気まぐれの貿易停戦。 capricious the suspension of arms of trade war

　(1)GDP世界１位米国と２位中国（１位と２位では桁違い）が高関税のかけ合いの貿易戦争をくり広げてきて、ここにきての第１段階での停戦（the suspension of arms）となった。米国はさらなる制裁関税を見送り、これまでの追加関税の一部を縮小して、中国は米国（大統領選のトランプ大統領）が望む農産物購入に知的財産保護を約束する（報道）というものだ。

　(2)中国の対米貿易黒字の拡大にトランプ大統領が対抗措置、削減をはかるために始めた米中紡績戦争であるが、今になっては「何」が変わり、「どう」なったから貿易停戦になったのかわからないままの政局がらみの気まぐれ（capricious）停戦合意だ。

　こういうのに世界が振り回されるのはいいかげんにしてもらいたい。米中貿易戦争は双方が輸入関税を引き上げる双方にマイナス要因となるものだが、GDP２位の中国には国内経済の減速を招いて被害影響がより大きいマイナス効果となり、それは日本をはじめ世界経済にもマイナス効果を波及している。

　(3)日本では大企業の成長率が３年ぶりにマイナスとなり、米中貿易戦争の影響効果とみられている。米中貿易戦争はトランプ大統領が中国、日本などが対米貿易黒字拡大で米国から一方的に利益をあげているとして貿易戦争を仕掛けたものだが、双方高関税のかけ合いがエスカレートして引くに引けない貿易対立となっていた。

　(4)米中貿易戦争がいきつくところまでいく様相の中で、ここにきて中国は香港情勢が深刻な市民デモによる混乱が収束できずに、中国にとっても大きな比重を占める香港経済の減速を招いて中国経済を一層苦しめるマイナス効果となっていた。

　米国トランプ大統領は来月には議会による弾劾裁判が始まると伝えられて、来年１１月の大統領再選に向けてマイナス要因といえる国内経済にも影響のある米中貿易戦争を停戦、縮小したい思惑が働いたと考えられる。

　(5)米国が米中貿易戦争を始めたのは対米貿易黒字解消という一応の名目はあったが、それがどう解消されたのか説明もなくわからない中での貿易停戦であり、トランプ大統領の身勝手な気まぐれ、思いつきの自らの岩盤支持層つなぎとめの米中貿易戦争だった。

　桁違いのGDP１位の米国が戦略名目があるともみられない米中貿易戦争を仕かけて、それが世界経済にも影響、暗い影を落としている中で、中国は日本に接近して関係強化姿勢をみせており、米国にとっては中国、日本の接近という思わぬ副産物となった。

　(6)来年春には習主席が国賓として訪日して経済、貿易関係を促進するということになれば、米国にとってはこれまでの対米貿易黒字のGDP２位、３位の接近を招くことになり、トランプ大統領の思惑としては歓迎すべきことではない。

　すでに中国は習主席の国賓訪日にあわせて日本から牛肉輸入拡大を表明しており、日中関係改善が進む伏線はある。トランプ大統領の身勝手な気まぐれ、思い付きに世界はどこまで付き合わされるのか、日米通商貿易協定も来年から発効しトランプ大統領から再選に向けて厳しい姿勢、要求が待ち受ける。