市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

大同スラグ問題を斬る!…10月9日群馬弁護士会館でのスラグ汚染問題に関する毎日新聞記者の報告(その1)

2015-10-13 23:21:00 | スラグ不法投棄問題
■10月9日(金)午後5時から、前橋市大手町にある群馬弁護士会館の3階大会議室で、大同スラグ問題に当初から取り組んできている毎日新聞社記者の杉本修作氏を講師とした研修会が開催されたので、当会も聴取してきました。気鋭のジャーナリストだけに、要領よくまとめられた内容はこの問題を読み解くうえで大変参考になります。

 この研修会は、群馬弁護士会の平成27年度の公害対策環境補銭員会の勉強会として開催されたものですが、一般人も聴講できるとあって、会場には同弁護士会のメンバーのほかにも、当会を始め県内の市民団体の関係者らが多数、詰めかけました。

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司会:本日は「鉄鋼スラグに関する問題について」と題して、毎日新聞の記者である杉本様を講師としてお招きして研修をすることとなりました。一般の方も多数お見えになっておられますが、一応名目は当会のあくまで勉強会という名目で、具体的な活動とかそういった形に必ずしも結びつくものではありませんが、一緒に勉強したいと考えておりますので、この点についてはご了承いただきたいと思います。はじめに、本日の講師の杉本氏の経歴を紹介いたします。1977年静岡県生まれで、2002年に毎日新聞に入社し、2007年4月まで前橋支局で勤務されていました。当時は県警、県政、前橋、伊勢崎、渋川を担当されていたということです。その後東京社会部、大阪社会部で警察調査報道を担当。2014年4月からは、新設された調査報道部署特別報道グループに配属されています。具体的な活動例としては、今回の群馬県鉄鋼スラグ問題のほか、小渕優子経済産業大臣、それから西川公也農林水産大臣、当時ですけれども、政治とカネ問題等を取材されています。本日は貴重なお話がもらえると期待しておりますので、杉本様、よろしくお願いいたします。

講師:初めまして、ご紹介に預かりました毎日新聞特別報道グループの杉本と申します。失礼して着席させていただきます。私は、この大同特殊鋼の鉄鋼スラグの問題を、2年余にわたって取材をしており、始めた当初は大阪の社会部にいました。昔の群馬県渋川市にいる友人から、こういった問題が有るので取材に来てくれないかという要請を受けました。当初は、私費で新幹線に乗って、休みを使って、群馬県に来まして、で、当時は地元の記者も行政も、全くこの問題について全く取り上げていなくて、孤軍奮闘に近いような状況から、この問題を始めました、取材を始めたんですが、そうこうしているうちに地元議員の方々や市民オンブズマンの方々、その他いろいろな方々が協力していただいてくださるようになって、ようやく、先月11日に、群馬県警が、この問題について強制捜査をして、ようやく全国的なニュースになっていたという状況です。
 今回の、法律専門家の方々が多数いらっしゃるということなので、基本的な問題はそこそこにして、まさに法律家の手を借りたい方々が、今後たくさん増えるであろうと思われますので、そういった観点で、詳しく説明をさせていただけたらな、というふうに思っております。つたない説明になるかもしれないんですが、宜しくお願いいたします。
(1)鉄鋼スラグとは
 まず、もうここにいらっしゃる方々で、ご存知の方も多くいらっしゃると思いますが、鉄鋼スラグとは何ぞやということから、簡単に説明させていただきます。
 鉄を作ると炉の下にカスが溜まりますが、いわゆるそれが鉄鋼スラグの原料になるんですけれども、一口に鉄鋼スラグと言っても、鋼種、どんな鉄を作るのかによって、その中に含まれる有害物質等々が全然変わってきます。例えば、鋼を作るときに鉛を入れたりとか、そういった場合には、鉛が出てきます。ステンレスですと、錆を防ぐために、クロムという物質を入れるんですね。不純物を取り除くために、フッ化カルシウムという、ホタル石という物質なんですが、それを加えると、不純物が取り除かれるだけでなく、技術的な話で言うと、融点が下がる、つまり溶融を、容易にしやすくなって、要はコストが下がるんですね。蛍石を入れれば、低い温度で鉄が溶けるので、好んで使われていたわけです。
