Pの世界  沖縄・浜松・東京・バリ

もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

ハイタッチの不思議な感触 

2010年06月10日 | 家・わたくしごと
 それはひじょうに奇妙な夢だった。僕は古本屋の前を通り過ぎて、その隣の友人の経営する店に入った(友人だったと思うが、自信がない)。古本屋の前を通るとき、店番をしていた老夫婦が、私が以前プラハやブリュッセルで見たような人形を操りながら、二人で笑っていた。訪れた友人の店で僕は新聞を開くと、なぜかその老夫婦の記事が掲載されている。ご主人の方は日本で名の知られた操り人形遣いなのだという。「この人、隣に住んでいるんだよ」と私は得意げに友人に話をした。
 すると、友人が操り人形を持ってきて遊び始めた。人形好きの僕は「ちょっと待って」といって、現在、私の研究室に置かれているチェコで購入した操り人形(夢の中では母方の祖父と祖母の仏壇のある部屋の衣装棚の上に置かれている。友人の店のはずなのだが、そのあたりが夢の醍醐味だ。)を持ってきて、友人と声を出しながら遊び始めた。実に楽しいではないか。人形同士、手のひらでハイタッチ!最後に自分で操る小さな人形の右手と、私の右手をハイタッチ。
 ところが、その感触がまるで子どもの手のひらのぬくもりなのだ。驚いてもう一度、僕は人形の手とハイタッチを試みた。やはり子どもの手だ。生きた、血の流れる人形の手。そんなはずはない……。その時、ハッと目が覚めた。なぜか僕の目には涙があふれていたのだ。
「ハイタッチしてくれないかな」
 朝、起きたばかりの息子は寝ぼけ顔で、わけもわからず、僕とハイタッチをした。「どうして?」と聞かれたが、僕は何も答えなかった。彼の手は人形の手とは比べものにならないほど大きかったのだがーーそれは私の手のひらの大きさとほとんど変わらないと思うほどだったーー、確かにあの人形と同じ「ぬくもり」をわずかに感じることができた。僕の夢が暗示したものは、いったい何だったのだろうか。今なお、手のひらには、あの夢で体験した不思議な、懐かしいぬくもりの感触が残っているのだ。