リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

ガット弦に思う(12)

2020年06月16日 10時50分06秒 | 音楽系
ナイジェル・ノースです。

ナイジェル・ノースは30年くらい前に来日して岐阜で公演したとき、公演のお手伝いをさせていただきました。岐阜から名古屋へ私の車で彼を乗せて移動する際、いろいろなお話をお伺うことができました。また私がバーゼルにいた頃(2003年-2005年)彼がスコラに来てレクチャーやコンサートをしたこともありました。その時もいろいろお話をお伺いしましたが、話の内容もさることながら、岐阜公演時よりかなり貫禄がついていたのが印象に残っています。でも現在はかなりスマートになっています。

彼はライブでもレコーディングでもガット弦を使わず合成樹脂弦を使っています。一部のアマチュアの間では彼の音が美しいのはガット弦を使っているからだとずっと信じられているようですが、それは彼が美しく演奏しているからです。

彼は長らく合成樹脂弦、金属巻弦の組み合わせでしたが、2010年以降少し変化してきました。まずバロックの7コース以下のバス弦にサバレス社のKF弦(フロロカーボン弦)を使い始めたことです。ヴァイスの第3集(2012)のリーフレット写真を見ると、7コース以下のバスに、サバレスのKF弦を張っているようです。6コースはKFをユニゾンで張っているのかも知れません。


2016年のライブです。6コースはオクターブで張っています。

KF弦の直径1mm以上のものは研磨がかかっています。クレハの万鮪という鮪を釣る釣り糸とモノは同じですが、研磨がかかっているというところが異なります。鮪を釣るのに釣り糸を研磨する必要はありませんので。そのしばらく後に彼はアキラ社のローデドナイルガット弦を使い始めたようです。


2018年頃のレクチャーです。

実は私の「弦遍歴」は奇しくもナイジェルとよく似ていて、2014年頃から6~13コースに万鮪を使い始めました。そして2016年頃からローデドナイルガット弦に切り替えています。まぁ今日日手に入る弦は世界中同じですから、やることも大体同じになるということなんでしょう。

最近彼はLars Joensen氏の楽器をよく使っています。私もLarsの楽器をバロックを使っていますが、注文して届いた楽器には、フロロカーボン弦が6~13コースのバスに張られていました。それもかなり張力は強め。このあたりはナイジェルの指導が入っているのかなという感じがします。