この馬券に神が舞い降りる

だから...
もうハズレ馬券は買わない。

1回東京6日目

2012-02-12 06:05:19 | 馬券
【帰郷】

 柏木修平と息子たちが、JRの鎌倉駅に降り立ったのは、22時を少し回っていただろうか。土曜日の夜ということもあるのか、それほど混みあっていない。懐かしい思いと、異郷の地を訪れるような複雑な思いが交錯する。
 改札を抜けると、母が待っていた。
 小さく手を振り、微笑みかえした母の姿に、この26年間の空白を埋めきれず、自分の不実を悔いる修平だった。

 息子竜太の誕生にあわせて、検査入院を2月13日の月曜日と決めた。誕生日の当日である土曜日の午後、札幌からの便で飛び立ち、羽田経由で川崎駅に着いたのは17時過ぎだった。先に修司と息子たちは到着していた。別れてひと月ほどなのに少し大人びた感じがした。
 時間差で、海外からとんぼ返りだという真唯子が到着。修司がいうには、ふたりとも格好が他人とは違うから見つけやすいのだと。
 修司がふたりの荷物を、駐車場に止めた車に運んでいる間に、修平たちは、真唯子が予約を入れておいてくれたイタリアンの店を探した。

 土曜日の夕方ということもあるのだろう、店は大変混み合っていた。予約の札が置いてある奥のテーブルに4人は通された。
修司が合流するとすぐに、客の視線を集めるような花火を飾ったケーキが運ばれ、竜太の12歳の誕生日を祝うプレートがのっていた。
 修平はさながらサプライズゲストというところだったのだが、もっぱら真唯子が話題の中心となり、料理も体重を気にしている良太や酒を飲まない修司や修平には、口に余る量だった。それでも彼女は2時間半、場を盛り上げ、最後にはすっかり出来上がり、酔いつぶれてしまった。

 父、征成の写真が仏壇に置かれてある。父らしい、にこりともしない遺影だ。
最後まで分かりあえなかった。昨年暮れに亡くなった時も、自分が死んでも、修平にはなにも伝えるなというのが、父の遺言だったそうだ。父の死がなければ、自分がこの敷居をまたぐことはなかったであろう。修平はその顔を見上げ手を合わせた。

 客間に敷かれた布団には、湯たんぽが忍ばせてあり、寒がりだった自分を、母は覚えていたのだろう。北海道や福島で生活していた修平にすれば、鎌倉はむしろ暖かさを感じるほどだったが、湯たんぽに母の温もりを感じた。
 生まれた育った家で、初めて息子たちと枕を並べて横になる。これが最後になるかも知れないという想いを抱きながら、しばらくは遠い記憶の波音を聞いていた修平の頬を涙がつたった。瞬間、晄の顔が浮かんでは消えた。
「負けない」
修平は自分にそう言い聞かせると、朝まで深いに眠りにと落ちていった。

<加納真唯子の予想>
京都記念
◎⑨ヒルノダムール
○①ダークシャドウ
★⑦ウインバリシオン
△④トーセンラー
△③トレイルブレイザー

共同通信杯
◎⑧スピルバーグ
○⑨コスモオオゾラ
★③ゴールドシップ
△④ストローハット
△②デープブリランテ
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする