アメリカのガムート社からガット弦が届きましたので、ぼちぼちとガット弦に張り替えています。ガムート社には3コースから13コースまでの分です。1コースと2コースを頼んだウニヴェルザーレ社からはまだ届いていません。同社の方からは、先週の今頃、2,3日出かけるので弦をひねるのは帰ってからだ、という旨のメイルが届きました。出来たら連絡するとのことでしたが、まだ出来てないみたいですね。さすがイタリアン・・・。
13コースと12コースを取りあえず張り替えてみましたが、なかなかいいです。13コースを張るときに、まだ交換していない12コース(フロロカーボン=鮪用の釣り糸)と音を比べてみましたが、少し音は柔らかい感じで、余計な倍音が入らないのと、ゲージが精確な点はガット(ピストイ)が優れています。フロロカーボンのバス弦はピストイガットと音の感じは近似していますので、合成樹脂弦による代替弦としては一押しでしょう。
左4本(13,12コースがピストイガット。他はマグロ弦)
13コースを張るときに、直径が1.92ミリもあるので、棒振動して使い物にならないのではと危惧しましたが、実際に張ってみると全く問題はありませんでした。フロロカーボンだと直径が1.66ミリですが、ピストイはとてもしなやかなので問題がないのだと思います。これが、同じガット系の弦でも同社のギンプ弦だとずっと固いのでうまく行きません。(ギンプ弦に関しては後日少し書きます)直径1.92ミリのピストイガットは私の楽器だと張力が大体2.5キロです。3.0キロ近くあった方がいいかも知れませんが、私の楽器にはこのくらいがベストです。2.0キロに近づくとちょっと低すぎて音がならないでしょう。
13コースをブリッジとペグに通すには、穴を少し広げる必要がありましたので、2ミリのドリルで穴を広げました。写真のような、長さ15cm直径2ミリのロングドリルを模型用のチャックにはさんで手で回します。ご自分でガット弦用に穴を太くしようとされる方は、間違っても電動ドリルを使わないようにしましょう。もちろん錐もだめですよ。錐はテーパーがついています(円柱形になっている)から。ちなみにこのロングドリルやチャックは特殊な工具ではなくその辺のDIYの店で売っているものです。
バス弦としてのピストイとカーボンの特徴をまとめてみました。
カーボン
1本あたりのお値段が圧倒的に安い。ただし購入するときは25メートルとか30メートルという単位で買わなければならないので、ピストイほどではないが結果的には高くつく。協同購入するか持っている人にひと張り分だけ譲ってもらうと安い。
とても固いのでブリッジにしばりにくい。
湿度の影響はゼロ。温度変化にも比較的強い。
精度に問題がある。2,3本張って1本選ぶという感じ。
ピストイ
お値段がとても高い。数年は使えると思うのでそれを考えると多少は納得できるが、それにしても髙いです。
とてもしなやかなので、ブリッジにしばるときやペグに巻くときは扱い安い。
湿度の影響はあるが、温度変化には強い。
精度は抜群。もっともお高いものですから、よくなければ困ります。
両素材ともギターのような巻き弦よりはバロック音楽の楽器としてよりふさわしいと思います。でも初心者にとっては、音程を聞き取るのが両素材とも結構難しく調弦が大変なので、その点では巻き弦を使った方がいいと思います。初心者?と思われる方がガット弦を張った楽器で演奏しているビデオクリップYouTubeなんかにアップされていますが、ほとんど全ての人の調弦はきちんとできていません。
13コースと12コースを取りあえず張り替えてみましたが、なかなかいいです。13コースを張るときに、まだ交換していない12コース(フロロカーボン=鮪用の釣り糸)と音を比べてみましたが、少し音は柔らかい感じで、余計な倍音が入らないのと、ゲージが精確な点はガット(ピストイ)が優れています。フロロカーボンのバス弦はピストイガットと音の感じは近似していますので、合成樹脂弦による代替弦としては一押しでしょう。
左4本(13,12コースがピストイガット。他はマグロ弦)
13コースを張るときに、直径が1.92ミリもあるので、棒振動して使い物にならないのではと危惧しましたが、実際に張ってみると全く問題はありませんでした。フロロカーボンだと直径が1.66ミリですが、ピストイはとてもしなやかなので問題がないのだと思います。これが、同じガット系の弦でも同社のギンプ弦だとずっと固いのでうまく行きません。(ギンプ弦に関しては後日少し書きます)直径1.92ミリのピストイガットは私の楽器だと張力が大体2.5キロです。3.0キロ近くあった方がいいかも知れませんが、私の楽器にはこのくらいがベストです。2.0キロに近づくとちょっと低すぎて音がならないでしょう。
13コースをブリッジとペグに通すには、穴を少し広げる必要がありましたので、2ミリのドリルで穴を広げました。写真のような、長さ15cm直径2ミリのロングドリルを模型用のチャックにはさんで手で回します。ご自分でガット弦用に穴を太くしようとされる方は、間違っても電動ドリルを使わないようにしましょう。もちろん錐もだめですよ。錐はテーパーがついています(円柱形になっている)から。ちなみにこのロングドリルやチャックは特殊な工具ではなくその辺のDIYの店で売っているものです。