 特に大同特殊鋼の渋川工場は、世界に冠たる工場で、ロケットとか、航空機とか、果ては原子炉の部品などに使われている超高性能な鉄で、ステンレスで、いろいろな、主にクロムだとかフッ化カルシウムなんですが、化学物質を添加して、そこから出てくるスラグが、今回の問題の原因になっているということなんです。なので、鉄鋼スラグ、イコール、みんな六価クロムが出るんだとか、フッ素が出るんだとかいうことではないのですが、特に渋川工場の鉄鋼スラグは、そういった物質が多数含まれると。ちなみに、愛知県に大同特殊鋼の知多工場というのが有りますが、そこのスラグには、六価クロム等々は入っておりません。あちらは、環境基準を超えた場合には、全て処分をしているんですね。つまり愛知県で出されているスラグには問題がないのに、同じ会社で群馬県のほうでこういう問題を起こしていると。スラグ、後で説明しますが、何が原因なのかというと、簡単に言えば、愛知は基準が厳しくて、群馬は県庁の基準が緩かったから、こういった問題が起きてしまったという、これは別に行政批判でもなんでもなくて、愛知と群馬の基準の差が、今回の問題の原因でもあるということになる、というのを、後程、詳しく説明させていただきます。
(2)六価クロムとフッ素とは
 六価クロムとフッ素、特にフッ素なのですが、歯の再石灰化とかというので、虫歯予防などというふうに言われているんですが、危険物質だと言われ始めたのがこの17年くらい。ユニセフとかが警鐘を鳴らし始めたのが1990年代後半くらいだと記憶しています。もちろん、少量で、歯にいいというのは、そういう研究もあるようですが、過剰摂取は骨などに奇形をもたらすというのが、インドや中国の研究で明らかになっています。なんか向こうは、蛍石のようなものに、石灰を燃料に使って暖房にしていたようなんですけれども、それで過剰摂取した子ども達が、骨に異常が出始めたと。写真に載っているのはインドの子の例ですが、ちょっと分かりにくいですが、足が膝のあたりからグニャッと曲がっていると思うんですが、これが、背骨でそういうのが出たりとか、歯で出たりとか、そういう子どもたちがたくさん出て、フッ素もかなり有害であるということが、近年の研究で分かって来てまして、環境基準も設けられています。六価クロムは言わずもがなですが、各地で公害問題を起こしている物質で、鼻中隔穿孔という、江東区の日本化学工業の公害問題ではこの病気になる人がたくさんいらっしゃいまして、簡単に言うと、鼻の中に壁があるがんですが、その壁に穴が開いてしまって、右穴と左穴では奥ではくっついていますが、手前側の辺りで穴ができてしまって鼻水が止まらないという病気です。
 肺がん患者も出て、これは公害問題で民事上の訴訟を起こされて、たしか和解が成立していると思いますが、六価クロムはもう発がん性物質としてかなり認知されている物質です。いずれにしても大同特殊鋼のスラグには、この2つの物質が含まれていて、大変危険だというところをおさえていただけたらなあと思います。
(3)問題の経緯
 問題の経緯について説明させていただきます。ここに書かれている内容は、新聞記事等々にも出ていて、簡単な時系列をまとめたものなので、読みながら聞いていただきたいと思います。そもそも、角田さんという渋川市議さんが、遊園地のスカイランドパークの駐車場が膨らんで撤去する際に、環境検査もちゃんとしなさいと、土壌汚染対策法で3000平方メートル以上の土地の形状の変更をする場合には、都道府県知事が有害検査の試験をさせることが出来るという法律があります。それに則って試験をさせたら、2013年6月の渋川市議会で発表になったんですけれど、環境基準を超える六価クロムやフッ素が出てきたというのが、問題の始まりです。
