといけないということだと思う。ただ、敦賀開業後、福井駅、あるいは南越駅からの乗客が関西に向かうときには、乗ってすぐ敦賀駅で乗りかえることになるので、それは課題だと思う。
JR西日本は、敦賀開業後の特急存続については、特急と新幹線が乗客を取り合うという関係にあるので、整備スキーム上、難しいと言っている。一方で、国土交通省のほうは、昨年8月に与党の検討委員会の取りまとめの結果を受けて、接続のあり方については地元などの意向を踏まえ、関係者の協議を促進するという方針を示しているので、その辺の考えを十分確認しながら対応したいと考えている。また、乗りかえが必要な期間を少しでも短くする、それを早く解消するためにも、やはり北陸新幹線を早く大阪まで全線開業することが大事であるので、まずは年内の若狭ルートの決定を政府・与党に強く求めていきたいと考えている。
◯佐藤委員 大事なことは、現実として首都圏への集中が一層強まってきているということである。そこは見ていかないと、今、安倍政権がかけ声を出して、地方もかけ声をそろえて、東京一極集中を解消しようと言っているけれども、これは北陸でいうと逆効果が生まれているわけであるから、そこは手を打っていかないといけないと指摘しておきたいと思う。
それから、2点目、原子力関係である。本会議の質問でも取り上げたけれども、予算案には、県内での原子力推進と原発の海外輸出推進という問題がある。
東日本大震災、福島原発事故からきょうでちょうど5年になるわけである。福島の現状は、終息と回復に向かうどころか、国と東電による被災者の切り捨てが始まろうとしている。原発災害によって、命が追い詰められた方々は、後を絶たない。福島県での震災関連死は、何と2,000人を超えた。これは岩手県とか宮城県では起こっていない独特というか、特異な、関連死が多いという状況になっている。
原発周辺の大熊、双葉、富岡、浪江の四つの町は、昨年の国勢調査では人口がゼロということになった。先般、大津地裁は、高浜原発3・4号機の運転差しとめの仮処分を出して、運転中だった関西電力高浜3号機はきのう運転を停止した。動いている原発を司法がとめたという点では歴史的な出来事だと思う。
知事は、きのうの委員会の答弁の中で憂慮すべき事態だと答えたが、これは司法の判断が変わるということでの憂慮すべき事態という意味なのか。それとも、再稼働がとめられてしまったことを憂慮すべき事態と言っているのか、これはどちらなのか。
◯知 事 かなり幅広く申し上げたところであるけれども、高浜3・4号機の再稼働にかかる、いわゆる仮処分レベルでの、こうした決定が二転三転している──このような短期間の中で何回も裁判所あるいは裁判官の思いで、大事なことがあちらこちらと変わる、そして稼働がとめられることが繰り返されるという事態に対して、県民の原子力やエネルギーの安全や全体に対する信頼が揺らいでいるということに対する憂慮と申し上げているところである。
◯佐藤委員 両方兼ねているということである。
さらに知事は、きのうの委員会で司法に国の確固とした姿勢が行き渡っていない云々という表現をされた。しかし、これは三権分立であって、行政に対して司法が法に基づいて変更を求める、あるいは改善を求めるというのは、これまでも、長い歴史の中であるわけであるから、当然だと思うのであるが、知事の見解をお尋ねする。
◯知 事 原子力・エネルギー施策について、我々は繰り返し国の原子力・エネルギー政策に対する確固たる考え方、また、必要性あるいは重要性、仮にそう考えるのだったら、それをどう国民あるいは全て国の機関に対しても理解を求めるということは重要である。そういう意味で、司法当局も含め国全体でしっかりした、こうした理解をした上での対応が重要だろうと、こういうことを申し上げたところである。
◯佐藤委員 先日の大津地裁の仮処分決定は、そのように言われたけれども、以前の福井地裁の決定、それから福井地裁の仮処分の取り消し、このときには、たしか知事は、福井地裁が再稼働を認めない、大飯の再稼働を認めないという判決の際には司法の判断と行政とは別だということで、直接、司法の分野に対しての物言いはなかったと思う。行政と司法は別だという言い方だったと思う。それから、高浜の運転差しとめの仮処分が取り消された際には、たしか知事はマスコミに対してコメントを出さなかったと記憶している。
今回は、より踏み込んで司法の判断に物言いをされたわけで、そういう点では、これまで一線を画す態度をとってこられた。今回、なぜ司法の分野にまで踏み込んで物言いをされるのか。
◯知 事 司法の判断に言っているのではなく、もちろん三権に分かれているけれども、国全体がしっかりした対応をもっとすべきであろうということを引き続き申し上げているし、今回の事態を考えると、ますますそれはやるべき事柄だろうと、こういうことを申し上げているわけである。
◯佐藤委員 しかし、知事の発言を読む限り、あるいは聞く限り、この国の機関が、司法当局も含めて、きっちりしてもらわないといけないという趣旨で発言されているわけである。知事もよく承知のように、日本国憲法では76条は司法権の独立である。これに対して内閣とか行政とか、立法府が干渉してはならないということになっている。
なぜこれが出てきたのかと振り返れば、たまたまであるけれども、明治24年の大津事件。当時のロシアの皇太子が警備していた巡査に切りつけられるという事件が起こって、そのときに、伊藤博文を先頭に殺してしまえ、死刑だという議論があったときに、当時の大審院はだめだと、法律に基づいても最高刑は無期懲役だと、殺すわけにはいかないのであるということで司法の独立を守ったというところから来ているわけである。これが大津事件である。今回、大津地裁の判決である。たまたまであるけれども、それに対して司法権の独立を侵すような発言を知事がされるのは問題だと思わないか。
◯知 事 全くそんなことは言っていない。誤解もいいところで、やめていただきたいと思う。
◯佐藤委員 それならば、わざわざ司法の分野も含めて国がちゃんとやりなさいと言うのをやめたらどうか。
◯知 事 そういう意味ではなくて、我々は政府に原子力の理解とか、そういうことを引き続きしっかり求めるということを言っている。国に向かって、そういうことをしっかりやってほしいと言っているわけである。
