令和2年8月7日 i-JUMP
プラ一括回収-市区町村の負担軽減課題
収集や選別に手間
※スクラップに保存する。
政府が、市区町村が家庭からリサイクル資源として集めているプラスチック製容器包装と共に、歯ブラシや文房具などのプラ製品も一括回収する案を示したことを受け、各自治体ではさまざまな反応が出ている。
歓迎する声がある一方、収集や異物除去の選別作業などに掛かる費用増大を懸念する意見や、多様なプラ素材が混ざった状態で収集されることから、リサイクルが技術的に難しくなるとの見方がある。
新たな分別方法の普及に向けて、市区町村の費用負担や手間を軽減する仕組みが焦点となりそうだ。
また、一括回収した素材のリサイクルに対応できるよう、設備を高度化する事業者への支援なども課題となる。
◇22年度にも開始
環境、経済産業両省は、昨年5月に政府が決定したプラスチック資源循環戦略に基づく取り組みを進めるため、今年5月に有識者会議を設置。
プラごみ削減やリサイクル促進に向けた方策を検討し、このほど「基本的方向性」の案を示した。
この中で、「家庭から排出されたプラスチック製容器包装・製品については、プラスチック資源として分別回収することが求められる」と明記し、おおむね了承された。
有識者会議は今後、8~9月ごろに基本的方向性を最終決定した上で、秋ごろから具体的な制度設計に着手する。
これを受け、政府は法的整備が必要となれば、来年の通常国会にも法案を提出。
2022年度にも一括回収が始まる見通しだ。
プラ製容器包装・製品の一括回収は、以前から名古屋市をはじめ、横浜、大阪両市などが実現を国に要望してきた。
名古屋市の担当者は、今回の基本的方向性案について、「一括回収の仕組みが導入されれば、資源循環推進の観点から協力していきたい」と話す。
◇選別効率化で経費削減
ただ、プラ製容器包装・製品の一括回収の実効性を確保するには課題が残っている。
現在容器包装の分別収集を行っている市区町村では、プラごみの量が製品の分だけ増えることになり、収集車両や作業員も増やす必要が生じる可能性がある。
また、今後も市区町村がプラごみからの異物除去など選別を担うことになれば、費用や手間が増大する恐れもある。
こうした課題を踏まえ、基本的方向性案は「市町村とリサイクル事業者で重複している選別等の中間処理を一体的に実施することが可能となる環境を整備する」と明記。
異物除去などの選別は、現状では市区町村とリサイクル業者の両方で行っているが、業者側に一本化するなどして、市区町村の負担を減らすことを検討する。
ただ、名古屋市の担当者は、一括回収による収集費用の増大と選別の効率化による経費削減により、全体のコストがどうなるかはまだ判断できないという。
「今後の政府での議論を注視して、見極めたい」と語る。
◇「焼却がベスト」の声も
一方、プラ製容器包装の分別収集を行っていない自治体は、そもそもプラスチックリサイクルの費用対効果や実現性に懐疑的だ。
青森県弘前市は、08年度にプラ製容器包装の分別収集をやめ、可燃ごみとして回収することにした。
これで、プラごみの収集運搬などに年間で約8000万円掛かっていた経費をカットできたという。
担当者は「もしプラ製容器包装・製品の一括回収をしなければいけないことになれば、できると思うが、費用が掛かるのが心配」と述べる。
和歌山市は16年度に分別収集を廃止。
プラごみの収集運搬などに掛かる経費削減に加え、燃焼力が高いプラごみを燃えるごみに混ぜることで処理場の発電能力が高まり、合計で年間1億円以上の効果を生んでいるという。
担当者は「費用面などから、プラと燃えるごみの混合焼却がベストだ。今後も続けていきたい」と説明する。
また、プラ製容器包装の分別収集をしていない三重県内のある市の担当者は、容器包装・製品の一括回収案に関し、「ペットボトルのような単一のプラ素材でもリサイクルは技術的に簡単ではない。いろいろなプラ素材が混ざった状態で収集して、本当にリサイクルできるのだろうか」と実現性に疑問を呈する。
その上で、「リサイクルできず結局は燃やして熱回収するなら、市内の処理場で燃やしたい」と話した。
こうした声に対し、環境省などは容器包装リサイクル法の完全施行から約20年がたち、民間のリサイクル業者の設備投資が進展したと分析。
容器包装と製品を一括回収しても、リサイクルできる環境が一定程度整っているとみている。
さらに、基本的方向性案には、リサイクルの技術開発と社会実装に向けたインフラ整備支援を行うことも明記し、設備の一層の高度化を後押しする構えだ。
◇インセンティブで誘導
容器包装リサイクル法は市区町村に対し、プラ製容器包装の分別収集を行う努力義務を課しているが、実施の判断は各市区町村に委ねている。
容器包装・製品の一括回収も、実際に行うかどうかは個別に判断する仕組みとなる見通しだ。
基本的方向性案は「市町村に対するインセンティブ等を通じて、分別収集体制を全国的に整備する」と盛り込んだ。環境省などはインセンティブの具体化に向けた検討に入る。
参考ホームページ
1からわかるプラスチックごみ(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/special/news_seminar/jiji/jiji17/
