市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

大同スラグ問題を斬る!…原因者の大同様に本当に負担を求められるのか、渋川市に問われる有言実行

2015-10-26 23:39:00 | スラグ不法投棄問題

■連日、マスコミには大同スラグの文字が躍っています。特に、先の土日は、新聞各社がスラグ報道を加熱させました。10月25日の毎日新聞に続いて、同日の地元紙の上毛新聞にも、「渋川のスラグ」と題する記事が掲載されました。こちらも見ていきましょう。


**********上毛新聞2015年10月25日社会面
2015n1025v.pdf
渋川のスラグ 市、処理費を請求へ
大同特殊鋼に 年内にも対策工事

 渋川市が、市内公共工事に使われた鉄鋼スラグの対策費用について、排出元の鉄鋼メーカー、大同特殊鋼(名古屋市)に請求する方向で調整していることが24日分かった。これまで路盤材など市施工分で72か所での鉄鋼スラグの使用が確認されており、近く行われる国、県との連絡会議を踏まえ、年内にも対策工事に着手したい考え。各施工場所の状況に応じて、撤去やアスファルト舗装、盛り土など必要な対策を順次行っていく方針。
 鉄鋼スラグをめぐっては、およそ2年前に市がスラグを使った公共工事で環境基準値を超えた有害物質が検出されたと公表したことから問題化。当初は、市は施工当時に有価物として手続きを取っていたとして大同側に処理費用を請求しない方針だったが、県が実質的に廃棄物にあたると判断して刑事告発し、県警が家宅捜索に踏み切ったことなども踏まえ、請求する方向で協議に入った。大同側は市に「誠意を持って対応する」と答えているという。
 市は、72か所の施工場所について、いずれも「直ちに健康に影響を与えるものではない」としているが、市民の不安を取り除くため早急に対策工事に取り組む準備を進めてきた。ただ、鉄鋼スラグは県内各地で使用されており、各自治体と歩調を合わせ統一的な見解、対応を取らなければ混乱が生ずるとの考えから、国、県の判断を待ってから対応する方針を示してきた。
 一連の問題に対し、市議会は市民の声を受け6月定例会で早期措置を求める決議案を可決している。市も対応を急ぎたい方針だが、最終的な判断の目安となる国、県との連絡協議会の協議内容などから、対策工事の開始時期については流動的な要素もある。
**********

 このなんとも、がっかりな中途半端な報道記事のポイントをいくつか挙げてみましょう。

①渋川市が、つい最近まで大同有害スラグを有価物として取り扱ってきたこと。しかし一転して大同に撤去等の対策費用を請求する方針であること。

②いまだに「混乱が生ずるとして「国、県の判断を待って対応する方針」などと、のたまっており、この“方針”なるものが、二度も紙面で協調されていること。

③6月に市議会で早期措置の決議が可決されているが、市も対応を急ぎたいとしながら、今のところ何の行動もとられていないこと。


◆ポイント①について

 渋川市は、住民からスカイランドパークの路盤材を原因とする補修費用について、住民から監査請求や住民訴訟が提起されても、これまで一貫して争う姿勢を示してきました。住民の声に耳を傾けることなく「大同様ご機嫌おうかがい主義」に基づいて、大同様の御為に気を遣ってきたのでした。
 そのことに対する反省をしたり、責任を取ったりすることもせず、群馬県がスラグを産業廃棄物として判断したことから、渋々、大同様にスラグ対策費用を請求する方針をちょっとだけ仄めかしただけです。
この報道の残念なところは、まだまだ「請求する方向で協議に入った」だけであり、どんな条件が具体的に示されるのかは未知数であること、そして、方向転換前の責任追及に一言も言及していないこと、そんな中途半端な報道内容であることです。

◆ポイント②について

 渋川市は、この期に及んでまだ「直ちに健康に影響を与えるものではない」などという釈明の文言を紙面の中央に鎮座させており、全く潔さが見られません。さらには、「鉄鋼スラグをめぐっては、およそ2年まえに」などと、この問題が長期に及んでいる状況を平然と解説する始末です。2年余りも放っておきながら、渋川市は、「直ちに問題はない」などと未だにノンビリ構えているのです。もう十分、健康に被害を与える時間を費やしています。
 渋川市では、大同特殊鋼に「撤退するぞ」と脅されてから、有害スラグの不法投棄に自ら積極的に係ってきたとしか思えない行動をとっています。分かりやすく言うと、「大同様ご機嫌おうかがい主義」により行政が動いてきたのです。県が大同スラグを廃棄物と判断した現在でも「国、県の判断を待って対応する方針」で渋々対応せざるを得ない、ということを大同様にアピールしているかのようです。「だから大同様、なにとぞご機嫌を損ねないでくださいね」と気を遣っている様子がうかがえるのです。
 例えば、国はすでに八ッ場ダム工事などで一部撤去を始めています、「国、県の判断を待って対応する方針」するのであれば、既に先行して一部撤去をしている国を見習って、せめて子ども達が集まる学校の近くの有害スラグの撤去を優先的に行い、フレコンのような袋に入れて、大同様に預かってもらうなど、飛散防止のための応急対策をとることぐらいは可能なのではないでしょうか?この報道にある渋川市の「国、県の判断を待って対応する方針」は、一部のスラグは直ちに撤去できる状況にあるにもかかわらず、それをしないという自らの怠慢を棚に上げて、事態を深刻に捉えよとしない体質を表していると言えるのです。