◯佐藤委員 そもそも、司法といっても国民の意識から独立したものではないし、その時々のいろいろな政策から完全に独立したものではない。知事は、そう発言しているけれども、何十年という長い期間、原発は危ない、原発はとめてほしいという裁判は全国各地でほとんど負けている。国が認めた裁判所は安全だということで、原発訴訟というのは住民が訴訟を起こしても、ほとんど負けている。
しかし、5年前の福島の事故を契機に、やはりこれでいいのかということで裁判所の中でも議論があったと聞いているけれども、この福島原発事故を経験した国民の意識が変わった、当然それは裁判官にも影響を与えるので、裁判官の意識も変わってきたということなのである。そう思わないか。
◯知 事 裁判官というのは、独立した形で、いろいろな国民の意思なり、エネルギーのいろんな問題を考えて判断なさるわけであろうから、いろいろなことを国全体がもっとしっかりとやらないといけないだろうと言っているのである。
◯佐藤委員 従来はほとんど国が認めた原発に対して、表現は別として、裁判所はけちをつけることはほとんどなかったのである。
しかし、福島事故を受けて、裁判所の認識も変わってきたという面が、福井地裁とか、今回の大津地裁をみてもあると思う。やはり、行政も変わらなければいけないと私は思う。それで、知事は福島の被災地に、何度、足を運ばれているのか。再稼働を続け、もし仮に5年前の福島のような事故が、この福井県で起これば、高浜町とかおおい町とか、先ほどの人口がゼロになった町があるわけであるから、そういうようなリスクをたどるかもしれないということについては、どのように考えているのか。
◯知 事 どういう関係で言っているのかよくわからないけれども、福島のいろんな事故については、現場を見たり、あるいは県庁職員も、3,000人以上の職員が全国に先駆けて、いろいろなことをしている。そういう状況も聞き、また福島の知事などともいろいろなときにお会いをし、そういうところの状況を聞いているわけである。
そういう中で、午前中も申し上げたが、福島、あるいは東日本大震災5年ということで、もう一回しっかり政府が基本に立ち返って、あらゆる問題を国民に訴え、また、これまで腰を据えてどれぐらいやったのかということを、我々としては強く求めなければならないだろうということを申し上げているわけである。
◯佐藤委員 最近、いろいろな新聞で大震災、原発事故の特集などが組まれている。
例えば、きょうの日経新聞だけれども、元のアメリカの原子力規制委員長のグレゴリー・ヤツコさんのインタビュー記事が載っていた。
グレゴリー・ヤツコさんは、福島原発事故の最も重要な教訓は、事故は今でも起こり得るということだと述べられて、これは伝えるべきメッセージだが、原発は安全になったという正反対のことが今伝わっていると懸念されているわけである。
だから、福島のようなことは、もう福井では起こらないのだと考えるようなことが、一番危ないということを、逆に言えば言っているわけである。知事は、そうならないように慎重にやっているのであろうけれども、絶対そういうことが起こらないということで、逆に新たな安全神話を生み出してしまうということに対して、元アメリカの規制委員長の方も懸念を表明されているのである。
慎重に考えていくということは知事、お考えにならなのか。
◯知 事 要するに、福島のようなことを起こさない、起こさせないということを言っているわけで、今言われたことは、また別の話をしているように思う。
◯佐藤委員 事故が起こらないということを強調し過ぎる余り、結局、安全神話がどんどん復活していくということを、このアメリカの元規制委員長は懸念されていると思うし、私たちも同じような懸念を持っているということである。
それで、新規制基準のもとで県内では初めて、高浜原発3号機・4号機が再稼働したが4号機は、すぐにトラブルでとまった。これは全国的にもテレビ、新聞でも大きく報道されて、今回も裁判の結果も、福井県の県民にとって大きなダメージになったと思う。
知事は、いろいろ意見のやりとりをするときに、電力事業者を監視する立場なのだということをよく強調されているわけで、今回の高浜再稼働に当たっても、県の原子力安全専門委員会の審議を経て、自身も、現地点検もされて再稼働を認めるという経緯をとられたと思う。
知事は、しっかり監視してきたはずの高浜原発再稼働後に、4号機のようなトラブルが起こったということについては、どういう問題があるとお考えか。
◯安全環境部長 今回の原子炉の緊急停止については、発電機や主変圧器を流れる電流量を検知する装置の使い方を一時的に変更したにもかかわらず、装置が作動する電流量の上限値を30%のまま変更しなかったことが直接の原因である。今回のトラブルは、電気設備そのものに異常はなく、安全システムが正常に機能して、原子炉が停止したものである。こうした装置は、火力発電所などにおいても、通常使われているものであり、その設定は事業者の責任で行うこととされている。
事業者は、再発防止対策として当該装置の設定値を90%に改めるとともに、同種の計装機器の設定状況について、電機メーカーと協力して改めて点検を行うとしており、こうした対策の妥当性について現在、規制委員会の確認が行われているところである。
県としては、高浜3・4号機の再稼働に当たり、その工程の節目節目に職員が現場で立ち会うとともに、トラブル発生時には現地に職員を直ちに派遣して確認も行ってきた。
今後も、こうした県民の立場に立って国や事業者の対応を厳しく監視していく。
◯佐藤委員 部長の答弁だと事業者の責任ということで、県と原子力規制委員会、規制庁に責任はないというお考えか。
◯安全環境部長 規制委員会において、現在、確認中であるが、規制委員会に出された報告書の中身を見ると、先ほど答弁したとおり、電気設備の検知器の設定値が誤っていたということであって、こうした設定値については、原子力発電所に特有のものではなく、火力発電所などにも使われていて、そうした設定値の確認などは事業者の責任で行うこととされているものである。
◯佐藤委員 原子力発電・防災対策特別委員会のときにも課長、部長とも、やりとりしたけれども、結局、細かいことは原子力規制委員会の田中委員長も、それは事業者の責任でやってくれ、自分たちは知らないと言ってる。だから結局、無責任になる。国も規制委員会も何かトラブルがあっても、そんなことまで、自分たちは知らない、ちゃんと事業者がやってくれよと言っている。
