今年から大学の所属学科(芸術文化学科)の学生が企画・運営をする「室内楽演奏会」の監修の仕事を仰せつかりました。学生が中心なので、どこまで、何を言っていいのかまだわからないまま進んでいるのですが(前の大学ではその仕事、私が委員会でやってました)、その第1回目が椙山久美レクチャーコンサート~弦楽四重奏の世界(6月1日)です。
弦楽四重奏といえば、ちょっと笑える思い出があります。高校1年の冬から受験のために始めた和声ですが、それがはじめのうちは大の苦手。本当に基礎の基礎ですら、平気で連続五度、導音が主音に行かないなんて普通にやっていて、もう和声の先生、常に「大激怒」でした。「どうしていけないんですか?」なんて、それでもふつうに質問していた私は本当にスゴイ奴でした。「信号は赤じゃ進めないでしょう。それが規則なんです。」なんて言われても、赤信号には「身の危険」が感じられたものの、和声の連続五度なんて別に何ら身に危険なんてふりかからなかったしね。あのころ、ウィトゲンシュタインの「ゲーム理論」なんて知っていたら、そのルールについて先生に説明してあげていたかもしれません。あー、知らなくてよかった。ほとんど「地雷ゲーム」ののりで和声やってました。
ある日、あまりにアホな私に愕然とした先生は、「あなた一度、ハイドンとかモーツァルトの弦楽四重奏をスコアーみながら聞いてみてください。それでね、よく美しい響きとはどういうものなのか勉強してみてください。」と完全に私を見捨てたように言いはなったのを今でも覚えています。だいたい、弦楽四重奏なんてレコード一枚も持ってなかったし、マジで聞いたことなんて全くない。あれさ、クラシックのベンチャーズみたいな音楽で、いわゆるオヤジの音楽だぜ、みたいな感じでしたからね。
しかし、こっちもカチンときて、「おもしれー、そんなに言うんなら聞いてやろーじゃねえか」という売られたケンカのノリで、ハイドンの弦楽四重奏(山のようにあるので何番か忘れた)のミニチュアスコアーを買い、当時、図書館から傷だらけのレコードを借りてきて聞いたのでした。これが私と弦楽四重奏の出会いです。その結果、ぼくは正直言ってこの音楽に完全にはまりました。和声なんて理論にしかすぎなかったのが、弦楽四重奏にはまってから、それは単なる理論でなくなったのでした。不思議なもんですね。やっぱり交通法規だけ本から覚えたって実感ないけど、車に乗ってみると、やっぱり交通法規を覚えようって気になるでしょう。それですね。レベル超低いけど。おかげで僕は和声が大好きになり、まあ受験の間も大学に入ってもよく勉強しました。音符を書きながら常に音が頭の中に響くのですね。讃美歌集もだいぶ勉強のために弾きましたが、やっぱりオルガンじゃなくて、弦楽四重奏の響きなんです。聞きすぎたんですね。
弦楽四重奏は、昔の私がそうだったように、若い方にはなかなかなじみがないかもしれません。でも私は一度は聞いてもらいたい音楽だと思うのです。今回レクチャーしていただける椙山久美さんは浜松在住のヴァイオリニストです。浜松にはいろいろな方がいらっしゃるんですね。私は市民の方に加えて、学生にも大勢来てもらいたいと思っています。このブログを読んだ学生諸君、私に騙されたと思って演奏会場に足を運んでみてください。新しい音楽との出会いというのは常に新鮮なものなのですからね。
詳細は上掲のチラシをご覧ください。