 当事の記事を見ると、各紙小さいベタ記事みたいで、ちょっと問題が出ちゃったねというぐらいの取り扱いだったんです。これが、不作為によるものなのか、それとも、かなり企業の故意性が高いのかと、いうところが分かれ目だと思うんですが、取材をしてみて、企業が、どうも確信犯的に有害物質を含んでいるスラグを、排出し続けているんではないかというふうな思いに至ってですね、それで、取材を始めたというわけです。
 で、群馬県の廃棄物リサイクル課も同様の疑問を持って、我々に近いような思いで、廃掃法に基づく立入検査を翌年に行いまして、それで、その検査結果がようやく先ごろ出て、大同のスラグが廃棄物に当たるというような判定をしたわけです。
 ざっと説明したんですが、これは何故廃棄物なのかというと、それは、有名な、おから訴訟というのがあります。おから裁判・・・刑事事件だったのでおから裁判ですね。豆腐のカスのおからが、果たしてゴミなのか有価物なのかという裁判が昔、起きまして、刑事事件で元々は、豆腐屋さんがおからはもともと有価物だから、ゴミじゃないので、おからを生産する際には、廃棄物処理の資格はいらないんだというふうに言い張った豆腐屋さんがいまして、おいおいそれはダメだろう、おからはゴミなんだから、製品に処理する際にはちゃんと廃掃法の資格がいるだろうと、いうところで、裁判になって、最高裁はそのおから屋さんを、廃掃法違反だというふうな判定をしたんです。その訴訟が、平成11年3月10日に、最高裁判決が出まして、それで、その時の裁判所の判断で、そのものが、ゴミか、それとも有価物なのか、という時には、すいません、細かな話を申し上げて。そのものの性状、排出の状況、通常の取り扱い形態、取引価値の有無、および事業者の意思等を総合的に勘案して、これがゴミか、有価物かを判断しますというふうに最高裁が判断して、この場合のおからの場合は、典型的に言うのは、引取り料と称して、普通、有償のものであれば、そのおからは、もう、引き取る人が、おカネを払って売買が成立するはずなんですが、引取り料を支払っていたと、いわゆる逆有償というものですが、それをやっていたから、それはゴミの取り扱いではないか、というのが最高裁の判断のひとつの基準になりました。その判例以降、逆有償というのが、ゴミが有価物かという判断するときに非常なひとつの判断材料になると、いうふうになったのです。
 今回の大同特殊鋼も、実は後述するんですが、スラグの取引がされる、いわゆる逆有償取引というのをしておりまして、そこの辺を群馬県は重く見て、これは廃棄物であろうというふうに判断したんですね。
 資料をちょっと見ていただきたいのですが、契約書類の、スラグ混合再生路盤材の製造販売等に関する契約書という資料の5頁がございます。
 それで、この第6条のところをご覧になっていただきたいのですが、甲は丙に対して云々とありますが、甲は大同特殊鋼で、丙はこのスラグを購入した佐藤建設工業という資材会社です。月額25万円を販売管理料として支払うと。それで、1トン当たり260円・・・月額25万円を支払います。で、第2条を見ていただいたいのですが1トン当たり100円を販売価格と支払いますとあります。簡単にいうと、100円を支払って、すいません、佐藤建設工業は大同に100円を払います。そのお礼として、大同特殊鋼は佐藤建設に販売管理料名目で260円払いますと。そうすると取引されるごとに150円ずつ、佐藤建設工業は引き取れば引き取るほど儲かるという仕組みになっておりまして、これがいわゆる逆有償取引ということです。当初は、儲けは150円だったんですが、これがどんどん契約書が改定されて引き取れば引き取るほどどんどん儲かるようになったんですね。
 で、これをやってしまうと何が問題かというと、佐藤建設の立場からすれば、資材を使うあてもないのに、どんどんどんどんスラグを引き受けて、引き受ければ引き受けるほど逆有償でおカネが儲かると。どんどん山積みになっていくわけですね。で、使うに困って、結局は八ッ場ダム等々で認められていない場所にスラグを使って、今回、有害物質が出て問題になったという流れになるんです。結局、根本は大同特殊鋼が佐藤におカネを払って引き渡していたという、それは全ての問題の始まりなんですよね。廃棄物処理の典型的な問題で、群馬県がそれを廃棄物と認定したのも、合理的に考えて、正しい判断じゃないかなと思います。
