1例目は30代女性。彼女は1月20日に来日した中国人で、咽頭痛および倦怠感などの症状を訴え、医療機関を受診した。下気道症状はなく、COVID-19の可能性は低いと判断し、帰宅とした。この臨床症状ではサーベイランスの基準とならないため、検体を保健所に送ることはなかった。
しかし発熱が改善せず、2回目の受診。新たに主訴として咳嗽、痰、頭痛、悪寒が加わった。インフルエンザの迅速検査の結果は陰性であり、胸部レントゲンを撮るも明確な陰影は観察されなかったため、経過観察とした。しかし、3回目の受診時も38℃の発熱が続き、咳嗽、痰が続いた。そこで再度、胸部レントゲンを撮影したところ、胸膜直下にすりガラス陰影を確認。疑い例の届け出基準に該当しなかったものの検査した結果、新型コロナウイルスへの感染が確認されたと説明した。
2例目は、2018年5月から武漢に仕事のために滞在していた54歳男性。1月27日に咽頭痛と鼻汁のために受診。29日に念のため入院。その後、体温は38.7℃にまで上昇した。30日にサーベイランスの結果、COVID-19陽性と判明。胸部レントゲンおよびCT検査を行うも、肺炎を示唆するような陰影は確認できず、急性上気道炎と診断した。
3例目は、2019年12月から武漢に仕事のために滞在していた41歳男性。1月31日に帰国後、38℃の発熱と軽微な咳があったため、入院措置。2月1日に、COVID-19陽性と判明。胸部CT検査を行ったところ、一部浸潤影を伴うすりガラス陰影が確認された。画像的には肺炎と診断したものの、正直なところ、普段であればこの症状でCT検査を行うことはないため、今回の特殊な状況で初めて捉えることができた症例と言える。
このような症例を通して伝えたいことは、端的に言って「落ち着くべき」であるということ。この2-3日、ニュースでは重症患者やリンクの追えない患者の発生などが報じられているが、いまだCOVID-19の全体像が見えていない段階であるため、過小評価も過大評価もすべきではない。全体像を見る努力をすべきである。
治療にあたりまず重要なのが、入院時の感染対策である。呼吸器症状を呈する患者本人には必ずサージカルマスクを着用させることが必要だろう。また、標準予防策に加え、患者の気道吸引、気管内挿管の処置などエアロゾル発生手技を実施する際には、空気感染の可能性を考慮し、N95マスクおよびゴーグルやフェイスシールドによる眼の防護、長袖ガウン、手袋を装着し、感染対策を適切に行うことが重要である。
国立国際医療研究センターの大曲貴夫氏の講演より