県も、いろいろ言うけれども、それは事業者の責任だと。事故やトラブルが起こったときには、事業者の責任ということになって、結局、これはもう責任が曖昧になるというか、事業者が悪いと言ってしまえば、国も県も済むのであろうけれども、それだけでは県民は済まないだろうということを私は言いたい。
国も鳴り物入りで長期間かけて審査をした。県も長期間かけて審査をした。トラブルが起こったら国も県も関電が悪いのだと言う。知事、こういうシステムは県民としては納得いかないと思わないか。
◯知 事 トラブルと一口に言っても、いろんなレベルがあるし、いろんな場所のいろんなことがあるから、それに応じて、いろんな審査をし、議論をし、万が一何かがあったときには、それに対して対応をし、我々は県民の安全を第一に守り、その中身をしっかり申し上げる。
そして、電力事業者については、どういうことであろうと、我々にものを早く、そして県民に早くお知らせをし、これはこういう事柄で、こういう対応をするという対応を、これまで以上にとろうとしているし、とっているということである。
◯佐藤委員 いわゆる二次系であっても、あるいは電気系統であっても、重大事故につながることはあるわけである。美浜の3号機では二次系の事故で5人が亡くなった。直接、放射能を扱っている中心部ではないから、きちんと検査しなくしても大丈夫だろうということにならないわけであるから、そういう点は、きちんと責任を持っていくことを事業者と国にしっかり求めていただきたいと思う。
今回、プルサーマルということで3号機で大幅に燃料の数をふやして、4号機で新たに始めるということであるが、これについて関西電力からの説明と協議の内容をお尋ねする。
◯安全環境部長 このプルサーマルであるが、関西電力は高浜3・4号機に装荷するMOX燃料について、昨年10月14日に4号機の新規制基準にかかる使用前検査を申請した際に、あわせてMOX燃料使用にかかわる使用前検査の申請を行うとともに、3号機への装荷を発表をしている。
県としては、同日、安全協定に基づいて、それまで未定としていた燃料の取りかえ計画について、3号機にMOX燃料を24体、4号機に4体を装荷するとの年間保守運営計画の変更連絡書の提出を受けている。
このことについては、昨年11月の県原子力安全専門委員会において、関西電力からMOX燃料製造時の品質保証活動の実施状況等について説明を受けるとともに、燃料の保管状況を現地で確認しているところである。
◯佐藤委員 時間の関係で、まとめてお尋ねするが、これプルサーマルに伴って、新たな国の電源関係の交付金がどのぐらい入ってくるのか。
それから核燃料税で、普通のウラン燃料と比べて、このプルサーマル燃料を使うことによって、推計で幾らふえることになるのか。今はとまったけれども、とまらなかったらと仮定しての答弁で結構である。
◯総合政策部長 再稼働に伴う新たな交付金というのは、再稼働という事象で交付されるものであって、1年当たり5億円5年間で計25億円で、これはプルサーマルとは関係ない。
◯総務部長 MOX燃料の価格についてであるけれども、プルサーマルの燃料が幾らであるかということについては個別企業の税務情報であるので公表はできない。一般的な話として、プルサーマルに使われる燃料であるMOX燃料はウラン燃料よりも値段は高いと認識をしている。
◯佐藤委員 知事にお尋ねするが、このプルサーマルは常々、普通のウラン燃料よりも安全性の懸念があるということが指摘されていた。今回、福島原発以降、初めて大量にプルサーマル燃料を入れて再稼働するということで、税収はそれなりに大きくふえてくる。危険な燃料をふやして税金の収入が上がるという点では、問題があるのではないか。やはり安全の側に立って、もっと考えるべきではないか。
◯総務部長 プルサーマルについては、国策であるので、資源を有効利用する核燃料サイクルの推進に不可欠であるというところから始まっている問題で、税収とは直接結びつくものではないと思っている。
◯佐藤委員 わざわざ燃料をふやしているから、こういうことを私は質問している。
福島原発事故の以前と同じ燃料の数なら、こういう質問は出ない。そういうことがあるから質問しているので、そういう点も、疑われるのだということは、明確に指摘しておきたいと思う。
「福祉行政」
◯佐藤委員 最後に、福祉関係の質問に入る。今、子供の貧困が問題になっている。子供の貧困は、すなわち社会と家庭の貧困ということで、かつて小泉政権の構造改革以来、非正規労働者がふえるなどで、貧困格差が、どんどん日本でも広がっている。安倍政権のもとでも、年金の削減とか、消費税増税とか、さらにそれが広がる方向にあり、家庭の貧困、格差の貧困が広がっている政策だと思う。
それと、子供の貧困について、福井県内ではいろいろな数字が出ていると思うのであるが、県の推計では、いわゆる貧困家庭というのは何世帯、何人ぐらいという認識であるか。
◯健康福祉部長 県の状況、全国的にも比較できるような数字で紹介する。公的扶助の対象となっている世帯数を一つの指標として捉えると、平成26年7月の統計によると、生活保護受給世帯が県内3,200世帯あるが、その中で、その世帯の構成員となっている小中学生の数というと204人、これは全国的では少ないほうから4番目ということである。高校生であると56人、これは全国から見れば、少ないほうから3番目という状況である。もう少し範囲を広げて、小・中学校において就学援助を受けている児童・生徒の数でいうと5,428名であり、全国的には、少ないほうから8番目ぐらいの数字である。
先日報道で、山形大学の研究が出ていた。これによると、福井県の子供の貧困世帯、大体3,300世帯ということで、子供のいる世帯に占める割合は5.5%ということで、全国では最も低い率だという報道がなされている。
◯佐藤委員 今、いろいろ数字を出されて、全国では低いのだというお話であった。もちろん全国の率というのも大事であるが、子供は一人一人の人間であるから率が低ければ、要するに5,400人のことを考えなくてもいいというわけではもちろんないので、そこはしっかりやっていただく必要がある。今、県内でも貧困家庭の子供に対する学習支援などが行われている。県や福井市でもやっていると思うのであるが。
