リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

1979年、バーゼルに行く、補遺(2)

2020年06月28日 17時32分35秒 | 音楽系
ホプキンソン・スミス氏がいつ爪を切ったのかは尋ねませんでしたので知りません。後に留学して彼のもとで勉強するようになってからも指頭で弾くのが当たり前すぎていちいち訊くことはありませんでした。彼の師匠ドンボア氏は使っていたときもあったようです。

ヴァイスのファンタジア ハ短調(ナクソス)、バロック・リュート/オイゲン・ミュラー・ドンボア

この曲は日本では東芝から発売されていた「天使のメロディー<バロック音楽とその周辺>シリーズ バロックへのお誘い」(1968年※)というタイトルのアルバムに収められていました。このLPのバロック・リュートによるヴァイスは私が高校2年生のときに初めて聴きましたが実に衝撃的な演奏でした。



※普通LPジャケットには何年の発売というのは書いてないことが多いのですが、このLPは解説を書かれた方が執筆年を記入していたので発売年が分かりました。ちなみに佐藤豊彦氏がヨーロッパに留学したものこの年でした。

(ただこの2年くらいあとになって聴いたルネサンスリュートのアルバムでは爪を使っていない感じがしますし、さらにそのあとのバッハアルバムは爪を使っているみたいです)

当時ジュリアン・ブリーム氏が演奏する(ギター式)リュートの録音しか知りませんでしたし、ヴァイスのファンタジアに関してはギター編曲しか知りませんでした。何より、冒頭の2つ目の和音が、ギターでいうとレがレ♯になっている!ので驚きました。テンポの取り方も当時のギタリストの演奏とは全く異なっていました。

その頃までのリュートの演奏は、学者先生にしてはとても上手に弾いているというのはありましたが、楽器のプロフェッショナルが演奏しているというレベルのものは残念ながらブリーム氏のもの以外はありませんでした。(残念ながらブリーム氏が使っていた楽器はギター式リュートでしたが)そんな中ドンボワ氏は古楽器としてのリュート界のホープと目されていましたが、70年代の初め頃に左手を痛めて手術をしたらしいのですが、その結果が思わしくなく、リュートを演奏出来なくなってしまいました。

ただクラヴィコードは弾けるみたいで、実は79年にはドンボア氏のバロック・リュートレッスンも受けたのですが、クラヴィコードで音を出しながら指導していただきました。



氏は手を痛めた頃に録音したバッハのアルバムを出し、それ以降は演奏活動はしていません。そしてその後もスコラ・カントルムで指導を続けられ、退官後もバーゼルの郊外に住んでいました。そして2014年にお亡くなりになりました。