この馬券に神が舞い降りる

だから...
もうハズレ馬券は買わない。

1回東京7日目

2012-02-18 10:28:28 | 馬券
【入院】

急激な尿意をもよおすと、そこには有料を記した個室トイレがどこまでも続く。
入り口で順番待ちをしている修平を横目に、後から来た人間たちが扉の前に並ぶ。
慌てて修平も扉の前へと位置するのだが、彼が位置したトイレの扉だけ開かない。
いよいよ、というところで目が覚めた。
「ああ、夢だったのか」
と思い、トイレに起き上がろうとすると、金縛りで身体が動かない。
尿意がさらに襲ってくる。
「ああ、これもきっと夢なのだ」
もはや自分は死の淵に立っていて、永遠の夢を見ているのか。
もしかすると自分の一生は、この幻影ではなかったのか。
この夢から覚めたとき、自分の命が尽きるときなのだ。

腹の痛みを感じると、記憶がよみがえってきた。
検査と麻酔の記憶。確かに検査のために病院へきたのだ。
どうやら、ささやかな自分の人生は本物だったようだ。
ぼんやりと部屋の明かりが見える。カーテンに閉ざされた世界はどうやら闇の世界らしい。
はだけた検査着の下には、簡易のオムツをはかされている。
「こいつのせいで、おかしな夢をみたのか」
空になった点滴を支えに、部屋のトイレにたどり着いた。

日曜日、母に連れられ息子たちと父の墓を訪れた。
墓の周りは数多くのま新しい献花が手向けられている。
父の死を惜しんで、訪れてくれる人が後を絶たないのだろう、改めて父の人生に思いをはせた。
その日の夜、良太は川崎へ戻り、竜太は鎌倉の家に残った。
明けて月曜日、香良の車が迎えに来て東大病院へ。
通された個室で、血液の採取と下剤を飲まされた。
すべてが吐き出さて検査台へ上り、麻酔が施され、数を数えているうちに眠りの奥に誘われた。

トイレを出ると、私服の香良が待っていた。
「お腹は空いてない」
「この腹の痛みじゃ、なにも食べたくないね」
予期せぬ状況に、修平は不満を口にした。
「痛い、痛い、ってまるで子供みたいだったんだから」
たしかにそのような記憶がかすかだが残っている。
「どうやら初日の検査は終わったのかい。明日以降もこんな七転八倒が続くのならば抜け出して家に帰りたいね」
「残念ながら、どこにも逃げられないように、外には監視を立たせているわ。検査というのは嘘。これまでのあなたへの復讐だから徹底的に切り刻んであげるから、覚悟してね」
香良は軽口をついた。

<加納真唯子の予想>
ダイヤモンドS
◎⑥ビートブラック
○⑯ギュスターヴクライ
★⑦スマートロビン
△⑫リッカロイヤル
△⑤ケイアイドウソジン
コメント
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