主催者挨拶 伊波敏夫
皆様、こんにちは。ハンセン病市民学会全国交流集会in長野」のオンラインセミナーに、参加を頂き感謝を申し上げます。
そして、この日のために準備をして頂いた実行員会の皆様、ご苦労さまでした。
志を同じくする人たちが、一堂で、人権や人間の尊厳を論議することもできず、声や、お互いのまなざしにも遠い、デジタル回線による大会開催は、決して、ベストの開催方法ではありません。ハンセン病市民学会は、「人権」「差別」「偏見」を座標軸にして、開催されてきました。
今、社会に表れている「コロナ差別」は、見過ごしに、出来ない問題をはらんでいます。そのため、ここで、一刻の足踏みも、許されません。
社会意識の小さなホコロビは、やがて、社会を、分断する導火線となります。
実行委員会は、様々な開催方法を検討し、市民学会が果たすべき課題を実行するため、今回と次回の3月27日、新しい取り組みとして、オンラインセミナーを開催いたしました。
今、世界のいたるところで、新型コロナウイルスとの闘いが続けられています。
最近の世界のコロナ感染者は9,700万人を超え、死者は209万人を突破しました。
わが国でも、間もなく累計感染者36万人、死者は5,000人に迫りつつあります。
人類は紀元前の大昔から、さまざまな感染症と闘ってきました。
主な感染症は、天然痘・ペスト・スペイン風邪、近年では、エイズ・エボラなどがありました。
今、新型コロナの蔓延で、見られる社会意識は、恐怖と不安が、人々の心の隙間で、自分と他者との線引きを行ない、感染者は身近な地域の「偏見・差別」の対象者となっています。
感染爆発はわが国でも、多くの人たちの働く場を奪い、「貧困」や「格差」を増大させ、日常生活さえ、困窮する人たちが生み出されています。
新型コロナの感染爆発は、私たちに、これからの人間社会は、どうあるべきかを問われているのです。
わが国の感染症に関する法律は、過去の人権無視の反省を生かし、「感染症法」と「新型インフルエンザ等特別措置法」が施行されていますが、「不安」と「恐怖」に揺れる「世論」というお供を引き連れ、国家が掲げる「公益」の旗は、「私権領域」に、たやすく、攻め込むようになりました。
「公益」と「私権」の関係性は、民主主義国家の、重要課題のひとつです。
今、通常国会では、「検疫法」「感染症法」「特別措置法」の罰則強化の改正審議が、なされようとしています。
「感染拡大」という恐怖の前に、国民にとって大切に守るべき「私権」を、国家権力にたやすく、明け渡すような事があってはなりません。
「不要不急の外出制限」は、感染蔓延が続けば諸外国で見られるように、わが国でもあるいは、「地域封鎖」の可能性も予期しなければなりません。
一時的にせよ、もしも、皆さんが自由な移動・行動を拘束されたとしたら、……想像してください。その上、その期間が出口が見えない、半永久的に続くならば、どうでしょうか。その歴史的悲劇は、すでに、「強制隔離」政策で、ハンセン病患者が、実証ずみです。
「コロナ差別」の新たな表出によって、「隔離と差別」の典型事例とも言われる「ハンセン病問題」が、再びクローズアップされるようになりました。
ウイルス感染の問題は、潜在的に人間が他者にとって脅威の存在となります。
病人の臨終にも、肉親の看取りは許されず、「死者への敬意」の葬儀も、納骨箱の前でしか行えません。名前と住所は伏せられ、一くくりの統計的数字で、発表されます。
これは、かつて、ハンセン病者の「死への旅立ち」の再現であり、療養所内の納骨堂で、整然と並べられた骨壺の情景と重なります。
私が、今日のコロナ問題で、一番気がかりなことは、未来を背負う、子供たちのことです。
学校教育の現場では、お友だちとは、できるだけ、距離をとりなさい。大声で話さない。
体を触れ合うような事は避けなさい。と、指導されています。
子どもたちは、給食時間以外は、お友だちとは、マスク越しのマバタキだけと向き合い、満面の喜怒哀楽とは、向き合えないまま、サヨウナラをして下校となります。その中で育ちあった子ども達は、一体、将来、どのような、人間社会を作るのでしょうか?……。
だからこそ、大人の私たちは、国の過ちや社会で起る、「分断」や「排除」や「差別」にも、対抗できる、揺るぎない「心のワクチン」を備えることが、今、より、一層、求められています。
それでは、早速、オンラインセミナーの幕を開きましょう。
本日の講師の畑谷史代さん、宮坂道夫さん、訓覇浩さん、よろしくお願いいたします。
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