教員OBの有志らによるボランティア活動による無料塾が福井市内で始まって、マスコミでも大きく取り上げられた。私も、先生から具体的な話を聞いたが、例えば小学校6年生の子供であるけれども、父母が離婚をして、その後、お母さんが亡くなってしまった。おばあちゃんが育てているけども、生活も学費も本当に大変で、何とか助けてほしいという話だ。
小学4年生の子、お父さんがリストラに遭って、もう元気をなくして家に引きこもってしまった。お母さんだけで稼ぎをしているけれども、これもなかなか大変だ、何とか助けてほしいということだ。
高校1年生の子、中学校でいじめに遭って、不登校になってしまった。母の実家の中学校に転校したけれど、なかなか学校にも行かないため、学力がないので、今、高校生だけれども中学校のときの勉強からやり直しをしたいというお子さん。
小学校5年生の子、育児放棄に近い家庭で育って、学力が低い。学校では毎日叱られて、叱られて、本当に居場所がない。こういう話をいろいろ聞いた。
これはごく一部だと思うのである。その福井市内で無料の塾をやっているという記事が新聞に載ったことによって、その教員OBの先生のところに問い合わせが何十件と来た。そのうちの一部を紹介したのであるけれども、先ほども言ったように、パーセントではなく、一人一人見れば親を亡くしたり、親がリストラに遭ったり、学校でいじめに遭って不登校になったり、貧困で学力をつける機会が十分でないなど、こういう状況が、まだまだあると思うのである。
このような子供の貧困の状態の把握、それから学習支援の対応は一体どうなっているのか、現状の課題認識と、今後の取り組みについてお尋ねする。
◯健康福祉部長 困窮世帯の子供たちであるが、学習習慣が十分に身についていないことも多い。
学習意欲の向上等が課題となっているので、県また市においては、小中学生を対象に学習習慣の定着など、基礎的なことを含めた学習教室を開催している。これまで学校を通した募集、あるいは市町の児童扶養手当の窓口における案内の配布により周知を図ってきていて、ことし1月現在であるが、学習教室には33教室に280名の方が参加していて、昨年よりふえている状況である。
また、先ほど指摘もあったように、親の方の状況ということもある。そういった面で親の方の就労支援が重要だと思っていて、県においては、ひとり親家庭の、親の資格取得を支援するために、養成機関等における就学期間中の生活費の支給というものも行っている。
また、新しい取り組みとして、新年度からは大学等への進学支援をするために、生活福祉資金の教育支援費貸付上限額の引き上げ。また、児童養護施設に入っている高校生の方の大学の受験料や入学金の支給と生活費等の貸し付けといったことで、子供が希望する進路を選択して、将来的に自立することができるようにといった形で応援していきたいと考えている。
◯佐藤委員 ひとり親だけでなくて、仮に二親いたとしても、さっき言ったようにリストラとか、いろんな事情で厳しくなっている家庭もある。県としては広く気を配るというか、政策を配るというか、そういうことでお願いをしたいと思っている。
それから、繰り返し要求をしているが、子供の医療費の窓口無料化の問題であるけれども、まだ、やられてない県というのは、残り数県ということになってきている。これは国が、ペナルティーをかけているのが一番悪いのであるが、そういう状況でもほとんどの県で実行している。
なぜ多くの県で実行しているのに、福井県が取り組まないのかという点を再度お尋ねしたい。あと、実際、窓口で一旦、全額払うわけであるが、戻ってくる金額の割合はどうなっているかという点をお尋ねする。
◯健康福祉部長 取り組みがおくれているような言われ方すると心外であるが、全国的に見て、子ども医療費の助成対象を就学前までとしている自治体が34県ある。しかもその中には、所得制限をかけているところもあるが、本県は小学3年生までを対象とし、市町が単独で上乗せをして中3までやっていて、全国的に見て手厚い制度であるということは理解をいただきたいと思う。
窓口の無料化実施については、委員指摘のとおり国民健康保険の国庫負担金の減額措置によって、市町の負担額が増加する。また、医療費の助成制度との調整、他の医療費の無料化との調整といった課題があって、今、実施主体である市町との協議を行っているところである。
この課題となっている国保の減額措置については、引き続き全国自治会等を通じて廃止を働きかけているところであるけれども、国において昨年9月から、子供の医療費のあり方について、民間有識者との研究会をされているということも聞いているので、そういった成り行きも、ぜひ注視していきたいと思っている。
一旦、負担金で払われる金額は16億円である。そのうち保護者に15億2,000万円が自動で償還されるということで、これは自己負担分を取っているということでその部分を除いて100%償還しているという状況である。
◯松井副委員長 佐藤委員の質疑時間は終了した。
◯佐藤委員 もう時間が来たので終わるが、国の委員会も、なかなか賛否両論と言っているようであるから、さらにプッシュしてお願いする。
「知事の政治姿勢と予算案について」 佐藤 正雄 委員
◯佐藤委員 日本共産党の佐藤正雄である。
知事の政治姿勢と予算案に関して、何点か、まずお尋ねをしていく。
予算案では、人口をふやす政策と、一方で人口を流出させる政策、施策が打ち合いをしている状況があるのではないかと思っている。
北陸では人口減少対策の一方で、北陸新幹線開業との結果の矛盾がいろいろ出ている、若者の東京首都圏への流出がさらに強まるという結果になりかねないということが報道されている。例えば、3月5日付の読売新聞の社会面の大きな見出しは、北陸の受験生は関西を離れて、新幹線延伸で東京へシフトしているという記事であった。
私が、この間、指摘してきたように、新幹線と在来線の乗りかえ不便制の問題が、皮肉にも若者がより東京首都圏へ流出していくということを助長しているという状況があると思うのである。この新聞記事を読むと、何箇所も乗りかえ不便性の問題が指摘されているわけである。
最初の話題は、昔は寝ていても富山に着いたのに、新幹線のせいで一気に不便になったと、京都の観光から帰ってくる富山市の大学生が不満を言っているということである。
さらに、修学旅行でも、日本旅行の担当者は乗りかえには抵抗感があるみたいだということで取材されている。
