75歳医療保険料段階上げ 全世代型法案閣議決定 現役世代の負担増抑制 かかりつけ医制度化
政府は10日の閣議で、増加する医療費を全ての世代で所得に応じ支え合う「全世代型社会保障」構築に向けた健康保険法などの改正案を決定した。少子高齢化が急激に進む中、比較的所得の高い75歳以上の医療保険料を2024~25年度に段階的に引き上げることが柱。地域医療の充実に向けて「かかりつけ医」を制度化する。今国会での早期成立を目指す。
25年には団塊の世代が全員75歳以上となり、後期高齢者医療費が膨張する。その財源の約4割を現役世代が賄っている。加藤勝信厚生労働相は閣議後の記者会見で「高齢者全員に一律に負担をお願いするわけではない。現役世代の負担軽減のため能力に応じ負担してもらう」と理解を求めた。
保険料上げは75歳以上のうち年収153万円超が対象で、全体の約4割に当たる。24年度は211万円超に対象を絞り、25年度に153万円超へと拡大する。25年度の保険料増加額は、年収200万円の場合は年3900円、年収400万円で年1万4千円、年収1100万円だと年13万円。
4月から50万円に増額する出産育児一時金の財源は現在、主に現役の保険料。24年度からは75歳以上も保険料で一部を負担する。
65~74歳の医療費財源を現役世代が負担する仕組みは、所得水準をより反映させる。大企業の健康保険組合では拠出額が増え保険料増につながり、中小企業向けの協会けんぽでは負担が減る。
かかりつけ医制度化は、慢性疾患のある高齢者らへの地域医療体制を整える狙い。25年度から、医療機関が担える夜間診療や在宅医療といった「機能」について、都道府県が報告を受け、公表する。
自営業者らが入る国民健康保険では、都道府県の運営方針に医療費抑制策の記載を義務化する。
介護では質の向上に向け、事業者や自治体がそれぞれ収集するサービス利用者の情報を一元化し、情報基盤を整備する。
※75歳以上の医療保険制度
75歳以上の人は「後期高齢者医療制度」に入る。2008年4月に始まり、加入者は現在約1890万人。市区町村でつくる都道府県ごとの広域連合が運営し、現在の保険料は全国平均で月6472円。医療機関での窓口負担は原則1割で、現役並みの所得があると3割だったが、22年10月から、一定所得がある場合には1割から2割に上がった。窓口負担を除く医療費約17兆円のうち約5割を公費、約4割を現役世代、残り約1割を75歳以上の保険料で賄う。