どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

塩ふきうす・・宮崎

2025年03月02日 | 昔話(九州・沖縄)

      宮崎のむかし話/宮崎民話研究会編/日本標準/1975年

 

 めずらしいうすを盗んだ男が、うすから塩を出させたのはいいが、とめる言葉を知らなったので、うすが いつまでも塩を出し続け、海の水がしょっぱいという話。このうすを手に入れるところが面白い。

 船に乗りたいと思っていた太郎という男が、同じ村の出身で、船長をやっている男にたのみこみ、船の掃除係になった。

 何日かの航海の後、港につくと、船乗りたちは、陸に上がり遊びに行った。太郎がぼんやり船に残っていると、船長から遊びにいってこいと言われ、港の町へでかけたが、どこへ遊びにいっていいか、さっぱりわからない。

 ぶらぶら歩いていくと、ばあさんから、「うちであそんでいきなされ」と声をかけられた。このばあさんは、太郎を自分の子どものようにかわいがって、なんでもほしいものを食わせるという。太郎が、「ウナギというものを食べてみたい。」というと、おばあさんは、ひきうすをとりだし、「さあ、ウナギでろ。ウナギでろ。」と、うたをよみとなえた。
 さっそひきうすからにょろにょろ出てきたなんびきものウナギをごちそうになった太郎が、お礼を言って、船に帰ろうとした。
 ところが、ばあさんは、「わたしはもう年寄りじゃけん、このひきうすはいらんかい。おまえさんにあげよう。」という。太郎が目を白黒させていると、「このひきうすには、使い方のうたよみがあるんじゃ。はじめに、なにそれだしてくれひきうすさん。というて、なにそれがでてくると、ありがとう、ありがとうと、あたまをさげにゃいかん。」という。太郎はひきうすの使い方をならって、そのひきうすをもらって、船に帰った。

 それから何か月後、戦争がはじまって、こちらの国が負け戦になった。太郎は、兵隊をうんとだしてやったら、殿さまがよろこぶかもしれんと、「兵隊でろ。兵隊でろ。」と、うたよみのまじないをとなえた。すると、ひきうすから兵隊がたくさん出てきて、敵をやっつけた。太郎は、殿様が ほうびをとらせようというのを断ったが、これに目をつけたのが船長。

 このころ塩の飢饉で、塩をこしらえたら、ぎょうさん金もうけになると、太郎のひきうすを盗み、「塩でろ。塩でろ。うんとこさ。ぎょうさんでろ。」と、叫びつづけた。だが、船長は、うたよみのまじないも、おれいのことばもいわなかった。だから塩はふきあげるばかり・・・。」