それから、関西大学の担当者は、富山の先生からは乗りかえの不便さを指摘する声が出ていて、関西大学、同志社大学などは、軒並み減っていると言っている。北陸からの受験生、受験者が減るということは入学生も減るということで、こういう状況が、新幹線の逆効果で生まれているわけである。
だから、福井県は、この石川県、富山県で起こり始めた事態をどう分析して、対応をどう考えているのか、今こそ、私も再三言っているけれども、石川県、富山県、関西広域連合とも協力をして、新幹線は、言っても敦賀までしか行かないわけであるから、フリーゲージができない以上、必ず乗りかえが発生するわけであるから、やはりこの在来線特急をきちんと存続してもらわないと、北陸、関西が沈んで、より一層、首都圏集中が強まるという、政策と逆効果になるのではないか。
◯総合政策部長 今、話のあった、富山、石川で起きていることは、ストロー現象というよりは、むしろ北陸新幹線によって、学生さんが関西から関東に移った、シフトしたという状況かと思う。
北陸新幹線の効果として、2時間ちょっとで富山、金沢まででも2時間半を切るので、関東圏が非常に強くなっている。逆に関西圏はもう少し強くならないといけないということだと思う。ただ、敦賀開業後、福井駅、あるいは南越駅からの乗客が関西に向かうときには、乗ってすぐ敦賀駅で乗りかえることになるので、それは課題だと思う。
JR西日本は、敦賀開業後の特急存続については、特急と新幹線が乗客を取り合うという関係にあるので、整備スキーム上、難しいと言っている。一方で、国土交通省のほうは、昨年8月に与党の検討委員会の取りまとめの結果を受けて、接続のあり方については地元などの意向を踏まえ、関係者の協議を促進するという方針を示しているので、その辺の考えを十分確認しながら対応したいと考えている。また、乗りかえが必要な期間を少しでも短くする、それを早く解消するためにも、やはり北陸新幹線を早く大阪まで全線開業することが大事であるので、まずは年内の若狭ルートの決定を政府・与党に強く求めていきたいと考えている。
◯佐藤委員 大事なことは、現実として首都圏への集中が一層強まってきているということである。そこは見ていかないと、今、安倍政権がかけ声を出して、地方もかけ声をそろえて、東京一極集中を解消しようと言っているけれども、これは北陸でいうと逆効果が生まれているわけであるから、そこは手を打っていかないといけないと指摘しておきたいと思う。
それから、2点目、原子力関係である。本会議の質問でも取り上げたけれども、予算案には、県内での原子力推進と原発の海外輸出推進という問題がある。
東日本大震災、福島原発事故からきょうでちょうど5年になるわけである。福島の現状は、終息と回復に向かうどころか、国と東電による被災者の切り捨てが始まろうとしている。原発災害によって、命が追い詰められた方々は、後を絶たない。福島県での震災関連死は、何と2,000人を超えた。これは岩手県とか宮城県では起こっていない独特というか、特異な、関連死が多いという状況になっている。
原発周辺の大熊、双葉、富岡、浪江の四つの町は、昨年の国勢調査では人口がゼロということになった。先般、大津地裁は、高浜原発3・4号機の運転差しとめの仮処分を出して、運転中だった関西電力高浜3号機はきのう運転を停止した。動いている原発を司法がとめたという点では歴史的な出来事だと思う。
知事は、きのうの委員会の答弁の中で憂慮すべき事態だと答えたが、これは司法の判断が変わるということでの憂慮すべき事態という意味なのか。それとも、再稼働がとめられてしまったことを憂慮すべき事態と言っているのか、これはどちらなのか。
◯知 事 かなり幅広く申し上げたところであるけれども、高浜3・4号機の再稼働にかかる、いわゆる仮処分レベルでの、こうした決定が二転三転している──このような短期間の中で何回も裁判所あるいは裁判官の思いで、大事なことがあちらこちらと変わる、そして稼働がとめられることが繰り返されるという事態に対して、県民の原子力やエネルギーの安全や全体に対する信頼が揺らいでいるということに対する憂慮と申し上げているところである。
◯佐藤委員 両方兼ねているということである。
さらに知事は、きのうの委員会で司法に国の確固とした姿勢が行き渡っていない云々という表現をされた。しかし、これは三権分立であって、行政に対して司法が法に基づいて変更を求める、あるいは改善を求めるというのは、これまでも、長い歴史の中であるわけであるから、当然だと思うのであるが、知事の見解をお尋ねする。
◯知 事 原子力・エネルギー施策について、我々は繰り返し国の原子力・エネルギー政策に対する確固たる考え方、また、必要性あるいは重要性、仮にそう考えるのだったら、それをどう国民あるいは全て国の機関に対しても理解を求めるということは重要である。そういう意味で、司法当局も含め国全体でしっかりした、こうした理解をした上での対応が重要だろうと、こういうことを申し上げたところである。
◯佐藤委員 先日の大津地裁の仮処分決定は、そのように言われたけれども、以前の福井地裁の決定、それから福井地裁の仮処分の取り消し、このときには、たしか知事は、福井地裁が再稼働を認めない、大飯の再稼働を認めないという判決の際には司法の判断と行政とは別だということで、直接、司法の分野に対しての物言いはなかったと思う。行政と司法は別だという言い方だったと思う。それから、高浜の運転差しとめの仮処分が取り消された際には、たしか知事はマスコミに対してコメントを出さなかったと記憶している。
今回は、より踏み込んで司法の判断に物言いをされたわけで、そういう点では、これまで一線を画す態度をとってこられた。今回、なぜ司法の分野にまで踏み込んで物言いをされるのか。
◯知 事 司法の判断に言っているのではなく、もちろん三権に分かれているけれども、国全体がしっかりした対応をもっとすべきであろうということを引き続き申し上げているし、今回の事態を考えると、ますますそれはやるべき事柄だろうと、こういうことを申し上げているわけである。
◯佐藤委員 しかし、知事の発言を読む限り、あるいは聞く限り、この国の機関が、司法当局も含めて、きっちりしてもらわないといけないという趣旨で発言されているわけである。知事もよく承知のように、日本国憲法では76条は司法権の独立である。これに対して内閣とか行政とか、立法府が干渉してはならないということになっている。
