「ついに鳥取でも…」砂像制作の外国人から感染の可能性
鳥取県と鳥取市は10日夜、同市内の60歳代の無職男性が県内で初めて新型コロナウイルスに感染したと発表した。県と市の担当部局は濃厚接触者の調査など対応に奔走。鳥取県民は驚きや不安を感じつつ、感染を防ごうと気を引き締めた。(滝口憲洋、門前光、森谷達也)
◆男性は軽症
発表によると、男性は7日夕から37度の発熱や胸の痛みなどを訴え、10日に市保健所内の「発熱・帰国者・接触者相談センター」に連絡。検査で陽性反応が出た。市内にある感染症指定医療機関の県立中央病院に入院したものの、軽症で、自力で歩くこともできるという。
男性は3月23~31日に5回、同市の鳥取砂丘砂の美術館で砂像を制作するために10か国から来県していた外国人17人を同市中心部の別々の飲食店に案内。注文を取り次ぐなどした。直近に海外渡航歴や感染拡大地域への訪問歴がないため、案内の際に感染した可能性もあるとみられている。
◆封じ込め「初動が重要」
県や同市は11日朝からウイルスの封じ込めに向けて動き始めた。県は保健師を同市富安の市保健所に派遣。男性本人や、同居する両親と妻の行動歴を調べpた。この3人を含む男性の濃厚接触者17人は、いずれもウイルス検査を受け、全員の陰性が確認された。
ただ、男性が案内した外国人17人のうち、14人がすでに帰国。市内に滞在している3人については、市がウイルス検査を受けるよう依頼したほか、帰国した14人にもメールで症状の有無などを尋ねているという。
10日夜の記者会見で平井知事は、封じ込めには初動が重要とし、「患者、県民の命と健康を守るために全力を挙げる」と力を込めた。男性が外国人と訪れた飲食店などが、新たなクラスター(感染集団)に発展する可能性もあるため、同席した市保健所の長井大所長は「クラスターを発生させないよう、徹底的かつ慎重に調査する」と話した。
◆県民に不安
県民には動揺が広がっている。同市富安の会社員(30)は「『ついに鳥取でも』と驚いた。消毒や手洗いに気をつけてきたが、人の集まる場所には行かないようにしたい」と声を落とした。同市内の女子大学生(21)は「いつ県内で感染者が出てもおかしくないと思っていた。自分が感染しないだけでなく、周囲に広げないためにも予防に気をつけたい」と話した。
市保健所では10日夜以降、市民からの相談電話が急増。同日の件数は過去最多の138件に達した。11日も朝から保健医療課の職員ら約20人が、引っ切りなしにかかる電話への応対に追われた。「特に症状はないが、感染者が出て心配だ」「念のために検査を受けたい」との声が多いという。
大塚月子課長は「発熱や風邪症状などがあれば相談してほしいが、過度に不安がらないで」と訴えた。
◆飲食業界に衝撃
男性が同市内の飲食店に外国人を案内した際に感染した可能性もあるため、店主らには衝撃が走った。
同市弥生町のバー「あまた」店長の男性(28)は「店でのクラスターの発生は避けなければならないが、店を開けないと食べていけない。風評被害で客足が今以上に遠のく可能性もある」と不安がる。
同市永楽温泉町の飲食店「テーブルメイク」では、10日夜から11日夕にかけて数件の予約がキャンセルされた。店主の男性(39)は「こうなった以上、夜の客は見込めない。スタッフの安全も確保しなければならないので、昼のテイクアウトでも始めようか……」と話していた。