令和2年5月27日
長野県知事
阿部 守一 様
長野県議会 改革・創造みらい
代表 小島 康晴
新型コロナウイルス感染症対策に関する提言(第2回)
国が7都府県を対象に「緊急事態宣言」を発令し、その後「緊急事態宣言」の対象を全国に拡大したことで、新型コロナウイルス感染症対策として県民生活に大幅な自粛を求める、これまでに経験したことのない事態を、私たちは身をもって受け止めることとなりました。
本県においては、新型コロナウイルス感染症対策本部長である知事を先頭に、感染拡大を封じ込めるために多大なるご尽力をいただくとともに、自粛要請に県民が応えたことにより、新規感染者数の減少等がもたらされた結果、5月14日、本県を含む39県の「宣言」は解除されました。しかし、感染の再拡大を防止するため「新しい生活様式」を定着させる必要があるなど、対応が急務となっています。いわゆる「第2波」への備えも万全を期さねばなりません。
私たち長野県議会 改革・創造みらいは、県民の声をもとに、一丸となって感染を最小限に抑え込み、生活の基盤を守るという観点から、感染症対策についての要望を取りまとめ、過日、長野県議会新型コロナウイルス感染症対策連絡本部に提出したところですが、知事におかれましても、次に掲げる事項についてご検討のうえ、対応されますようお願いいたします。
経済・雇用関係
1 「新しい生活様式」への移行を進めるため5月を移行期間と位置づけ、県民に向け「STAY信州」を呼び掛けているが、対策の根幹が県民の自粛に依拠していることから、「緩み」に関する県民への注意喚起を適宜適切に行われたい。
2 終息に向かっているかに見える「第1波」について、これまでの自粛要請の効果や医療・検査体制の十分な検証のもとに、「第2波」への備えとして何が重要なのかを整理し、県民に周知されたい。また、PCR検査(だ液も含め)や抗原検査、抗体検査の組み合わせにより検査体制を大幅に拡充し、感染者の隔離を徹底することで、経済活動の継続・再開を図るための長野モデルを構築されたい。
3 新型コロナウイルス感染症の世界的な広がりにより、我が国においては内需の拡大による経済回復に取り組む必要が示されていることから、食料やエネルギーをはじめとして一層の地消地産推進を図られたい。
4 接待を伴う飲食店等については5月21日まで休業継続の要請がされたが、それに基づく協力金の追加を検討されたい。また、運転代行業など休業要請から外れたものの「休業要請」の余波を被った業種の経営状況を把握し、支援を検討されたい。
5 観光・宿泊部門では、特定警戒都道府県から人を呼び込まない運営が要請されているが、緊急事態宣言の解除後も、ワクチン開発等により来訪者由来の感染がなくなるまでの営業形態は、「コロナ以前」には戻れないと考えられる。県としての感染防止指針を取りまとめ事業者に示したうえで適切な経営支援を行うとともに、現状では当該地域からの来訪者を拒めない現行法の改正を、国へ要請されたい。
6 緊急事態宣言下にあっても営業を続けてきた公共交通事業者、介護・福祉事業者、流通小売事業者の利用実態や経営状況の調査を行い、支援を図られたい。また、介護・福祉現場での感染症対応マニュアルを作成し関係機関に示されたい。
7 感染症対策は広範囲に影響を及ぼしていることから、災害救助法の適用を国に要請されたい。
8 新型コロナウイルス感染症の影響で就職活動に混乱が生じていることから、本県に就業を希望する来年度新卒予定者への特別な就職支援策を講じられたい。また、県内にU・I・Jターンを希望する者への支援を強化されたい。
9 感染症関連で離職または失業した者を任期付き職員として県が採用する枠を設けられたい。
10 学校の休校、営業の自粛要請、インバウンド消費の消滅により大きな影響が出ている農業分野に対しても、消費の拡大や新規取引の開拓等を図られたい。とりわけ、消費の急減と価格下落が起きている牛乳、牛肉、花卉の再生産維持のための支援策を講じられたい。
医療・感染症対策関係
1 新型コロナウイルス感染症患者を受け入れた特定病院の経営状況や高度医療提供状況を早急に把握し、収入減への補填、感染症医療従事者の健康配慮や手当の支給、ECMO等高度医療機器を扱える人材の確保、養成を図られたい。
