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もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

アンクルン・クビャルに胸躍る

2016年08月30日 | バリ

 自分の所有している大編成のゴング・クビャルは今、沖縄のガムラングループに託してあり、沖縄のメンバーが使ってくれている。楽器が次世代に受け継がれていると思うと、とても嬉しい。浜松ではガムラン・アンクルンという4枚の鍵盤(板)がついた小さな楽器を演奏している。たまたま私が浜松にこの楽器を1セット持参したことと、大学がこの楽器を授業用に購入してくれたからである。
 日本ではほとんどのグループが、今は、ゴング・クビャル、スマル・プグリンガンといった大編成のガムランを演奏している。音階も5音階だし、音域も広いため、音楽的な表現も当然豊かになる。ようするに、4つしか音がなく、音域も狭いガムラン・アンクルンよりずっと面白いのである。浜松でガムラン・アンクルンを続けているのは、もちろん大学の予算上や置き場の問題もあるが、正直、私はガムランを始めたときからガムラン・アンクルンが好きなのだ。大学1年生の頃、民族音楽学の教員の家で最初に始めたガムランは、ガムラン・アンクルンだった。この楽器が私の出発点である。その後、さんざんゴング・クビャルを演奏してきて、再び、またガムラン・アンクルンに戻ってきたのである。
 写真のガムラン・アンクルンは、火葬儀礼の会場。日陰の涼しい場所でガムラン・アンクルンを演奏している。もともとガムラン・アンクルンは死者の魂を天に導くための音楽を奏でるのだ。しかしこのときは、ゴング・クビャルの儀礼曲をアンクルンに編曲した作品を演奏していた。とにかく、恰好いいのである。胸躍る、とはまさにこのこと。4音音階の大音量のシャワーを浴びると心臓が高鳴る。やっぱり好きなんだな、と思う。ゴング・クビャルを演奏することにほぼ未練はないのだけど(だいたい、重くて運ぶのがおっくうである)、やっぱりあの大音量と独特のスイング感はたまらない。4音音階のガムラン・アンクルンでクビャルの派手派手な作品を演奏するなんて、いいじゃないか。いつか浜松にそんなグループができたら本望である。


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