Pの世界  沖縄・浜松・東京・バリ

もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

輸出用大正琴

2016年09月16日 | 家・わたくしごと

 大正琴って戦前に輸出用に作られていたこと、ほとんどの方はご存知ないと思います。大正元年に名古屋で誕生したこの楽器は、名古屋中心に生産され、その後、大正5年前後には海外向けにも作られるようになり、昭和初期にはかなりの数が、中国、インド、東南アジア、そして欧米にも輸出されていました。しかし、輸出品項目としては、「楽器」ではなく「玩具」扱いだったので、なかなか統計的にその数を把握することができないのです。玩具の中身ごとの統計がないからです。
 インドネシアで使われている大正琴の調査を続けているうちに、日本の輸出の状況を調べ始めました。まだ1年足らずの調査ですが、名古屋が近いこともあり、名古屋方面の図書館などでいろいろな文書や組合の定款をチェックしてきました。しかしどうしても輸出用の楽器を実際に手に取ってみることができませんでした。だいたい輸出用なわけで、日本に箱のまま残っているものが少ないわけです。
 そんな楽器、やっと手にいれることができました。昭和10年に制作されたもので、この写真は箱です。実は、箱から輸出用の検査に通ったものはシールなどが張られることになっていて、それがこの一枚です。定款でしか見なかったものを実際に目にすると感動します。中もほとんど使われていないものでした。今度、写真を撮影したらブログにも掲載します。
 こんな楽器がインドネシアにも伝わったのかもしれませんね。手に入れた楽器はいろいろな想像をかき立てます。ロマンティックな想像は小説の世界であり、論文にはなりませんが、でもそんな世界を研究者としてではなく、一人の人間として楽しむのも心地がいいものです。