3回目接種でデルタ株の抗体増加 「高齢者は11倍に」
米製薬大手ファイザーは28日、新型コロナウイルスワクチンの3回目の接種により、世界的に感染が拡大しているデルタ株に対する抗体が増えたと発表した。論文で発表されたものではないが、今後、数週間以内に米国や欧州などの規制当局にデータを提出するという。当局から3回目接種の使用許可を得ることが念頭にある。
この日の4~6月期決算発表の中で明らかにした。ファイザーによると、3回目の接種により、2回だけと比べてデルタ株に対する抗体が、18~55歳の若年層で5倍、65~85歳の高齢者層で11倍多くなったという。ファイザーの幹部は会見で、時間が経つとワクチンの効果が落ちていくとして、「接種完了後、6カ月から12カ月以内に3回目の接種が必要になる可能性が高い」と述べた。
ファイザーと独ビオンテックは今月8日にも、2回接種して半年経過した人に3回目の接種をしたところ、従来株や南アフリカで見つかったベータ株に対する抗体が5~10倍多くなることが確認できたと発表していた。
ただ、米疾病対策センター(CDC)と米食品医薬品局(FDA)は今月8日、「現時点では、ワクチン接種が完了した人に追加接種は必要ない」「必要かどうかや、いつ必要かを、科学的根拠に基づいた厳格なプロセスで検討している」と共同で声明を発表し、3回目接種に慎重な姿勢を示した。
モデルナも3回目接種向けのワクチンや、変異株に対応したタイプのワクチン開発に取り組んでいる。日本政府は今月、こうしたタイプを含めてモデルナと5千万回分の追加の供給契約を結んだ。早ければ来年初頭にも供給されるという。
また、ファイザーは今年のコロナワクチンの売上高の見通しを従来の260億ドル(約2・9兆円)から335億ドル(約3・7兆円)に引き上げた。年内に供給する見込みの21億回分の売上高にあたり、今後、増える可能性もあるという。(ニューヨーク=真海喬生)