Pの世界  沖縄・浜松・東京・バリ

もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

吊るされたバナナ~あの頃当たり前だったこと(3)

2013年03月27日 | 那覇、沖縄

 東京で育った私にとって、バナナはスーパーや八百屋で、陳列棚に置かれて売られるものだった。もちろん、子どものときに浅草で父とバナナの叩き売りを見たことはあるけれど、やっぱりそのバナナも一升瓶かビール箱の上にベニヤ板かダンボールを敷いて、その上に置かれていたような気がする。
 沖縄に赴任して驚いたのは、自分が住んでいた首里石嶺町の小さなスーパーの中では、いつもバナナが吊るされて売られていることだった。それとも、これは売っているのではなく何かの象徴なのか、本気で考えてしまったほどである。なぜならこれを見て、バリの寺院の儀礼で供物として果物などが紐で吊り下げられていたことを思い出したからである。
 結局13年間、店先で聞いたことはなかったが、たぶん一つには「果物屋であること」を外に示す意味、また空気に触れさせて「熟れさせる」などの意味があるんだろう。わざわざ、吊り下げられたバナナを指さして、「これください」とは言わない気がするのだが…。だって、その下にバナナは並べて売られているんだしね。
 考えてみれば、バリのデンパサールの市場の脇に並ぶバリのバナナ屋でも、青いバナナの房がいくつも吊り下げられていたのだった。これだけで、「沖縄とインドネシアは繋がってるさ」と語るのはあまりに短絡的なことはわかるが、こんな共通点を見つけると、なんだか少し嬉しい気がするのである。住んでいなくても、住んでいても、そんな嬉しさは今なお変わらないものだ。