中部国際空港はデッキで飛行機を見るのが無料なので、たまに行くことがあるとなかなか沖縄ではお目にかかれない外国のエアーラインの機体を観察する。今日もデルタ航空、ベトナム航空、ルフトハンザ航空などの眺めながら、アメリカ行きたい、ベトナム行きたい、ドイツ行きたい、と見る飛行機ごとにいろいろな妄想にふけっていた。
「お母さん、飛行機が飛んでいくよ」
すぐ近くにいた小学校にあがったばかりに見えるボクが、ちょうど飛び立とうとしている飛行機をまっすぐに手を伸ばして指差している。
「あれはどこの国の飛行機かしら?」
お母さんは子どもに尋ねると、子どもは小さな本を出して、尾翼のマークや色を調べ始めた。
「ボク、あれはね、インドネシアの飛行機会社のガルーダっていうんだよ。」
どうして私は大人げないんだろう。子どもが一生懸命さがしているっていうのに。子ども相手にそんな知識を自慢したってしょうがないじゃない?
「ありがとうございます。」と親には感謝されたけれど、子どもはそれでも必死に探し続けているのだ。
君はすごい。人を信じないところがすごい。自分の目で確認しなければ気がすまないんだね。きっとボクはりっぱな学者になれるよ。そんな探究心を忘れないでがんばりなさい。
ちなみに、ぼくはそんな子どもを相手にしていたので、ガルーダ航空の新型エアバスが飛び立つ機体の写真が撮影できなかったのだった。だからデルダ航空で我慢してね。
この時期になると思い出すことがあります。ちょうど大学浪人をしているころ、道玄坂にあった小さな電気屋のショーウィンドーに飾られた当時は最新鋭のテレビの前で、ヤクルト対阪急の試合を食い入るように見ていたことです。
曇った空、ひんやりとした晩秋の風、周りで見ている男たちのどよめき……。30年近くたった今なお、日本シリーズはそんな感覚を私に思い出させてくれます。なぜだろうか、ぼくはそんな一瞬の記憶や感覚を取り戻すことのできる日本シリーズの季節が好きなのです。
学会発表が「朝いち」だったので、9時頃にテレビ塔の下を歩いて会場へ向かった。上を仰いでデジカメのシャッターを押す。押しながら、「今日の発表がちゃんとできますように」とつぶやいた。
テレビ塔をデジカメで拝んだせいなのかどうかはわからないが、一応、発表も無事終わり、食べ物の方の名古屋名物「味噌カツ」も、私の発表を聞いてくれた昔のゼミ生と食べたし、なんとなく名古屋に来てやるべきことはすべて終えたような気がしている。いや待てよ。まだガムランのメンバーの「餌々(「オレオレ」と読む)」を買っていなかった……。
現在、名古屋の錦にあるビジネスホテルで明日の発表の準備中。ちょっと夕食で外に出てきました。錦なる場所、いやいやすごいところですね。30秒に一回は、黒服のお兄さんが声をかけてきます。「お兄さん、今なら待ち時間なしです。どうですか?」などなど、いろいろです。
とにかくクラブなどのネオンがすごいし、夜8時過ぎに街を歩けば、ちょうどお仕事へ向かう夜の蝶が街にあふれています。銀座ほど落ち着いた感じはしませんが、歌舞伎町ほど派手さもない街。それが錦なんでしょう。
そんな街の街路樹には、たくさんのキンモクセイが植えられていて、今は花の真っ盛り。甘すぎるほどの香りが街にひろがります。二人連れのきっとこれからお仕事へ向かう夜の蝶たちが、キンモクセイの木の下で立ち止まり、二人で花を見上げている風景に出会いました。キンモクセイに夜の蝶が、ほんのひと時だけ戯れて、ネオンの街へと消えていく……。うまく言えないのだけれど、ほっとできるような素敵な風景に出合った気がしました。(写真は翌朝撮影したキンモクセイ)
「先生、発表時間30分じゃないんですか?」