なぜこれが出てきたのかと振り返れば、たまたまであるけれども、明治24年の大津事件。当時のロシアの皇太子が警備していた巡査に切りつけられるという事件が起こって、そのときに、伊藤博文を先頭に殺してしまえ、死刑だという議論があったときに、当時の大審院はだめだと、法律に基づいても最高刑は無期懲役だと、殺すわけにはいかないのであるということで司法の独立を守ったというところから来ているわけである。これが大津事件である。今回、大津地裁の判決である。たまたまであるけれども、それに対して司法権の独立を侵すような発言を知事がされるのは問題だと思わないか。
◯知 事 全くそんなことは言っていない。誤解もいいところで、やめていただきたいと思う。
◯佐藤委員 それならば、わざわざ司法の分野も含めて国がちゃんとやりなさいと言うのをやめたらどうか。
◯知 事 そういう意味ではなくて、我々は政府に原子力の理解とか、そういうことを引き続きしっかり求めるということを言っている。国に向かって、そういうことをしっかりやってほしいと言っているわけである。
◯佐藤委員 そもそも、司法といっても国民の意識から独立したものではないし、その時々のいろいろな政策から完全に独立したものではない。知事は、そう発言しているけれども、何十年という長い期間、原発は危ない、原発はとめてほしいという裁判は全国各地でほとんど負けている。国が認めた裁判所は安全だということで、原発訴訟というのは住民が訴訟を起こしても、ほとんど負けている。
しかし、5年前の福島の事故を契機に、やはりこれでいいのかということで裁判所の中でも議論があったと聞いているけれども、この福島原発事故を経験した国民の意識が変わった、当然それは裁判官にも影響を与えるので、裁判官の意識も変わってきたということなのである。そう思わないか。
◯知 事 裁判官というのは、独立した形で、いろいろな国民の意思なり、エネルギーのいろんな問題を考えて判断なさるわけであろうから、いろいろなことを国全体がもっとしっかりとやらないといけないだろうと言っているのである。
◯佐藤委員 従来はほとんど国が認めた原発に対して、表現は別として、裁判所はけちをつけることはほとんどなかったのである。
しかし、福島事故を受けて、裁判所の認識も変わってきたという面が、福井地裁とか、今回の大津地裁をみてもあると思う。やはり、行政も変わらなければいけないと私は思う。それで、知事は福島の被災地に、何度、足を運ばれているのか。再稼働を続け、もし仮に5年前の福島のような事故が、この福井県で起これば、高浜町とかおおい町とか、先ほどの人口がゼロになった町があるわけであるから、そういうようなリスクをたどるかもしれないということについては、どのように考えているのか。
◯知 事 どういう関係で言っているのかよくわからないけれども、福島のいろんな事故については、現場を見たり、あるいは県庁職員も、3,000人以上の職員が全国に先駆けて、いろいろなことをしている。そういう状況も聞き、また福島の知事などともいろいろなときにお会いをし、そういうところの状況を聞いているわけである。
そういう中で、午前中も申し上げたが、福島、あるいは東日本大震災5年ということで、もう一回しっかり政府が基本に立ち返って、あらゆる問題を国民に訴え、また、これまで腰を据えてどれぐらいやったのかということを、我々としては強く求めなければならないだろうということを申し上げているわけである。
◯佐藤委員 最近、いろいろな新聞で大震災、原発事故の特集などが組まれている。
例えば、きょうの日経新聞だけれども、元のアメリカの原子力規制委員長のグレゴリー・ヤツコさんのインタビュー記事が載っていた。
グレゴリー・ヤツコさんは、福島原発事故の最も重要な教訓は、事故は今でも起こり得るということだと述べられて、これは伝えるべきメッセージだが、原発は安全になったという正反対のことが今伝わっていると懸念されているわけである。
だから、福島のようなことは、もう福井では起こらないのだと考えるようなことが、一番危ないということを、逆に言えば言っているわけである。知事は、そうならないように慎重にやっているのであろうけれども、絶対そういうことが起こらないということで、逆に新たな安全神話を生み出してしまうということに対して、元アメリカの規制委員長の方も懸念を表明されているのである。
慎重に考えていくということは知事、お考えにならなのか。
◯知 事 要するに、福島のようなことを起こさない、起こさせないということを言っているわけで、今言われたことは、また別の話をしているように思う。
◯佐藤委員 事故が起こらないということを強調し過ぎる余り、結局、安全神話がどんどん復活していくということを、このアメリカの元規制委員長は懸念されていると思うし、私たちも同じような懸念を持っているということである。
それで、新規制基準のもとで県内では初めて、高浜原発3号機・4号機が再稼働したが4号機は、すぐにトラブルでとまった。これは全国的にもテレビ、新聞でも大きく報道されて、今回も裁判の結果も、福井県の県民にとって大きなダメージになったと思う。
知事は、いろいろ意見のやりとりをするときに、電力事業者を監視する立場なのだということをよく強調されているわけで、今回の高浜再稼働に当たっても、県の原子力安全専門委員会の審議を経て、自身も、現地点検もされて再稼働を認めるという経緯をとられたと思う。
知事は、しっかり監視してきたはずの高浜原発再稼働後に、4号機のようなトラブルが起こったということについては、どういう問題があるとお考えか。
◯安全環境部長 今回の原子炉の緊急停止については、発電機や主変圧器を流れる電流量を検知する装置の使い方を一時的に変更したにもかかわらず、装置が作動する電流量の上限値を30%のまま変更しなかったことが直接の原因である。今回のトラブルは、電気設備そのものに異常はなく、安全システムが正常に機能して、原子炉が停止したものである。こうした装置は、火力発電所などにおいても、通常使われているものであり、その設定は事業者の責任で行うこととされている。
事業者は、再発防止対策として当該装置の設定値を90%に改めるとともに、同種の計装機器の設定状況について、電機メーカーと協力して改めて点検を行うとしており、こうした対策の妥当性について現在、規制委員会の確認が行われているところである。