プラ一括回収-市区町村の負担軽減課題
収集や選別に手間
※スクラップに保存する。
政府が、市区町村が家庭からリサイクル資源として集めているプラスチック製容器包装と共に、歯ブラシや文房具などのプラ製品も一括回収する案を示したことを受け、各自治体ではさまざまな反応が出ている。
歓迎する声がある一方、収集や異物除去の選別作業などに掛かる費用増大を懸念する意見や、多様なプラ素材が混ざった状態で収集されることから、リサイクルが技術的に難しくなるとの見方がある。
新たな分別方法の普及に向けて、市区町村の費用負担や手間を軽減する仕組みが焦点となりそうだ。
また、一括回収した素材のリサイクルに対応できるよう、設備を高度化する事業者への支援なども課題となる。
◇22年度にも開始
環境、経済産業両省は、昨年5月に政府が決定したプラスチック資源循環戦略に基づく取り組みを進めるため、今年5月に有識者会議を設置。
プラごみ削減やリサイクル促進に向けた方策を検討し、このほど「基本的方向性」の案を示した。
この中で、「家庭から排出されたプラスチック製容器包装・製品については、プラスチック資源として分別回収することが求められる」と明記し、おおむね了承された。
有識者会議は今後、8~9月ごろに基本的方向性を最終決定した上で、秋ごろから具体的な制度設計に着手する。
これを受け、政府は法的整備が必要となれば、来年の通常国会にも法案を提出。
2022年度にも一括回収が始まる見通しだ。
プラ製容器包装・製品の一括回収は、以前から名古屋市をはじめ、横浜、大阪両市などが実現を国に要望してきた。
名古屋市の担当者は、今回の基本的方向性案について、「一括回収の仕組みが導入されれば、資源循環推進の観点から協力していきたい」と話す。
◇選別効率化で経費削減
ただ、プラ製容器包装・製品の一括回収の実効性を確保するには課題が残っている。
現在容器包装の分別収集を行っている市区町村では、プラごみの量が製品の分だけ増えることになり、収集車両や作業員も増やす必要が生じる可能性がある。
また、今後も市区町村がプラごみからの異物除去など選別を担うことになれば、費用や手間が増大する恐れもある。
こうした課題を踏まえ、基本的方向性案は「市町村とリサイクル事業者で重複している選別等の中間処理を一体的に実施することが可能となる環境を整備する」と明記。
異物除去などの選別は、現状では市区町村とリサイクル業者の両方で行っているが、業者側に一本化するなどして、市区町村の負担を減らすことを検討する。
ただ、名古屋市の担当者は、一括回収による収集費用の増大と選別の効率化による経費削減により、全体のコストがどうなるかはまだ判断できないという。
「今後の政府での議論を注視して、見極めたい」と語る。
◇「焼却がベスト」の声も
一方、プラ製容器包装の分別収集を行っていない自治体は、そもそもプラスチックリサイクルの費用対効果や実現性に懐疑的だ。
青森県弘前市は、08年度にプラ製容器包装の分別収集をやめ、可燃ごみとして回収することにした。
これで、プラごみの収集運搬などに年間で約8000万円掛かっていた経費をカットできたという。
担当者は「もしプラ製容器包装・製品の一括回収をしなければいけないことになれば、できると思うが、費用が掛かるのが心配」と述べる。
和歌山市は16年度に分別収集を廃止。
プラごみの収集運搬などに掛かる経費削減に加え、燃焼力が高いプラごみを燃えるごみに混ぜることで処理場の発電能力が高まり、合計で年間1億円以上の効果を生んでいるという。
担当者は「費用面などから、プラと燃えるごみの混合焼却がベストだ。今後も続けていきたい」と説明する。
また、プラ製容器包装の分別収集をしていない三重県内のある市の担当者は、容器包装・製品の一括回収案に関し、「ペットボトルのような単一のプラ素材でもリサイクルは技術的に簡単ではない。いろいろなプラ素材が混ざった状態で収集して、本当にリサイクルできるのだろうか」と実現性に疑問を呈する。
その上で、「リサイクルできず結局は燃やして熱回収するなら、市内の処理場で燃やしたい」と話した。
こうした声に対し、環境省などは容器包装リサイクル法の完全施行から約20年がたち、民間のリサイクル業者の設備投資が進展したと分析。
容器包装と製品を一括回収しても、リサイクルできる環境が一定程度整っているとみている。
さらに、基本的方向性案には、リサイクルの技術開発と社会実装に向けたインフラ整備支援を行うことも明記し、設備の一層の高度化を後押しする構えだ。
◇インセンティブで誘導
容器包装リサイクル法は市区町村に対し、プラ製容器包装の分別収集を行う努力義務を課しているが、実施の判断は各市区町村に委ねている。
容器包装・製品の一括回収も、実際に行うかどうかは個別に判断する仕組みとなる見通しだ。
基本的方向性案は「市町村に対するインセンティブ等を通じて、分別収集体制を全国的に整備する」と盛り込んだ。環境省などはインセンティブの具体化に向けた検討に入る。
参考ホームページ
1からわかるプラスチックごみ(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/special/news_seminar/jiji/jiji17/