院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

幸福とはなにか?

2013-02-25 00:01:20 | 経済
 夜は寝るものである。誰が何と言おうと、夜は真っ暗で人間は活動できないから、寝るものである。夜、電気を煌々とつけて働くのは不自然である。

 夜間労働の歴史は浅く、ほんの電燈が発明されてからに過ぎない。それまで人類は、夜は安らかに寝ていたのである。

 石器時代、夜には狩りや採集ができないから、みな寝ていた。農耕が発明されてからも、夜に農耕はできないから、夜は寝ていた。そして、つい最近まで人間は夜は寝ていた。

 農耕が発明されてから、人間は飢えに苦しむことが少なくなったというが、どうもそれは幻想らしい。発掘された古い骨を分析すると、石器時代人のほうが農耕時代人よりも栄養状態がよいと分かった。石器時代人は労働時間(狩りや採集の時間)は一日3時間くらいだったと推測されている。農耕時代になってから、人類は必ずしも幸福にはなっていなかったようだ。

 工業化の世の中になって、夜勤とか当直が発明された。夜勤や当直は苦しいものである。その苦しさを押して働くから、医療従事者は少しは尊敬されたのかもしれない。しかし、夜勤や当直は、生物としての人間には過酷な労働だ。やっぱり、夜は安らかに寝たい。

 幸福かどうか尋ねられると、石器時代からだんだんと人間は幸福でなくなってきたのではないか?

 私が疎い経済学の分野では、人間が幸福だと思うのに「相対所得仮説」という考え方があるらしい。広くは同時代、同一国内で相対的に所得が多い状態を、人間は幸福と感じるらしい。狭くは隣り近所で相対的に所得が多いかどうかが幸福度を決めるという。

 なぁーんだ、ずいぶんみみっちい話ではないか。どうせ比較するなら、石器時代人と比較するべきである。一日3時間の労働。夜は眠る。人口が過密でないから、伝染病はない。石器時代人は寿命は短かっただろう。でも、寿命が長ければそれだけ幸福だと思う人は、今日び、ほんとうは少ないのではないか?