 先ほどの最高裁判例の後で、環境省が、各都道府県に通知を出すんですが、それが7ページにあります。実はここに、土質の性状、ア、イ、ウ、エ、オと書いてありまして、これは各基準で、これは正に最高裁の判断に基づいて、こういうふうな基準を環境省は各都道府県井通知していたんです。○×○とか、左側に描いてあるのが分かると思いますが、これは私が別に描いたわけではなくて、大同特殊鋼の担当者のこれは内部資料で、大同特殊鋼の担当者が、自分たちの判断で、これは○なのではないか、これは×なのではないか、とりあえず○とか、描いてあるんですが、いかに彼らが、この基準をかなり意識して、今回の問題に手を染めていたかというのが分かると思います。
 ゴミかゴミじゃないかの判断というのを、大同は相当意識して、今回こういうことをやっていた。その一つが、例えば、大同特殊鋼のスラグは、特に最近のスラグは、ただ単純にスラグだけを・・・スラグというのは砂利の形状をしていますが、ただ単純にスラグだけを流通させていたのではなくて、そこに、天然砕石を混ぜ合わせて、ブレンドさせて、天然砕石とスラグの混合物として販売するわけです。それ、どういう意味があるかというと、スラグだけを検査してしまうと、有害物質が環境基準を超えてしまう。だから、天然砕石と混合させることによって、彼らの言質でいえば、有害物質の低減化を図っているという趣旨なんですが、環境省は、希釈を目的として、例えば液体でも、硫酸みたいなものとかを水と混ぜて、有害性を薄めて排出するという手法を禁止しています。まさに環境省でも禁止している典型的な手法なんですが、それを今回やって、検査をすり抜けていたと。検査をすり抜けてきた・・・すり抜けているので、行政は、一見したら、検査を測ったものは数値以下になったので、それをそのまま使うのを行政も許可していたと、いう状況なんですよね。だから、大同特殊鋼と佐藤建設との間で、逆有償で始まったことに、国交省や県もお墨付きを与えて、使用させていたと、いうような構図が浮かび上がってきます。
 問題の経緯は、ざっとそういうところです。
(4)問題の構図
 それで、この取材をする時に、本当に大変だったのが、先ほど群馬県廃棄物リサイクル課は、かなり協力的に情報もいろいろと交換をさせていただいていたんですが、国土交通省とか、あと、群馬県の県土整備部は、やっぱり事実の全容解明に消極的でした。私が、ここは住民の敷地内に、スラグが、八ッ場ダムの移転代替地で使われているんですとか、再三再四、国交省に言って、危険なので撤去したほうがいいですよ、と言っていたんですが、国交省からは、「君らが捲いたんじゃないのか」とか、そういうことを言われました。
 それで、まともに取り合ってもらえなくて、出来たら、記事を書く際には、「国交省も調査を始めた」とかっていう、一つ前向きな形の記事を書きたいと思って、複数回にわたって国交省とやり取りをしました。けれども、皆さん、なんというか、我々や、一緒に活動している方々が“故意にやった可能性がぬぐえない”ということを何度も言われました。
 あとは、ちょっと住民の方からもお声をいただいたんですけれども、「毎日新聞が勝手に石を拾って、有害だ何だと騒いでいる」とか、この本筋と違うことで、論点をそらすなどして、なかなか前向きに取り組んでいただけませんでした。で、記事を去年の8月5日に、八ッ場ダムで、無許可で使用されているんだと、住民移転代替地で、無許可で使われているんだという記事を書かせていただいて、なんかようやく潮目が変わって、地元の方々はまだまだ不満が有るんでしょうけど、一応国交省が調査を始めて、そして問題がかなり動いて、その流れでようやく、群馬県警の捜査というところまで至ったのかなと思います。逆に、我々や議員の方々や市民団体の方々が騒がなければ、できれば行政は、隠しておいた方が良かったという問題なんだろうなというのは、取材をしていて、残念ながら思わざるを得ないかなと、いうところでした。
