リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

1979年、バーゼルに行く

2020年06月24日 22時46分25秒 | 音楽系
1979年の3月の終わり頃、私は約2週間バーゼルに滞在しました。当時バーゼル・スコラ・カントゥルムに留学中の今村氏をたよって今風に言えば「短期留学」をしたのです。

当時はやっとソ連の上空を経由してヨーロッパに行けるようになったばかりでした。76年に渡欧したときは、アンカレッジュ経由で北極の上を飛んでいったのですが、余りに早く到着にしたので大いに驚いたものでした。ただし、モスクワに一回着陸しなくてはいけない決まり?があったようです。給油のためかも知れませんが。

前年に開港したばかりの成田空港からモスクワを経てパリにひとっ飛び、パリで今村氏と落ちあいそのまま夜行列車でバーゼルまで行きました。

バーゼルに滞在中はスコラの授業にニセ学生として何回か「出席」させていただきました。授業中なぜか当てられてしまい、それらしいことを答えたこともありました。なんかおおらかな時代だったんですね。

今村氏はスコラでホプキンソン・スミス氏に師事していました。連絡先を教えてもらい早速レッスンのアポを取りました。スミス氏がバーゼルのどこに住んでいたかはもうすっかり忘れてしまいましたが、当時今村氏が済んでいたライメン通りから歩いて行ける程の距離だったことは覚えています。

レッスンではダウランドの「ファンシー」を見てもらいました。意外にも氏はこの曲を知らないと言っていました。(21世紀に入ってリリースしたアルバムには録音されていますが)レッスンが終わって、いろいろ話をしていましたら、Widhalmのドイツテオルボを使った新しいLPがあるというので2,3枚譲って頂きました。使用したWidhalmの楽器について詳しく聞いたのは、実はこのときではなく、ずっとあとに私が留学していたころの話。このときはそもそもまだレコードも聴いてはいないし、彼もガット弦のことやら楽器のことは何も語りませんでした。



譲って頂いたLPレコードです。



久しぶりにレコードプレーヤーで聴いてみました。

レッスンが終わって記念写真を撮っていいかと尋ねたら、「日本人はすぐ写真をとりたがるんだよねぇ。ブツブツ」といって写ってくれました。(笑)



この「短期留学中」には、ニュルンベルクの博物館にも行ってきました。そこでかの録音に使ったWidhalmの楽器を見てきました。この楽器でホプキンソン・スミス氏が録音をした旨の案内も出ていました。見た感じでは今にもすぐ弾けそうな、綺麗でどこも傷んでいない楽器に見えたのですが、実際はあちこちに狂いが出ていて演奏が大変だったという話は21世紀になって初めて彼の口から聞きました。