院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

死因は本当に熱中症か?

2013-07-11 05:21:18 | 医療
 知り合いに90歳で元気な男性がいた。ある日、彼は筍を掘ってくると言って家を出て、なかなか帰ってこなかった。家人が裏山に見に行くと、彼は鍬をもったまま死んでいた。

 まさにピンピンコロリだった。誰の世話にもならず、誰にも迷惑をかけず、そしてなによりも全く苦しまずに彼は逝った。人々は彼の死を理想的な死に方だと讃えた。

 医者は死亡診断書に、死亡原因を心不全と書いたが、解剖したわけでなし、本当の死因なんて分からない。脳卒中かもしれないし、大動脈瘤破裂かもしれない。彼の死は原因の特定を要求する性質のものではなかった。

 暑い日が続いている。報道では本日、熱中症で運ばれた人数が何百人で、うち2人死亡したと伝えられた。(だから、熱中症には気をつけましょうというわけだ。)

 死亡した1例は、88歳の女性で、あぜ道で倒れているところを発見された。もう1例は92歳の男性で、ビニールハウスの中で倒れているところを発見され、病院に運ばれたが死亡が確認された。死因は熱中症とみられるとアナウンサーは言っていた。

 ホントかよ、と私は思う。88歳や92歳の老人が急死しても、それは何の不思議もないことなのだ。たぶん、死因の究明なぞ行われていないだろう。それを、その日が暑かったからというだけで、死因を熱中症にしてしまうことに問題はないのだろうか?

 日本程度の暑さで、熱中症、熱中症というのは考えものである。それなら、アフリカやアラブやインドでは、もっと熱中症で死ぬ人が多いだろうに、そのような情報はない。

 日本の世の中は、人は歳を取ったら死ぬものだという現実を忘れているのではないか?