(5)今後の展開と残された課題
 余り過去の問題を叩いていてもしょうがないので、これからの話を中心に、ちょっとこれから話していきたいと思います。
 捜査が動いたら万々歳だということではなくて、むしろ、これから大変な問題が出てくるのではないかと思います。で、まず、被害の全容がはっきりしないんです、特に今、行政は、ある程度公共工事で使った箇所がトレースできているので、ここで使われているんじゃないかというのが、ある程度把握できているんですけど、どうやら民間工事で大量に使ってまして、これが、大同が、例えば、古い例だと友人に発もまれて、大量に使って、大同自身もどこにどう使われているのか分からないという。民間駐車場で使っているんですね。言われて初めて大同が気付いたとか、そういうケースがたくさん散見されています。大同自身が、どこでどう使われているのか把握できていないという。特に、ここ5年くらいを考えれば、有害物質で気にするのはフッ素だけでいいんですけど、10年前、15年前、もっと20年前、30年前のものになると、六価クロムがかなり検出されているものが多くなります。六価クロムとなってくると、フッ素と較べると、気にしなくてはいけないレベルが変わってきます。
 その辺が、ようやく大同が、電話相談窓口を今、開設しまして、情報提供を呼び掛けている状況に至っています。それで、これから民間の使用状況がどんどん明らかになって来るのではないかなと思います。それで、佐藤建設工業の受注歴を見ると、民間工事も多数受けていて、例えば駐車場の敷地とか、コンビニの駐車場の敷地とか、あとは、佐藤の前に付き合っていた建設会社が、昭和村で何かデカい企業の駐車場を施工していて、そこでスラグが使われているとか、そういう話もいくつか出ています。
 それで、これから、公共工事よりもむしろ民間工事で、民事上のさまざまな問題が出てくるのではないかと私は思っています。

 その例として、これは、榛東村にTさんというかたがいらっしゃいます。一見すると木造2階建ての普通のお宅、古い立派な瓦葺きのお宅かと思うんですが、簡単に説明すると、この方がTさんで、この方が長岡技術科学大学のM教授という方です。実はこの方にこの家を、私が連れて見に行ってもらったんです。この方は何が専門家かというと、実はスラグの膨張の専門家です。スラグと言うと有害物質の話ばかりが取り沙汰されているんですが、実は、スラグにはもう一つ怖い特徴があります。それが、膨らむという特徴なんですね。もっと言うと、水を含む、水和反応というんですけれども、これはもう科学的にも立証されていて、スラグには石灰が付いているので、その石灰が水和反応を起こすと。M先生によると、10%最大で膨らむそうです。例えば、このくらいの、1センチのものなら1ミリ膨れるし、1メートルのものなら10センチ膨らむんですね。最近のスラグは、膨らまないように膨潤・・・エージング処理というものを行っているので、過去の、昔のものよりもいくらか膨らまなくはなっているんですけれども、それでも例えば昨年10月に、名古屋市の上下水道工事で使われたスラグが膨らんで、道路に220箇所亀裂が入るという問題も起きたりしています。
 スラグをやはり完全に膨らむのを抑えることは、なかなか難しいというのが現状です。それで、Tさんの家を見てみます。こういう状況なんです。分かりにくいかもしれませんが、これは、天井に亀裂が入っている様子ですね。


 で、これなんですが、・・・これは縁側なんですね。これは奥の方。これはもともとくっついていたんですね。ところが、母屋が膨らんで、こちらは下がってしまった。10数センチの隙間が空いているんです。ここが一番わかりやすいんですけど、実は写真にすると膨らんでいる様子がうまくわからないです。要は家の真ん中がこういうふうに膨らんでました、家の端っこが全部下がってきていまして、結局壁が引っ張られるため、外壁の至るところに亀裂が走っています。それで、どんどん家がこういうふうに下がってきてしまっているんですね。家の周りが。それをTさんも実は建築屋さんをやっていて、そうならないように梁を地下に・・・軒下に梁をいっぱい、鉄筋の梁をたくさん通したんですが、その梁が曲がってしまうくらいの力。