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もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

那覇でステーキ屋

2016年02月11日 | 那覇、沖縄

 日曜日から火曜日まで出張で那覇に行っておりましたが、なんと、14年間那覇に住んでおりました間、一回も行ったことのなかったステーキ屋にて初めておいしいディナーを食してまいりました。なかなかの美味でございました。本格鉄板焼きなるもの、「物心ついてから」はじめての経験でございました。
 正直申しますと、鉄板焼き屋は「人生初」ではございません。なんと、まだ「物心がついていない」幼少の折、あの都内でも有数な日本橋にたたずむ鉄板焼きの名店「紅花」に行ったことがございます。わたくしの父親としては、最高級のものを幼少の私に食べさせようという思いだったのでしょう(恥ずかしながら、わたくしは、B級グルメ派でございまして、自分の息子にそのような経験をさせたことはございません。)。しかし、鉄板焼きの「いろは」もわからない幼少のわたくしは、どうもスパゲティが食べたい、カレーが食べたいなど、自由奔放なわがままを申したようでございまして、それはそれはシェフをはじめ両親までも困らせたという話が、わが家の「伝説」として残っておるようでございます。
 なぜでしょうか、その伝説の後、私は鉄板焼きといえば、「お好み焼き屋」「もんじゃ屋」以外に行くことはなくなったわけでございます。子どものときの記憶はほとんどございません。ただ、紅花なる場所が、薄暗い店であったこと、シェフが背の高い帽子をかぶっていた記憶だけが、鉄板に張り付いて、いくらこすっても取れない「おごげ」のように、妙に脳裏のどこかに焼き付いております。
 今回入ったお店、まるで記憶がよみがえるような雰囲気でございました。おもわず、「スパゲティー・ナポリタンを一つ」と注文してしまいそうでございましたが、タイミングのいいことに、その日のランチは沖縄市役所にてナポリタン定食を食べたばかりでございまして、そのせいか、ぐっとこらえることができまして、「サーロインステーキと生ビール一つ」と、緊張のあまり声を震わせながら注文することができたのでございます。なんというか、やっと幼少期のつらい記憶をこの日をもちまして乗り越えることができた、という不思議な心境でございます。鉄板に張り付いていた「おごげ」が、きれいにはずれたような心持ちというのが正確な表現でございましょう。この場を借りて、あの日のわがままを両親に心より詫びたい気持ちでございます。