リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

ガット弦に思う(8)

2020年06月09日 14時04分16秒 | 音楽系
現代の演奏家はどの様な弦をバロック・リュート(あるいはテオルボ)に使っているのでしょうか。知っている範囲で書いてきたいと思います。

まずパスカル・モンテイレです。彼は20数年前にド・ヴィゼーのテオルボ曲を録音しています。21世紀に入ってからはバッハのチェロ組曲全曲をテオルボまたはアーチリュートで録音しています。

彼のド・ヴィゼーのCDには弦のことが触れられています。高音部はナイロンプレーン弦、低音部(8コースまで)はナイロン芯の金属(銅)巻線、番外弦(9コース以下)は古くなった弦を使っているとあります。この「古くなった弦」はプレーン弦なのか金属巻弦なのかよくわかりませんが、CDを聴いてみると音の減衰時間からすると金属巻弦のようです。そのねらいを彼は、「(そうした方が)高音部とのマッチングがいいからだ」と述べています。

興味深いのほぼ同じ頃今村泰典氏が同じくド・ヴィゼーの作品を録音しています。彼が使った弦はナイロンプレーン弦と金属巻弦です。彼の楽器の金属巻弦は新しい弦で音はとてもクリアです。この2枚のCDは音色の世界観としては対極にあると言えます。