リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

小話バッハとクレープスの対話

2022年10月27日 15時01分04秒 | 音楽系
クレープス:先生!新しいのを書いてきましたよ。どうぞご覧になってください。
バッハ:おー、君か、クレープス君。まぁ座り給え。どれどれ・・・

と言ってバッハ先生は弟子のクレープスが持ってきた楽譜を眺めます。

バ:お前がこの前持ってきたハ長調のリュート協奏曲は、ありゃつまらん曲だったが、これはまあまあかな。リュートというのはヘ長調の方が綺麗に響くのかのう?そういや最近若いリュート奏者が書いた協奏曲のうち、コハウトというウィーン人の作品もなかなか良かったがそれもヘ長調だったな。
ク:いえ、別にヘ長調だけがというわけでは。クラインクネヒト氏のリュート協奏曲はとてもいい曲ですが、ハ長調です。
バ:おう、その曲は知っておるぞ。お前の曲を入れてリュート協奏曲作曲の3K、コハウト、クラインクネヒト、クレープスとでもしておいてやろう。(笑)でもわしはどうもこの最近の作風にはついていけんなぁ。わしの息子たちもお前みたいな曲を書いとるがどうも好かん。


バッハ先生の作風は典型的なバロックのスタイル、しかし18世紀第2四半期以降全く新しい書法で書く作曲家が現れてきます。たとえばペルゴレージ。彼が書いた奥様女中というオペラブッファとバッハ先生の書いたコーヒーカンタータはほぼ同じころに作曲上演されていますが、同じ時期の作品とは思えないくらい作曲スタイルは異なります。リュート奏者たちの中にもヴァイスの次の世代であるファルケンハーゲン、ハーゲン、コハウトなどが今までのバロックのスタイルとはかなり異なる新しいスタイルで曲を書き始めるのがこの頃です。