正直という工法

2011年02月16日 | 住まいづくり
お客様とお話しているみゆきさんの背中がどんどん小さくなっていくのが、私の席から見える。

 お客様が中島木材の営業の仕方がとても「見ていられない」とレクチャーしてくださっているのだ。

 お客様側から見た心理・・・・・そうは思いつつ傍で聞いている私も・・・・でもできないだろうなとあらためて確信している・・・・お話をお聞しているみゆきさんの背中もそう言っているみたい・・・・。

 「お客様をいい気持ちにさせて」か・・・・・。

 何度もお会いして親しくなって家も建てていただいて、そして私たちに一番足りないことを教えてくださっている。本当にここまで教えていただけるなんて、なんとありがたいことなんだろう。

 どうみても社長をはじめ我が社は正直らしい。バカが付く位かも。

 応接で打合せをしていたお客様と社長の興奮気味の声が聞こえる。あわててお茶を入替ながら様子を見に行くと、お客様に工法のことで持論を説明している。お客様のご要望や夢を形にするのは、一番重要なことだけど、プロとして「譲ったら」お客様のためにならないと思うことは「絶対ダメ」なのである。

 その熱意に納得されて、契約をしてくださるお客様も多い。

 それでもよくやってきたわー。

 20数年前、もうプランも煮詰まり図面もできて、お見積に進む段階まできたある日、お客様は裏の山に立っているケヤキと松の木を使いたい、ときり出された。1本ではなく5~6本もである。それも大黒柱や柱に。

 自分の山の木で家を建てたいというのは、人情である、決してわからないわけではない。がである、ケヤキもそれも青ケヤキ、それを生のまま使うなんて、素人ならともかく材木屋の私たちにできることではない。社長と私・・・・それは無理ですと同時に言ってしまった。

 少なくとも10年は寝かせて乾燥させたものでなければ、生のまま使うのは割れが出る前にねじれて家全体を狂わせてしまいます。家が大切なのか、木が大切なのか。
 乾燥技術がなかった時代の話です。

 後日、その木を使って建ててくれるという工務店さんがあったからとお断りをいただきました。ちょっと切ないものが胸に沸いてきたのを思い出します。

 バカ正直過ぎた話かもしれませんね・・・・・まったく、社長も私も若かった。

 しかし長い月日が経った今も、相変わらず「正直という工法」で建てさせていただいている。

                   依田美恵子
軽井沢・佐久で建てる外断熱・省エネ住宅 中島木材の家


【 中島木材のホームページは こちら


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