リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

ガット弦に思う(17最終回)

2020年06月23日 14時33分50秒 | 音楽系
さて最後に私なりのバロック・リュート弦のソリューションを2つ提言してみましょう。(昨年の秋頃にも弦ソリューションについて書きましたが、ややこしかったので今回はぐっとしぼりました)

{ガット弦の音を大切にしたいソリューション}
1コースから5コース→プレーンガット弦
6コース以下→プレーンガット弦とローデドナイルガット弦(合成樹脂弦)の組み合わせ
【解説】
1,2コースの張力はやや高め(3.5kgくらい)4~6コースは3kg台前半、7コース以下はバス弦が3kg未満、オクターブ弦はその8~9割の張力。このソリューションだとバスが現在入手可能なバス用ガット弦より少しクリアになり、湿度による変化は受けないので調弦が楽です。経費もバス弦に関しては1/10くらいで済みます。でもガット弦の良さは充分に発揮されます。もちろん高音弦に関してはマメに弦を交換する必要はあります。

{合成樹脂弦でとにかく前に出る明るい音を出したいソリューション」
1、2コース→ナイロン弦
3コース→ナイルガット弦
4、5コースと6コース以下のオクターブ弦→フロロカーボン弦(KF)
6コース以下のバス弦→フロロカーボン弦(KF)

【解説】
張力はガット弦ソリューションと大体同じで行きます。合成樹脂弦は湿度には強いですが、温度による変化が実はガット弦より大きいという問題点があります。このソリューションはそういった問題点を最小限にした素材の組み合わせです。高音はキンキンしませんし、バスはくっきり音が出ます。でもバス音の減衰時間は中高音とほぼ同じくらいなのでとてもバランスがいいです。

ということでこの連載は終わりますが、上記の弦はフロロカーボン弦を除いて全て輸入品です。新型コロナウィルス禍で物流が滞っているので現時点では入手が難しくなっています。フロロカーボン弦というか釣り糸ですが、これは国産です。ただ直径1ミリ以上であっても、サバレス社のKF弦のように研磨はされていません。(釣り糸として売られているので当然ですが)来年の後半くらいにはぼちぼち今までの生活に戻れそうですので、それまでは、ポール・バイヤー氏の張力計算アプリで張力計算をして「そのとき」に備えましょう!