【動き出した時間】
良太は本格的に騎手修行のため、調教師の山本家へと移っていた。
竜太は、鎌倉の修平の実家へ行ったきり、戻ってこない。6年生の竜太にすればあとは卒業式だけなのだが、川崎の小学校で迎える卒業式は、彼にすれば意味のない行事なのだろう。
ふたりがいた時は狭さを感じたが、今は埋めきれない広さと寂しさを覚える。
MIHIRO(マイロ)のHappy Birthday To Youが流れる。竜太の誕生日に、良太が歌った曲である。
あの日、アカペラで歌う良太の声に、店の視線が集まり、終わった瞬間、拍手が響いた。
良太の騎乗技術を真唯子は知らないが、良太の歌う声は、それだけ本物なのだと思う。
騎手として感動させる何十倍もの感動を、他人に与えることができるかもしれない。
良太と同じ歳のころ、真唯子は暗い闇の中で、死ぬことばかりを考えていた。
自分の未来を信じることができなかった。
周りの大人の偏見が、彼女の夢を潰して行った。
大人は決して子供の可能性を潰してはいけない。
14歳で自分の道を決めている少年への羨ましさもある。
しかし、いつか挫折を味わったとき、限りない選択肢を導いてやるのも大人の役目だ。
無性に子供がほしいと思った。
修司との関係を、真剣考えるときなのかもしれないと思った。
いや、それは自分の生き方そのものかもしれない。
「もっと自分の人生に対してまっすぐに向き合わなくては」
真唯子はそうこころに決めた。
<加納真唯子の予想>
アーリントンカップ
◎⑤チャンピオンヤマト
○⑫ヴェアデイロス
★③アルキメデス
△⑬ジャスタウェイ
△②オリービン
良太は本格的に騎手修行のため、調教師の山本家へと移っていた。
竜太は、鎌倉の修平の実家へ行ったきり、戻ってこない。6年生の竜太にすればあとは卒業式だけなのだが、川崎の小学校で迎える卒業式は、彼にすれば意味のない行事なのだろう。
ふたりがいた時は狭さを感じたが、今は埋めきれない広さと寂しさを覚える。
MIHIRO(マイロ)のHappy Birthday To Youが流れる。竜太の誕生日に、良太が歌った曲である。
あの日、アカペラで歌う良太の声に、店の視線が集まり、終わった瞬間、拍手が響いた。
良太の騎乗技術を真唯子は知らないが、良太の歌う声は、それだけ本物なのだと思う。
騎手として感動させる何十倍もの感動を、他人に与えることができるかもしれない。
良太と同じ歳のころ、真唯子は暗い闇の中で、死ぬことばかりを考えていた。
自分の未来を信じることができなかった。
周りの大人の偏見が、彼女の夢を潰して行った。
大人は決して子供の可能性を潰してはいけない。
14歳で自分の道を決めている少年への羨ましさもある。
しかし、いつか挫折を味わったとき、限りない選択肢を導いてやるのも大人の役目だ。
無性に子供がほしいと思った。
修司との関係を、真剣考えるときなのかもしれないと思った。
いや、それは自分の生き方そのものかもしれない。
「もっと自分の人生に対してまっすぐに向き合わなくては」
真唯子はそうこころに決めた。
<加納真唯子の予想>
アーリントンカップ
◎⑤チャンピオンヤマト
○⑫ヴェアデイロス
★③アルキメデス
△⑬ジャスタウェイ
△②オリービン