リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

ガット弦に思う(9)

2020年06月11日 14時11分37秒 | 音楽系
次にご紹介しますのは、師匠のホプキンソン・スミスです。向こうにいる間何度もコンサートを聴かせて頂きましたが、それらに使われていた弦は全て合成樹脂弦(バス弦=金属巻弦)でした。レッスンに使っていた楽器も合成樹脂弦(バス弦=金属巻弦)です。ガット弦は使わないのかと尋ねたところ、本番では使わないとのことでした。ただガット弦にはとても興味があり「トヨヒコが私のガット弦の師匠だ」なんておっしゃっていました。でも録音で使ったことがあるのかというと、バロック・リュートとドイツ・テオルボに関する限りはないようです。沢山アルバムを出しているので、いちいち尋ねたわけではありませんが・・・最新の、といってももう7,8年前ですが、バッハのチェロ組曲を録音したアルバムでも合成樹脂弦、バスは金属巻弦が使われています。

さて次はホプキンソン・スミスの弟子であり私の旧友であります今村泰典氏です。彼はガット弦に興味がない訳ではありませんが、録音もライブもガット弦を使用していません。
彼曰く、「響きのいい会場で5メートルも離れて聴いたら弦が合成樹脂なのかガットなのかはわからない」

うむ、なかなかいいことをおっしゃる。いい音を「出す」ことが重要で、ガット弦を張ったらいい音が「出る」わけではないということですね。でも高音弦に関してはおっしゃる通りだと思いますが、6コース以下の弦だと金属巻弦はガットと比べると音の減衰時間が3倍くらい長いので実ははっきりと違いがわかります。

最近では彼はヴィウエラにフロロカーボン弦を張っているようで(高音部も)、少し前細いフロロカーボン弦を日本から送ってあげたこともありました。彼はスイスの田舎に住んでいるので、釣り具屋さんは近所になさそうです。