県としては、高浜3・4号機の再稼働に当たり、その工程の節目節目に職員が現場で立ち会うとともに、トラブル発生時には現地に職員を直ちに派遣して確認も行ってきた。
今後も、こうした県民の立場に立って国や事業者の対応を厳しく監視していく。
◯佐藤委員 部長の答弁だと事業者の責任ということで、県と原子力規制委員会、規制庁に責任はないというお考えか。
◯安全環境部長 規制委員会において、現在、確認中であるが、規制委員会に出された報告書の中身を見ると、先ほど答弁したとおり、電気設備の検知器の設定値が誤っていたということであって、こうした設定値については、原子力発電所に特有のものではなく、火力発電所などにも使われていて、そうした設定値の確認などは事業者の責任で行うこととされているものである。
◯佐藤委員 原子力発電・防災対策特別委員会のときにも課長、部長とも、やりとりしたけれども、結局、細かいことは原子力規制委員会の田中委員長も、それは事業者の責任でやってくれ、自分たちは知らないと言ってる。だから結局、無責任になる。国も規制委員会も何かトラブルがあっても、そんなことまで、自分たちは知らない、ちゃんと事業者がやってくれよと言っている。
県も、いろいろ言うけれども、それは事業者の責任だと。事故やトラブルが起こったときには、事業者の責任ということになって、結局、これはもう責任が曖昧になるというか、事業者が悪いと言ってしまえば、国も県も済むのであろうけれども、それだけでは県民は済まないだろうということを私は言いたい。
国も鳴り物入りで長期間かけて審査をした。県も長期間かけて審査をした。トラブルが起こったら国も県も関電が悪いのだと言う。知事、こういうシステムは県民としては納得いかないと思わないか。
◯知 事 トラブルと一口に言っても、いろんなレベルがあるし、いろんな場所のいろんなことがあるから、それに応じて、いろんな審査をし、議論をし、万が一何かがあったときには、それに対して対応をし、我々は県民の安全を第一に守り、その中身をしっかり申し上げる。
そして、電力事業者については、どういうことであろうと、我々にものを早く、そして県民に早くお知らせをし、これはこういう事柄で、こういう対応をするという対応を、これまで以上にとろうとしているし、とっているということである。
◯佐藤委員 いわゆる二次系であっても、あるいは電気系統であっても、重大事故につながることはあるわけである。美浜の3号機では二次系の事故で5人が亡くなった。直接、放射能を扱っている中心部ではないから、きちんと検査しなくしても大丈夫だろうということにならないわけであるから、そういう点は、きちんと責任を持っていくことを事業者と国にしっかり求めていただきたいと思う。
今回、プルサーマルということで3号機で大幅に燃料の数をふやして、4号機で新たに始めるということであるが、これについて関西電力からの説明と協議の内容をお尋ねする。
◯安全環境部長 このプルサーマルであるが、関西電力は高浜3・4号機に装荷するMOX燃料について、昨年10月14日に4号機の新規制基準にかかる使用前検査を申請した際に、あわせてMOX燃料使用にかかわる使用前検査の申請を行うとともに、3号機への装荷を発表をしている。
県としては、同日、安全協定に基づいて、それまで未定としていた燃料の取りかえ計画について、3号機にMOX燃料を24体、4号機に4体を装荷するとの年間保守運営計画の変更連絡書の提出を受けている。
このことについては、昨年11月の県原子力安全専門委員会において、関西電力からMOX燃料製造時の品質保証活動の実施状況等について説明を受けるとともに、燃料の保管状況を現地で確認しているところである。
◯佐藤委員 時間の関係で、まとめてお尋ねするが、これプルサーマルに伴って、新たな国の電源関係の交付金がどのぐらい入ってくるのか。
それから核燃料税で、普通のウラン燃料と比べて、このプルサーマル燃料を使うことによって、推計で幾らふえることになるのか。今はとまったけれども、とまらなかったらと仮定しての答弁で結構である。
◯総合政策部長 再稼働に伴う新たな交付金というのは、再稼働という事象で交付されるものであって、1年当たり5億円5年間で計25億円で、これはプルサーマルとは関係ない。
◯総務部長 MOX燃料の価格についてであるけれども、プルサーマルの燃料が幾らであるかということについては個別企業の税務情報であるので公表はできない。一般的な話として、プルサーマルに使われる燃料であるMOX燃料はウラン燃料よりも値段は高いと認識をしている。
◯佐藤委員 知事にお尋ねするが、このプルサーマルは常々、普通のウラン燃料よりも安全性の懸念があるということが指摘されていた。今回、福島原発以降、初めて大量にプルサーマル燃料を入れて再稼働するということで、税収はそれなりに大きくふえてくる。危険な燃料をふやして税金の収入が上がるという点では、問題があるのではないか。やはり安全の側に立って、もっと考えるべきではないか。
◯総務部長 プルサーマルについては、国策であるので、資源を有効利用する核燃料サイクルの推進に不可欠であるというところから始まっている問題で、税収とは直接結びつくものではないと思っている。
◯佐藤委員 わざわざ燃料をふやしているから、こういうことを私は質問している。
福島原発事故の以前と同じ燃料の数なら、こういう質問は出ない。そういうことがあるから質問しているので、そういう点も、疑われるのだということは、明確に指摘しておきたいと思う。
「福祉行政」
◯佐藤委員 最後に、福祉関係の質問に入る。今、子供の貧困が問題になっている。子供の貧困は、すなわち社会と家庭の貧困ということで、かつて小泉政権の構造改革以来、非正規労働者がふえるなどで、貧困格差が、どんどん日本でも広がっている。安倍政権のもとでも、年金の削減とか、消費税増税とか、さらにそれが広がる方向にあり、家庭の貧困、格差の貧困が広がっている政策だと思う。
それと、子供の貧困について、福井県内ではいろいろな数字が出ていると思うのであるが、県の推計では、いわゆる貧困家庭というのは何世帯、何人ぐらいという認識であるか。
