この馬券に神が舞い降りる

だから...
もうハズレ馬券は買わない。

1回東京3日目

2012-02-04 09:15:37 | 馬券
【節分の夜】

竜太には母の記憶がない。たったひとつの記憶を除いて。

2000年夏、母ひかりと竜太が乗った軽自動車が横転事故、運転をしていたひかりは死亡。
後部座席に同乗させていた竜太は、この年から改正された道路交通法で義務づけられたチャイルドシートによって、奇跡的に助かった。
現場にはブレーキ痕がないことで、自殺だとうわさする人もいたが、夫修平はひかりが乳飲み子の竜太を道連れに自殺したとは考えらない。

ひかりの死後、母に替わって愛情を注いでくれたのが、医師の小林香良(かよ)だ。
父の知り合いということもあったが、女性としての身の回りことは、この小林がしてくれ、竜太はずっと彼女のことを母だと思っていた。

物心がつき、母の墓参りに行くことも理解できなかったが、やがて町のうわさはいやが上でも耳に入ってくる。実の母でないという現実と、母として甘えたいと思いが交錯する。
高学年になると少しずつ、距離を置くようになっていった。

昨年の3月に、香良が北海道の大学病院に戻ることになった。
言いようのない寂しさを感じたが、不思議と涙は出なかった。しょせん、香良とは他人なのだ、そう竜太は自分に言い聞かせていた。
出発の日、柏木家に立ち寄った香良は、竜太を強く抱きしめた。
その瞬間、竜太の中に眠っていた記憶が呼び戻された。
あの事故の日、竜太を抱きしめ守った母の姿を。
現実にはシートベルトで固定されていた身体が、竜太を守れることはないのだが、ひかりの魂が竜太を抱きしめ、その小さなな命を守った。

そしてふたたび、同じ感覚に包まれた。
「かあさん」
母ひかり、そして香良と竜太にはふたりの母がいてくれた。
竜太に目から涙がとどめなく落ちていく。彼の掌にも香良の暖かなそれがこぼれ落ちた。

マンションの窓を開けると、凍てつく寒さが入り込んだ。
「福は~うち、鬼も~うち」
「なんだ、鬼は外だろう」
良太と修司が口をそろえていうと、
「真唯子さんが小倉だから、家にいない人が鬼と間違えられて帰ってこられないといけないだろう。第一、鬼だって、こんな寒空に外に出された可哀そうだよ」

今は、離れ離れの修平と香良への思いも込めて竜太は繰り返した。
「福は~うち、鬼も~うち」

<加納真唯子の予想>
小倉大賞典
◎ ⑤ビッグウィーク
○ ⑥ガンダーラ
▲ ⑫コスモファントム
△ ⑬ダンツホウテイ
△ ⑯ダノンスパシーバ
★ ③スマートギア
コメント (2)
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