◆ポイント③

 渋川市議会では、今年6月に有害スラグ早期措置の決議が可決されています。この決議をもってすれば、ポイント②で述べたように、国のスラグ一部撤去に準じて、せめて学校のスラグを取り除く対応はできたはずです。この報道によれば、渋川市は「市も対応を急ぎたい方針」とありますが、これまでの対応を見れば、とりあえずの口から出まかせとしか思えません。「直ちに健康に影響を与えるものではない」を繰り返し言うだけで、住民の健康被害をないがしろにしたまま、徒に時間を浪費しておいて、「市も対応を急ぎたい」とは良く言えたものです。

■今回の記事の情報発信源が渋川市の誰なのかは明らかにされていません。渋川市がとりあえずこうした情報をマスコミに流しておいて、自らの怠慢さをさらに先延ばしにするための方針であれば、これほど市民を愚弄する自治体もないでしょう。それを打ち消すには、有言実行しかありません。

【市民オンブズマン群馬・大同有毒スラグ不法投棄特別調査チーム・この項続く】

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大同スラグ問題を斬る!…民間工事向けで新たな火種(1)「榛東村の宅地造成地盤に大量の生スラグ」

2015-10-26 01:40:00 | スラグ不法投棄問題
■連日、マスコミには大同スラグの文字が躍っていますが、10月25日の日曜日の毎日新聞朝刊に、大同スラグの膨張の影響とみられる民間住宅の傾斜や亀裂に関する記事が掲載されました。この事件については、10月9日に行われた毎日新聞の杉本記者による講演の中でも触れられていました。さっそく記事を見てみましょう。

**********毎日新聞 10月25日(日)9時0分配信
<鉄鋼スラグ>膨張、住宅傾斜…盛り土、雨水吸い 群馬

母屋隣の資材置き場の床に生じた亀裂=群馬県榛東村で2015年7月9日、尾崎修二撮影
 大手鉄鋼メーカー「大同特殊鋼」(名古屋市)の渋川工場(群馬県渋川市)から排出された有害物質を含む鉄鋼スラグを巡り、新たな問題が浮上した。群馬県の宅地の盛り土に使われたスラグが雨水などで膨張し、家が傾く被害が起きている。国が同県長野原町で建設を進める八ッ場(やんば)ダムの住民移転代替地にもスラグは無許可で使われており、専門家は「スラグの宅地利用は危険が伴う」と警鐘を鳴らしている。【杉本修作、尾崎修二】

宅地の地盤が隆起し、縁側のコンクリートは母屋から約14センチも動いている=群馬県榛東村で2015年7月9日、尾崎修二撮影


被害があった住宅の位置
 スラグを宅地に利用したのは、同県榛東(しんとう)村山子田の建設会社社長(56)の木造2階建て住宅で、先代の父親(故人)が30年前に新築した。社長によると、父親の友人で渋川工場に勤める男性の紹介で、敷地を高くする盛り土材としてスラグを譲り受けた。約2000平方メートルの土地に3~5メートルほど盛ったという。
 ところが10年ほど過ぎると外壁にひびが入り、戸口の建て付けが悪くなり始めた。さらに床が数カ所で数センチ隆起し、基礎のコンクリートにも大きな亀裂が生じ、母屋とコンクリート製縁側の間には十数センチの隙間(すきま)ができた。隆起やひび割れは今も進行しているという。
 鉄鋼スラグのうち、特殊鋼の精製で排出されるものは「製鋼スラグ」と呼ばれ、これは水と反応して膨張する性質がある。道路で利用するスラグには日本工業規格(JIS)で膨張率に基準(1.5%以下)が設けられ、JIS策定委員を務めた長岡技術科学大の丸山暉彦名誉教授(道路工学)によると、スラグに機械で蒸気を掛けるなど膨張を抑える処置をしなければ、最大で10%以上膨張することがある。社長宅を視察した丸山氏は、スラグが原因とみて間違いないとしている。
 毎日新聞は社長宅のスラグを採取して国指定の専門機関に鑑定を依頼。環境基準の7倍を超える有害物質「フッ素」が検出された。また、東京農工大の渡辺泉准教授(環境毒性学)の研究チームが別途採取した周辺土壌からは微量の発がん性物質「六価クロム」も検出された。渡辺氏は「六価クロムは自然界になく、スラグによる土壌汚染が起きている」と指摘した。
 渋川工場のスラグは八ッ場ダムの住民移転代替地などに無許可で使われ、国土交通省の調査で有害性も確認された。スラグが見つかった代替地の近くには既に住宅が建っているが、国交省は「民有地」を理由に宅地の調査をほとんどしておらず、宅地の真下に使われている可能性もある。
 丸山氏は「JISで認められたスラグはそもそも宅地での利用を想定してなく、使うのはリスクを伴う。宅地で使われた可能性があるなら、国は異常の有無を継続的に監視すべきだ」と指摘。国交省関東地方整備局は「移転代替地の今後の調査について住民の要望や宅地の状況などを考慮して判断したい」としている。
 大同特殊鋼総務部は「(社長宅の)スラグが当社製のものかは確認できていない。要望を詳しく聞いた上で対応を検討したい」とコメントした。
 渋川工場のスラグを巡っては、建設資材の取引を装った廃棄物処理法違反容疑で群馬県警が先月、強制捜査に乗り出している。
**********

■杉本記者が講演で語った通り、今後、民間工事向けに不法投棄されたスラグの影響による民事問題が多発することが懸念されています。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
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