この馬券に神が舞い降りる

だから...
もうハズレ馬券は買わない。

1回中山4日目

2012-01-14 09:25:29 | 馬券
柏木良太、竜太の兄弟が、福島から川崎の叔父のもとに身を寄せて、一週間がたった。

朝、高層住宅の眼下に馬の群れを見ることができる。
多摩川沿いの一角に、並び立つ厩舎群と道を隔ててかたちどる調教コースだ。
竜太はその中に、兄良太の姿を見つけることができた。
叔父である、柏木修司は川崎競馬所属の厩舎で厩務員をしている。今朝はその叔父について調教に出かけた。良太も竜平も小さいときから馬には乗っており、馬の背は慣れたものだ。さすがに今日は、馬の背とはいかないが、調教をする馬たちを見守る姿を確認できた。

馬の吐く息が、上り始めた朝の光に照らされ、馬全体が光に包まれたシルエットになる。そんな姿を良太はじっと見つめている。この春、中学3年になる彼は、進路をすでに決めていた。というよりも自分が騎手になることは天命と信じていた。JRAの騎手候補生に応募するためには、父と北海道に行くよりも、都心で競馬環境がある叔父のもとを選択した。そんな良太に調教師である山本が隣で声をかけ、良太は元気よく返事を返した。

騎手が天命と信じる兄とは逆に、3歳下の竜太は自分の環境を因果と思っていた。
馬の世界にいても、貧しいだけで、自分にはもっと別な世界があると信じていた。
その夢がなんなのか、今はまだわからない。小学6年の彼にすれば当然のことだった。

叔父の彼女が作り置きしておいた、朝食を温め、スポーツ新聞を広げた。
小倉に向かった彼女が叔父と話しているのを思い出した。
「今週から短期免許で騎乗するデムーロを取材に出かけるの」
「クリスチャンは昨年こっちで乗っているが、その騎乗は折り紙つきだ。小倉レベルなら全部勝ってしまうじゃないか」

ならば人気の2レースを蹴飛ばして、10レースの1番の単勝を勝負する。
竜太はパソコンに向かって投票をすませた。
デムーロの弟にすこし自分を重ねたのかもしれない。
竜平はちいさくつぶやいた、「頑張れ、クリスチャン」。

<柏木竜太が購入した馬券>
2レースの⑧番単勝に2000円。
10レース①番単勝に3000円。

コメント
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