どんどん、と今も隆起が起こっている、どんどん進んでいる状況です。このお宅は30年前に、大同特殊鋼からスラグを家の盛土材として、無償で提供を受けまして、それで、正確に言うとTさんの先代のお父さんがこの家を新築する際に無償で提供を受けて、大同に、トラック何百台分ぐらいのスラグだったらしいんですけど、それを家を、高台にこういうふうに家を造りたくて、その盛っている部分を全部スラグで作ったわけです。そしたら10年ぐらいしてから、スラグの隆起が目立ち始めて、私も行ってみたんですけど、凸凹になっている状態です。
 で、因みにここのスラグを測ったら、専門家に鑑定してもらったらスラグであることは間違いなくて、しかも、環境基準を超える六価クロムやフッ素とかが検出されていて、有害性もあるんですけれども、それ以上に家ががたがたしてしまっています。もう、ちょっと、住んでいる状況が・・・よく住んでいるなという状況になってきてしまっているんですね。
 スラグは、有害物質だけではなくて、こういう膨張の危険もあるんですね。それが今、ちょっと私が一番心配しているのが、実は八ッ場ダムの移転代替地で、実は国交省がこの間、調査をしたと発表しているんですけど、調査した箇所は、国の管理地に限られていて、その隣に、もう宅地で分譲している場所があります。そこは住民の方がおカネを出して国交省から買っているわけです。その、買った土地を、国交省は「民有地だから」といって、ほとんど検査をしていないんですね。よほど要望があったところ以外は。それで、検査をしていないので、そこの下にスラグが使われているのかどうか、実は分からないんですよね。ただし、確実に言えることは隣ではスラグが見つかっているので、使われている可能性が、私は極めて高いと思っているんですが、国交省が、そこを調べてしまって、万が一出てきたら、おそらく大変な問題になるということが分かっているので、全然調べる気も無いようです。それで、有害物質は、百歩譲って、地中に眠って水質の心配とかもあるんですが、国交省が水質をしっかり検査して、絶えず、土壌環境検査を継続して行えば、ある程度の不安は解消できるかなあと思います。しかしこの隆起の問題は時限爆弾のように10年後、20年後に、八ッ場ダムの移転代替地で出てくるかもしれないんですよね。
 で、Tさんの自宅は、さきほどのM先生によると、水平方向に10数センチ動いて、上に5センチくらい盛り上がっているらしいんです。だから、相当動いているんですけど、ただ、家は、2、3センチ動くだけで、もう家として建てつけが悪くなったり、よくゴルフボールが転がるとか、そういった被害というのはもう数センチ動くだけで起きているんですね。仮に八ッ場ダムの移転代替地が、ここまでの量を使っていなくても、先ほど言ったように最大で10%盛り上がるということを考えると、八ッ場ダムの家が、同じような、ここまでひどくなくても、家にクラックが入ったりする状況になるというのは十分考えられます。国交省も問題を先送りしたいのでしょうけれど、これを、例えば10年、20年して、八ッ場ダムの地域の人たちのお宅の外壁にクラックがたくさん入り始めるといったことになった場合に、誰が責任をとるのかという問題が出てきます。これも、ダムに賛成だ反対だという問題ではなくて、本当は、正面から取り組まなければいけない問題だと思います。しかし、なかなか、国交省の当時、住民の信頼関係がまだ厚いので、今まだあまり住民の人たちが声を上げている方々が少ないんですけど、今私が一番懸念している問題です。今後、そのようになってくる可能性があります。
