「ずば抜けたIT知識」 容疑者知る省幹部 マイナンバー収賄
行政・政治 2015年10月14日 (水)配信朝日新聞
動き始めたばかりの「マイナンバー制度」。その仕組み作りの段階で、準備に関わっていた厚生労働省職員の汚職事件が発覚した。個人情報の悪用や外部流出が不安視される中、業者との癒着が繰り返されていた可能性も強まっている。▼1面参照
収賄容疑で警視庁に逮捕された厚労省情報政策担当参事官室の室長補佐の中安一幸容疑者(45)。関係者によると、医療や社会保障分野の情報化の第一人者で、厚労省幹部は「省内でもIT知識はずば抜けている。医療現場も経験し、その筋では有名人だった」と話す。
高校卒業後の1991年に入省し、兵庫県内の国立病院に勤務。本省勤務となった2005年からは情報政策に携わり、医療機関が患者の診療情報を共有する情報ネットワークの立ち上げにも関わった。一方で、同省幹部は「上司が行動を把握できていなかった」と認める。最近は職場に現れないことも多かったという。
捜査関係者によると、現金を渡したとされる元社長(72)とは「5年ほど前に知り合った」と話している。元社長が経営する都内のシステム開発会社は、医療分野を中心にコンサルタント業務を手がける。2件計2億円余りの業務契約を結んだ2011年11月、謝礼として100万円を手渡したとされる。
この会社は他にも厚労省の業務を、09年9月~15年6月に4件計12億円余りで契約。いずれも中安容疑者が在籍する部署の発注だった。捜査2課は、この約5年間で、中安容疑者が元社長から総額数百万円に上る現金を受け取っていた、とみている。
捜査関係者によると、元社長に要求していた可能性もあるという。両者が関わった事業は、厚労省内で管理する医療や年金、子育てなど社会保障分野の情報を一本化し、納税情報などと一元化するマイナンバー制度に活用できる技術の開発だった。
市民団体「プライバシー・アクション」の白石孝代表は「開発費やランニングコストで莫大(ばくだい)な税金を使うのがマイナンバー制度。プライバシーを扱う意味からも、契約にはより高い透明性が求められる」と指摘する。「今回の事件が事実であれば、倫理観が欠けており、情報管理についても危惧せざるをえない」と話す。
朝日新聞が9月に実施した世論調査では、個人情報が一つの番号で管理されることへの抵抗感について約7割が「ある」と回答。悪用や外部流出への不安が根強く残っている。
行政・政治 2015年10月14日 (水)配信朝日新聞
動き始めたばかりの「マイナンバー制度」。その仕組み作りの段階で、準備に関わっていた厚生労働省職員の汚職事件が発覚した。個人情報の悪用や外部流出が不安視される中、業者との癒着が繰り返されていた可能性も強まっている。▼1面参照
収賄容疑で警視庁に逮捕された厚労省情報政策担当参事官室の室長補佐の中安一幸容疑者(45)。関係者によると、医療や社会保障分野の情報化の第一人者で、厚労省幹部は「省内でもIT知識はずば抜けている。医療現場も経験し、その筋では有名人だった」と話す。
高校卒業後の1991年に入省し、兵庫県内の国立病院に勤務。本省勤務となった2005年からは情報政策に携わり、医療機関が患者の診療情報を共有する情報ネットワークの立ち上げにも関わった。一方で、同省幹部は「上司が行動を把握できていなかった」と認める。最近は職場に現れないことも多かったという。
捜査関係者によると、現金を渡したとされる元社長(72)とは「5年ほど前に知り合った」と話している。元社長が経営する都内のシステム開発会社は、医療分野を中心にコンサルタント業務を手がける。2件計2億円余りの業務契約を結んだ2011年11月、謝礼として100万円を手渡したとされる。
この会社は他にも厚労省の業務を、09年9月~15年6月に4件計12億円余りで契約。いずれも中安容疑者が在籍する部署の発注だった。捜査2課は、この約5年間で、中安容疑者が元社長から総額数百万円に上る現金を受け取っていた、とみている。
捜査関係者によると、元社長に要求していた可能性もあるという。両者が関わった事業は、厚労省内で管理する医療や年金、子育てなど社会保障分野の情報を一本化し、納税情報などと一元化するマイナンバー制度に活用できる技術の開発だった。
市民団体「プライバシー・アクション」の白石孝代表は「開発費やランニングコストで莫大(ばくだい)な税金を使うのがマイナンバー制度。プライバシーを扱う意味からも、契約にはより高い透明性が求められる」と指摘する。「今回の事件が事実であれば、倫理観が欠けており、情報管理についても危惧せざるをえない」と話す。
朝日新聞が9月に実施した世論調査では、個人情報が一つの番号で管理されることへの抵抗感について約7割が「ある」と回答。悪用や外部流出への不安が根強く残っている。