と指摘される。「えっ、マジ?」ということで、結局、調べてもらうとなんと30分であった! もしこの時、同僚に会わなかったらぼくの発表は20分ぴったりで終わっていたはずで、残りの10分はいったいどうしていたのだろうか。とにかくぼくはツイている(ひじょうにポジティヴな思考です)。ちなみに今現在、まだ原稿はまったく30分に到達していない。でもホテルがあるし。とにもかくにもA女史に感謝である。
大学のバリ・ガムランの授業では、ガムラン・アンクルンを教えています。大学にはゴング・クビャルもあるのですが、音楽学部のキャンパスには置かれていないのです。アンクルンの授業は昨年の秋からですから、長い学生で1年、今年度から単位をとっている学生はまだ半年。それでもどの学生もだいぶ演奏できるようになりました。バリと同様に、授業でも全く楽譜は使いません。完全な口頭伝承。一回でも授業を休むとたいへんなことになるわけですね。
今回、授業で勉強している学生達がはじめて芸術祭の場を借りて、人前で演奏をしました。全部で2曲。アンクルンの器楽曲とバリスです。レヨン4人とガンサ、ジェゴガンはほとんど学生で、サークルからも助っ人を何人かお願いしました。
学生は琉球芸能専攻の古典音楽や舞踊の学生と音楽学の学生。舞踊専攻の学生は皆、練習用の着物で演奏。なんといっても琉球芸能の学生は舞台慣れしているので堂々としていること。これ、われわれも見習わないといけません。しかも踊り手をしっかり見て演奏します。手元が狂っていても、それでも舞踊をみようとする姿勢は立派。皆さん、お疲れ様でした。私はとっても楽しく演奏できたかな。
目を伏せて無視しようとしたのだが……なんちゃってね。この団体、ついさっきまで一緒に演奏していたメンバーなのだ。いやー、これ写真にとると、どこかの山の頂上で日の出を待つ団体みたいだなあ。君達、かなり目立ってたよ。(写真のみなさんのブログ掲載の許諾済)
今回のレゴンのチョンドンの衣装は、染色の学生の卒業作品。これはバリでも通用する!というほど素敵な衣装でした。バリでこの衣装で公演したら、もしやバリでも流行るかも?という気もしました。
明日は午後2時半からピロティです。今日のクビャルの数々のプログラムに加えて、授業でがんばっている学生達によるガムラン・アンクルンによる器楽曲一曲と舞踊曲バリスの演奏があります。バリスはしっかりバパンも演奏します。でも、できるかしら?
「そりゃね、好きだからですよ。別に大学の芸術祭なんだから、教員が関わっちゃいけないなんて規則はないっすよ。学生の出店した店で買い物してあげるのと、見回りして『早く帰れ』って言うのだけが、先生の役割じゃないんです。ちなみにぼくは義務的に買い物なんてしませんよ。」
「ところで、今年もガムランのポスターはいい感じだねえ。やっぱり美術の学生がいるといいなあ。」
「でしょう?ちなみに去年のもここで見られるんですよ。制作者は同じなんです。来年は4年になるし、作れないだろうなあ。」
「君、来年、4年にそんな催促しちゃだめだよ。卒業作品の制作もあれば、就職、進学と忙しい時期なんだからね。まあ、とりあえず見に行きますよ。とりあえずね。」
「なんだか、飲み屋に入って速攻ビールを注文するみたいですね。でもありがとうございます。ちなみにバリのガムランは、2日は19時から、3日は14時30分からですからね。しかも3日はぼくが授業で教えている学生たちも主演しますから、両方見に来てくださいな。」
「君、ぼくは忙しいんだよ。ガラムンに、いやいやガムランにうつつを抜かしている暇なんてないんだ。」
「まあまあ、そう言わずにね。うつつ抜かすついでにあと二つ、ぼくは演奏しないんですけど、ジャワのガムランの演奏もあるんですよ。こちらの時間は、バリの逆で、2日は昼の時間、3日は夜の時間です。詳細がわかったらまた連絡しますよ。そうそう、もう一つ、うつつ、といえば、『バリ島ワヤン夢うつつ』って本、去年書いたんですよ。うつつを抜かすついでに読んでみてくださいな。読み終えたら、きっとパリParisじゃなくてバリBaliに行きたくなるはずですよ。」