 話が前後しますが、先ほどのTさんは、大同から30年前に、スラグをもらって、こういう状況になったので、民事訴訟をするのもかなり不利なんだろうなと。専門家のかたがたがここにいらっしゃるのですが、ただ、ご本人はスラグが膨らむものだというのは、知らなかったのと、大同から説明も受けていなかったのと、有害物質が含まれていないという説明だったんですが、明らかにフッ素が含有されているし、周辺土壌から微量な六価クロムも検出されていて、何とか助けてあげたいなと、私は個人的に思っています。今、大同特殊鋼の相談ダイヤルに電話をして、大同と今、電話でちょうどやり取りしているところなんですが、もしここにいらっしゃる弁護士の先生で、法律的な見地から、アドバイスをしていただける方がいらっしゃったら、大変ちょっとお困りで、奥さんが、平衡感覚がおかしくなって、もう頭痛持ちになったり、そういう状況もあります。もし、何か法律的な助言をいただける方がいらっしゃったら、相談に乗ってあげていただければと、この場を借りてお願いなんですけど。
 これから民間の問題がいろいろ出てくると思うですが、一方で、責任の所在。どうも国交省とかは、今、一義的には被害者だと言っているようですが、大同が、どこまでおカネを払うのかというところで、今は低姿勢で大同もいるんですけども、本当に、必要な費用が、大同特殊鋼が負担するのか、或いは負担できるのか。例えば大同特殊鋼が、群馬県内で使ったスラグを積算すると・・・全部撤去すると大体200億円くらいおカネがかかるようなんですよね。で、この費用を、大同が本当に全部負担できるんだろうかという問題も有るんですね。それから使われている場所が、家とかだけじゃなくて、皆さんの利用されている上武道路とかでたくさん使われたので、上武バイパスを通行止めにしてスラグの撤去をしようということになると、住民の生活にもなかなか影響があるということで、国交省も群馬県も、本音では撤去の量は必要最小限度に抑えたいというのが本音なんですね。
 で、私のスタンスは、なかなか難しいんですけど、まずは表面に出ているもの、これは経口摂取というか、口から粉塵が入る可能性があるので、そこはもう速やかに撤去すべきだと思います。

 具体的に言うと渋川市内で、そういった場所が何十カ所もあります。公園とか、小学校とか、小学校の駐車場とか、そういう市民生活に重大な影響を及ぼす場所で、アスファルト舗装をしていない、表面にむき出しの砂利の状況でたくさんスラグが今、放置されています。渋川市の試算だと8億7千万円が、撤去するのにかかるらしいんですけど、市から財政支出が出せないということで、今も放置されているんですね。
 だから、こういったのは、カネの出所がどうだということではなくて、公害問題になる前に、早く撤去しなければいけないなあというふうに思っているので、そういった場所はまず速やかにやってほしいと。で、道路に使われているものについては、市民生活の影響を考えると全て、即、撤去というのは難しいのでしょうけど、ただ、さっきの膨張を考えると、そう遠くない時期に結局は撤去せざるを得ない状況に来るのではないかと私は見ています。
 まさに県の担当者が、検査の結果をまとめて、刑事告発をしてからが大変だというふうにおっしゃったんです。今、県のほうにいろいろな方から電話がたくさん来て、「うちで使われているのはスラグではないのか」とか、「道路の傍に住んでいるんだけれど」という問い合わせたくさん来ていて、これからそういった住民の人たちの、撤去を求める声とか、不安の声とかというのはたくさん上がってくると思います。県もそこをすごく心配しているというと、違うんでしょうけど、そうなることを想定して、かなり、体制を組んでいるわけですけど、警察が捜査をしたのがむしろ始まりで、これからたくさんいろいろな問題が、出てくると思いますので、法律の専門家の方々を始め、住民の方々もぜひ注視していただいて、問題の解決に一緒になって取り組んで行ってほしいなというふうに思っています。
 まとまらない説明で申し訳ありませんが、私からの説明はこの程度で終えます。この後、質疑などをさせていただきたいと思います。どうも有難うございます。(拍手)
**********

【市民オンブズマン群馬事務居からの報告・この項続く】

※配布資料
○大同特殊鋼鉄鋼スラグ問題 説明資料→
20151009xouwilj.pdf
○ルポ「循環型社会」の裏側→
20151009xoulilj.pdf
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