医師・岡本議員が政務官に、厚労省の新政務三役決定
9月17日に改造菅政権が発足し、厚労大臣には、長妻昭・前厚労相体制下での副大臣だった細川律夫氏が就任、副大臣、政務官も9月21日の閣議で決定。
厚生労働大臣:細川律夫氏
厚生労働副大臣:藤村修氏、小宮山洋子氏
厚生労働大臣政務官:岡本充功氏、小林正夫氏
細川大臣は、民主党が野党時代の2007年の国会に「法医科学研究所法案」「非自然死体の死因等の究明の適正な実施に関する法律案」を提出しています(民主党のホームページを参照)。これらの法案は、死因究明という点では医師も関係しますが、犯罪見逃し防止が主眼です。副大臣時代は、労働関係を担当した細川大臣は、経済対策、国際社会における活動、地域主権の三つを重要課題とする菅政権にとって、雇用対策を期待した起用でしょう。医療・介護を主に担当するのは、藤村副大臣、医師免許を持つ岡本氏の二氏。
細川大臣以外は、入れ替えになった中、霞が関からは、「細川大臣は副大臣時代、医療問題にほとんど関与せず、医療に精通しているとは言えない。新副大臣、政務官も含め、新たにレク(三役への各種施策等に関するレクチャー)を一からまたやらなければいけないのか…」との嘆息も聞かれます。
医療分野では、後期高齢者医療制度の見直しや予防接種法の改正など、継続課題が山積。また2012年春の診療報酬と介護報酬の同時改定を皮切りに、超高齢社会にふさわしい医療・介護制度の構築に向け、将来を見据えたグランドデザインを描く重要な時期にあります。医師である岡本政務官には、専門家としての見地を踏まえた活動が期待されますが、衆院選で当選3回ながら、まだ39歳。財務省や医師会などと、どう渡り合っていけるか、交渉力などの実力は未知数。
同じ民主党政権であっても、短期に体制が変わる中、医療界は政治とどう付き合っていけばいいのでしょうか。9月19日開催された「医療再生フォーラム21」の第1回シンポジウムで、医師で民主党議員である梅村聡氏は、今夏の参議院議員選挙で、日本医師連盟が推薦もしくは支援した3人の候補(医師)が落選したことに触れ、「医師・医療者が今後活動していく際に、政治とどう向き合うかを改めて考える必要がある」と語っています(詳細は『「医療崩壊の第二の原因は医療者自身」、医師の自覚と協力呼びかけ』を参照)。シンポジウムの最後に、今改定のユニークなエピソードも明かしています(文末を参照)。
また18日の内保連・外保連・看保連による「第6回三保連合同シンポジウム」では、厚労省保険局医療課企画官の迫井正深氏が基調講演、今春の診療報酬改定で難易度が高い手術料が30%から50%アップしたことについて、「点数配分に当たっては外保連試案を活用したが、外保連試案で手術料の絶対水準が上がったわけではない」と説明(医療維新の記事はこちら)。財源という大枠は、政治マターで「アナログ的に決まる」(梅村氏)ということですが、医療界としては、データ、エビデンスを基に、関係者への説得・理解を得る活動を続けるのがやはり基本と言えるでしょう。
◆9月19日の「医療再生フォーラム21」第1回シンポジウムの梅村議員の発言(抜粋)
「今日は、皆さんから格調高いお話をいただいたが、永田町は必ずしも格調は高くはない。そこをどう説得していくかが非常に大事な点。(10年ぶりのネットでプラスとなった今春の診療報酬改定の)改定率0.19%という数字も、ものすごくアナログ的な決め方をしている。0.19%と決まったのは、12月23日。その前日、私が散髪していた1時間の間に、ある政府側の人から3回留守電が入っていた。その留守電を聞いたら、なぜか長妻さん(前厚労相)の声だった。『プラス改定ができない。何とか平野官房長官(当時)ルートをこじ開けてくれないか』と。平野さんに電話したら、確かに言っているような数字だった(編集部注:恐らくマイナス改定の数字)。それはマニフェストとは違うではないかと。そこで、いろいろな議員に、『平野さんの携帯を鳴らせ』と。その結果かどうか分からないが、次の日に出てきたのがあのような(0.19%増)数字だった。
我々は野党の時代は、『このような理由でこれくらいの医療費が必要、こうした人材が必要だ』などと主張していたが、与党になり、実際に政策決定過程を行う時は、やはり人。良し悪しは別だが、そうしたアナログな方法で政策は決まっていく。今日の皆さんの思いを、これをどう政策に移していくか、今私の中で必死に変換している」