リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

プレリュード・フーガ・アレグロのヘ長調編曲(14)

2022年04月26日 16時02分08秒 | 音楽系
アレグロの解題その1



全体的に力まずにレガートに弾くことが重要です。よくあるのはスラーが付いている2つの音符のうち、左の音符に力を入れて弾いてしまうことがよくあります。スラーの2つの音は音量差があまり出ないように弾く。右指ではじいている音とスラーで弾く音がでこぼこにならないように留意する必要もあります。スラーを左手の指の横滑りで出している人はこういうことは出来ませんので、弦をはじくような感じで弾く方法に改めないといけません。

右手の運指は指定以外の方法でも可能でしょうけど、リュートの都合で並んでいない音列をスムーズに弾くには、指定をきちんと守るのが重要です。もちろん中指連続3回みたいな指使いをしているようでは全く演奏不可能です。

譜例の黄色いハイライトになっている音はオクターブの変更をしている箇所です。19小節目は1オクターブ下げ、25小節目はオクターブ上げです。19小節目のバスは1オクターブ上げて弾けなくはないですが、左手の負担がかなり大きくなり弦を外すリスクが格段にあがります。25小節目はヘ長調編曲ではもう1オクターブ低いシのナチュラルにするのは不可能です。潔く1オクターブ上です。

一般的なバロックリュートの曲は、開放弦多用のバスとメロディという建て付けが相場です。そしてバスの密度もアップテンポの曲であれば998のアレグロよりずっと薄いです。この新しいヘ長調編曲ではできるだけ一般のリュート曲に近づくよう、積極的にバスのオクターブの上下変更を行っています。

以上あげたことは技術的な話ばかりですが、これが出来てやっとスタート地点に立ったことになります。とりあえず練習テンポとして8分音符=100くらいで弾けるようになるといいと思います。