バス弦としてのピストイとカーボンの特徴をまとめてみました。
カーボン
1本あたりのお値段が圧倒的に安い。ただし購入するときは25メートルとか30メートルという単位で買わなければならないので、ピストイほどではないが結果的には高くつく。協同購入するか持っている人にひと張り分だけ譲ってもらうと安い。
とても固いのでブリッジにしばりにくい。
湿度の影響はゼロ。温度変化にも比較的強い。
精度に問題がある。2,3本張って1本選ぶという感じ。
ピストイ
お値段がとても高い。数年は使えると思うのでそれを考えると多少は納得できるが、それにしても髙いです。
とてもしなやかなので、ブリッジにしばるときやペグに巻くときは扱い安い。
湿度の影響はあるが、温度変化には強い。
精度は抜群。もっともお高いものですから、よくなければ困ります。
両素材ともギターのような巻き弦よりはバロック音楽の楽器としてよりふさわしいと思います。でも初心者にとっては、音程を聞き取るのが両素材とも結構難しく調弦が大変なので、その点では巻き弦を使った方がいいと思います。初心者?と思われる方がガット弦を張った楽器で演奏しているビデオクリップYouTubeなんかにアップされていますが、ほとんど全ての人の調弦はきちんとできていません。
私は最近、不満に思うことがあります。政治のこと以外で、もちろん古楽界にです(笑)。
やはり、リュートには総ガットが本来の姿なのですが、一部の教室だけ、総ガット推奨で教授するものがありましたが。
効率と利便性で、リュート教室ではほとんど、ナイロン、巻き弦というのが多いですね。
音量は出ますから、現代の音楽に慣れた耳にはそれが自然なことのように思えるのでしょうが。
肝心のプロの先生も普段でも、ご自身の楽器にさえ、ナイロン、巻き弦なのですから、この是非は、難しい面もあるとはいえます。
でも、300年以上も前の本来の音、仕様というものがどんなものなのかを、ちゃんと生徒に教えることは、師たる者の責務といえると思うんですがねえ。
似た例は、19世紀ギターの世界もそうです。日本ではまず総ガットで弾かれる奏者はいないです。
だから、楽器にすぐにクラックが入り、壊してしまいます。ソル、カルリ、ジュリア―二など、オリジナル19世紀を使うなら総ガットでないと、楽器にも酷です。
良い悪いを簡単には論じられませんが、私はやはり、プロ奏者が率先垂範して当時の時代感、仕様を再現し、それを啓蒙していくことの務めは、大事なことと思うのです。だって、当時の音楽をやってるのですからね。
ガット仕様で演奏をされる第一線の演奏家は、関西方面では、先生を含めてお二人くらいでしょうか。
さみしい限りです。
でも現時点ではリュートにおけるガット弦の性能的な問題点はほぼ無くなり実用的に運用できると感じています。(もちろん今回私がセレクトした弦に関してですが)
バーゼル出身の若手奏者の最新アルバムで、彼はオールガットの楽器で録音しています。彼のアルバムのライナーノートでは、弦のことはおろか楽器の製作者の名前すらあげられていません。もうそういったことはあまり重要でないという時代に入りつつあるということでしょう。
ただ初心者の方については調弦のしやすさという観点から、高域中域に合成樹脂弦、バス弦に巻き線を使うのはありかなと思います。でもこれも過渡的な話なのかもしれません。というのも製品として捉えるなら、ガット弦の方が手作りということもあり、合成樹脂弦よりずっと弦の精度が高く、減衰の早い音に聞き慣れさえすればずっと調弦はしやすいと思うからです。ただこれは実際に指導してみないとわかりません。
このガット弦の「減衰の早い」というところがポイントだと思うのです。
例えば、音の消音については、現代の弾き手はものすごく神経を使っていますが、ガット弦だからこそ、当時はあまり消音ということそのものに神経を使うということが無かったのではないかと勝手に推定してしまうのです。むしろそれがガット弦の利点でもあるような。。。
私は個人的には、経済的負担の面は確かに大きいとは思うのですが、やはり、少しずつでもガット弦によるバロックリュートでの音楽の再現が普及してほしいと願うんですがねえ。
いくら減衰が早いといっても4秒くらいは鳴っていますので、バスの動きが速い箇所では、たとえガット弦のバスであろうと音は濁ります。ただ減衰時間が短い分だけガット弦のバスはより「きれいな」濁り方になります。従って実際的な消音ポイントは減りますし、このことがアーティキュレーションに影響を与えることになるのはとても重要なポイントです。
もしナイロン弦だと人工的でなんとも汚い音が鳴るが、ガット弦にした途端いにしえの典雅な音がなりだす、と捉えるならば、それは大きな間違いです。弦が勝手になり出すのではありません。弾き方次第で、ナイロン弦でもきれいな音を出すことは可能ですし、ガット弦を使ってもきたない音はいくらでも出ます。
すみません、お恥ずかしいかぎりです。
理解いたしました。自分もガットを試して実体験をしてみたいと思います。
試さずして勝手な感想を述べてしまい反省。。
懇切なご解説をありがとうございました。