院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

ノーベル賞の「ポカ」

2011-03-01 18:20:14 | Weblog
 映画「不都合な真実」によって、ゴア元副大統領がノーベル平和賞を受賞したのは記憶に新しい。しかし、イギリスでは同映画を訂正付きで生徒に見させたそうだ。

 前回書いたように、「地球温暖化論」が下火になってからこの映画が公開されても、ゴア氏はノーベル賞を貰えなかっただろう。ということは、ゴア氏にノーベル賞を出したのはポカだったということになる。

 どうして?と思うようなノーベル賞は、平和賞に多い。西側の価値観が色濃く反映されているのも、平和賞である。オバマ大統領がなんの実績もないうちに平和賞を受賞したことに首をかしげた人も多いのではないか?

 自然科学の分野でも、ノーベル賞のポカはある。私に身近なのは、ロボトミー手術のノーベル医学生理学賞受賞である。1949年のことだ。ロボトミーとは、興奮したり暴れたりする患者に施された。この手術をすると、患者は確かに興奮しなくなる。ただし、廃人同然になってしまう。

 ロボトミーとは、患者のコメカミの骨に穴をあけ、細い棒で前頭葉を切断する手術である。脳みそは豆腐のように柔らかいから、メスでなく棒ならば血管を切らずに脳みそだけ切ることができる。

 私も昔、ロボトミーを施された患者を見たことがあるけれども、確かに廃人だった。頭のてっぺんから出すような声でしゃべり、自己意思でなにかを決定するすることができなかった。

 わが国でもロボトミーは行われていたのである。しかも、それは収容型の劣悪な病院では、やることさえできない先進技術だった。だから、ロボトミーをされた患者は優秀な病院にいたばかりに災難にあったのだ。

 今は先進的とされる遺伝子治療も、将来どういった副作用が出てくるか、想像もつかない。ジェンナーが種痘を発明したころは、ジェンナーは狂人扱いされたけれども、たまたまそれが成功したからよいようなものの、成功しなければジェンナーは歴史に名を残さないか、残したとしても乱暴な極悪人として残っただろう。ちなみにジェンナーは自分の子供で実験したことになっているが、実は近所の子で実験したという説もある。