2 「第2波」に備えて無症状、軽症者用の宿泊施設の運用基準を定め、そのための人材配置が速やかに行えるよう準備されたい。
3 「新型コロナウイルス感染症外来・検査センター」の各保健所管内への設置を迅速に進めるとともに、民間検査機関や大学等の研究機関との連携による更なる検査体制の拡充を図られたい。また、発症前後の期間に感染者由来の感染ピークがあり、発症後1週間で感染力が失われるとの知見が示されていることから、医師が必要と判断した場合に加え、すべての濃厚接触者、手術や入院予定の患者、分娩を控えている妊婦についてもPCR検査の対象とするよう、国立感染症研究所が定めた「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要項」を上回る、本県独自の検査指針を策定されたい。
4 感染症対応の窓口となっている保健所は、24時間体制で相談に応じているが、限られた人員の中で職員は厳しい勤務状態を強いられている。通常業務を行いながら感染症への対応を継続することには限界があり、人員不足解消に向けた対応を早急に図られたい。特に専門職である保健師、臨床検査技師の確保に努められたい。
5 300床の感染者受入病床整備が進められているところだが、「第2波」以降に備え、病床の空き状況をリアルタイムで可視化できるシステムを構築し、健康福祉部と各保健所、受入先病院相互の情報共有に努められたい。
生活支援関係
1 税や公共料金の支払猶予から一歩進めて、困窮する事業者や家庭を対象として災害や減収、罹患等に対応する自治体の「減額免除制度」を適用されたい。
2 就学援助受給世帯やひとり親世帯、障がい者世帯等の状況調査を行い、フードバンクなど民間支援団体との協働によるこども食堂の仕組みの拡充など、困難を抱える世帯の実情に合致した支援の充実を図られたい。
3 子育て支援パスポートや多子世帯支援など既存制度を充実させるとともに、収入が減少した子育て世帯に対し児童手当の上乗せ給付や給食費の助成を行う市町村を県が支援するなど、本県ならではの子育て支援モデルを構築されたい。
4 収入が減少し奨学金返済に困難をきたしている返済者向けの減免制度のさらなる充実を国に要請されたい。
子育て・教育関係
1 「コロナ後」の学校教育の姿を模索する意味からもオンライン授業のあり方については、学校現場の裁量に委ねたうえで、学級規模との関連も含め効果検証を行うとともに、好事例の全県普及を図られたい。また、ネット環境が整っていない家庭への通信費用を含めた支援を早急に図られたい。
2 文部科学省において9月入学の検討が進められているが、その可能性やメリット、デメリットについて本県においても検討を行い、その結果を随時県民に示されたい。
3 受験を来春に控えた学年の学習進度に万全の配慮を行うとともに、学力格差が生じないよう人材を確保して子ども一人ひとりへの対応をより充実されたい。また、来春の県立高校入学選抜の実施方針を早急に示されたい。
4 自粛要請が中心となった感染症対策により、家庭のみでの生活を余儀なくされた乳幼児・児童・生徒の生活環境は厳しさを伴うものとなった。子どもの心のケアに取り組むとともに、虐待を防止するために家庭への支援を強化されたい。
その他
1 医療従事者や感染者、それらの家族への差別的言動や、自粛を行わない事業者への執拗な嫌がらせなど、人権や権利を侵害する動きに対し、県としての明確なメッセージを発信されたい。
2 支援を必要とする事業者や個人に対し、種々の助成金制度等が決定されているが、これらの支援を迅速に受けられるよう、手続きの簡素化や早期支給に努められたい。
3 コロナ対策の助成金・補助金等を狙った特殊詐欺や特殊商法が散見されており、県民に向けて一層の注意喚起を図られたい。
4 補償を伴わない自粛要請や私権の制限の明文化等、多くの課題を包含する条例制定については、慎重に議論を進められたい。
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