リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

ガット弦に思う(13)

2020年06月18日 11時21分58秒 | 音楽系
ポール・バイヤー

彼はリュート奏者としては珍しくコンピュータの知識も豊富で、弦の張力計算などをするアプリとかタブラチュアセッティングのアプリを古くから開発しています。私も張力計算アプリを長らく使わせて頂いています。

本人によると彼の録音は現在に至るまで全てガット弦を使っています。2013年録音のアルバム(ロイスナー作品集第2集)のリーフレットには楽器のアップがあり(本人も顔半分が写っていますが)、弦の様子が見て取れます。(このエントリーの最後にあるナクソス・ミュージックライブラリ試聴でアルバムのカバー写真を見ることができます)このアルバムで使われている楽器はオランダあたりでよく使われていたタイプの楽器で、2014年に亡くなったスティーブン・ゴットリープ作のものです。この種類の楽器は、9~12コースが順に弦長が長くなっていきますので、弦は同じものをはることができます。

色の付いた7コース~12コースのバス弦はイギリスの弦メーカーGeorge Stoppaniのものということです。ローデド・ナイルガット弦と色が似ているのでひょっとして合成樹脂も使うようになったのかと思い、彼に聞いてみましたら違ってました。今では手に入らないアキラ社のローデド・ガット弦を使っていた時期もあったそうです。1999年のバッハ作品集では11コースまではプレーン・ガット、12と13コースはガムート社のギンプ弦を使ったとのことです。

ガット弦を使って録音を続けている奏者として日本では佐藤豊彦氏が知られていますが、彼は1994年頃「グライフ」というオリジナルの楽器を使用し始めて以降ガット弦を使っています。それまでは合成樹脂弦、金属巻弦を指頭ではなく爪を使って演奏していました。

佐藤氏とバイヤー氏の録音をそれぞれ聴いてみましょう。ロイスナーの組曲ト短調です。(それぞれ別のト短調組曲ですが)両方とも弦はオールガット、楽器は佐藤氏=グライフ、バイヤー氏=ゴットリープ2008年製)ナクソス・ミュージックライブラリの試聴ですので、冒頭の30秒だけ、計15分間です。この15分は一度に15分か一日に15分かはわかりません。

エザイアス・ロイスナー/組曲ト短調/佐藤豊彦(2015)
エザイアス・ロイスナー/組曲ト短調/Paul Beier (2013)