◯健康福祉部長 県の状況、全国的にも比較できるような数字で紹介する。公的扶助の対象となっている世帯数を一つの指標として捉えると、平成26年7月の統計によると、生活保護受給世帯が県内3,200世帯あるが、その中で、その世帯の構成員となっている小中学生の数というと204人、これは全国的では少ないほうから4番目ということである。高校生であると56人、これは全国から見れば、少ないほうから3番目という状況である。もう少し範囲を広げて、小・中学校において就学援助を受けている児童・生徒の数でいうと5,428名であり、全国的には、少ないほうから8番目ぐらいの数字である。
先日報道で、山形大学の研究が出ていた。これによると、福井県の子供の貧困世帯、大体3,300世帯ということで、子供のいる世帯に占める割合は5.5%ということで、全国では最も低い率だという報道がなされている。
◯佐藤委員 今、いろいろ数字を出されて、全国では低いのだというお話であった。もちろん全国の率というのも大事であるが、子供は一人一人の人間であるから率が低ければ、要するに5,400人のことを考えなくてもいいというわけではもちろんないので、そこはしっかりやっていただく必要がある。今、県内でも貧困家庭の子供に対する学習支援などが行われている。県や福井市でもやっていると思うのであるが。
教員OBの有志らによるボランティア活動による無料塾が福井市内で始まって、マスコミでも大きく取り上げられた。私も、先生から具体的な話を聞いたが、例えば小学校6年生の子供であるけれども、父母が離婚をして、その後、お母さんが亡くなってしまった。おばあちゃんが育てているけども、生活も学費も本当に大変で、何とか助けてほしいという話だ。
小学4年生の子、お父さんがリストラに遭って、もう元気をなくして家に引きこもってしまった。お母さんだけで稼ぎをしているけれども、これもなかなか大変だ、何とか助けてほしいということだ。
高校1年生の子、中学校でいじめに遭って、不登校になってしまった。母の実家の中学校に転校したけれど、なかなか学校にも行かないため、学力がないので、今、高校生だけれども中学校のときの勉強からやり直しをしたいというお子さん。
小学校5年生の子、育児放棄に近い家庭で育って、学力が低い。学校では毎日叱られて、叱られて、本当に居場所がない。こういう話をいろいろ聞いた。
これはごく一部だと思うのである。その福井市内で無料の塾をやっているという記事が新聞に載ったことによって、その教員OBの先生のところに問い合わせが何十件と来た。そのうちの一部を紹介したのであるけれども、先ほども言ったように、パーセントではなく、一人一人見れば親を亡くしたり、親がリストラに遭ったり、学校でいじめに遭って不登校になったり、貧困で学力をつける機会が十分でないなど、こういう状況が、まだまだあると思うのである。
このような子供の貧困の状態の把握、それから学習支援の対応は一体どうなっているのか、現状の課題認識と、今後の取り組みについてお尋ねする。
◯健康福祉部長 困窮世帯の子供たちであるが、学習習慣が十分に身についていないことも多い。
学習意欲の向上等が課題となっているので、県また市においては、小中学生を対象に学習習慣の定着など、基礎的なことを含めた学習教室を開催している。これまで学校を通した募集、あるいは市町の児童扶養手当の窓口における案内の配布により周知を図ってきていて、ことし1月現在であるが、学習教室には33教室に280名の方が参加していて、昨年よりふえている状況である。
また、先ほど指摘もあったように、親の方の状況ということもある。そういった面で親の方の就労支援が重要だと思っていて、県においては、ひとり親家庭の、親の資格取得を支援するために、養成機関等における就学期間中の生活費の支給というものも行っている。
また、新しい取り組みとして、新年度からは大学等への進学支援をするために、生活福祉資金の教育支援費貸付上限額の引き上げ。また、児童養護施設に入っている高校生の方の大学の受験料や入学金の支給と生活費等の貸し付けといったことで、子供が希望する進路を選択して、将来的に自立することができるようにといった形で応援していきたいと考えている。
◯佐藤委員 ひとり親だけでなくて、仮に二親いたとしても、さっき言ったようにリストラとか、いろんな事情で厳しくなっている家庭もある。県としては広く気を配るというか、政策を配るというか、そういうことでお願いをしたいと思っている。
それから、繰り返し要求をしているが、子供の医療費の窓口無料化の問題であるけれども、まだ、やられてない県というのは、残り数県ということになってきている。これは国が、ペナルティーをかけているのが一番悪いのであるが、そういう状況でもほとんどの県で実行している。
なぜ多くの県で実行しているのに、福井県が取り組まないのかという点を再度お尋ねしたい。あと、実際、窓口で一旦、全額払うわけであるが、戻ってくる金額の割合はどうなっているかという点をお尋ねする。
◯健康福祉部長 取り組みがおくれているような言われ方すると心外であるが、全国的に見て、子ども医療費の助成対象を就学前までとしている自治体が34県ある。しかもその中には、所得制限をかけているところもあるが、本県は小学3年生までを対象とし、市町が単独で上乗せをして中3までやっていて、全国的に見て手厚い制度であるということは理解をいただきたいと思う。
窓口の無料化実施については、委員指摘のとおり国民健康保険の国庫負担金の減額措置によって、市町の負担額が増加する。また、医療費の助成制度との調整、他の医療費の無料化との調整といった課題があって、今、実施主体である市町との協議を行っているところである。
この課題となっている国保の減額措置については、引き続き全国自治会等を通じて廃止を働きかけているところであるけれども、国において昨年9月から、子供の医療費のあり方について、民間有識者との研究会をされているということも聞いているので、そういった成り行きも、ぜひ注視していきたいと思っている。
一旦、負担金で払われる金額は16億円である。そのうち保護者に15億2,000万円が自動で償還されるということで、これは自己負担分を取っているということでその部分を除いて100%償還しているという状況である。
◯松井副委員長 佐藤委員の質疑時間は終了した。
◯佐藤委員 もう時間が来たので終わるが、国の委員会も、なかなか賛否両論と言っているようであるから、さらにプッシュしてお願いする。